基幹システムのクラウド化を加速――SAPが日本にアジア初のデータセンター開設:製造ITニュース
これまで海外データセンターへのシステム移行に不安を感じていた、ミッションクリティカルなシステムのクラウド化を後押しする。
ドイツSAPの日本法人であるSAPジャパンは2014年4月7日、同グループのアジア太平洋地域初となるデータセンターを、東京と大阪に開設したことを発表した。既に2014年4月1日より稼働を開始しているという。
SAPでは従来ドイツ、オランダ、米国にデータセンターを開設していたが、アジア太平洋地域へのデータセンター設置は初となる。
今回のデータセンターの設置についてSAP エグゼクティブ・ボード・メンバーでプロダクト&イノベーション担当のビシャル・シッカ(Dr. Vishal Sikka)氏は「アジア太平洋地域を今後のビジネスにおいて重要な地域と置いており、その中でも日本は特に重要なビジネス拠点と位置付けている。アジア太平洋地域を見た場合、市場として日本以上に成長する地域はあるが、日本はアジア太平洋地域の成長のカギを握る『デジタルトレードハブ』の役割を担うと見ており、アジア太平洋地域で本格的にクラウドを展開していくのに最適な場所だと考えた」と話している。
クラウド化の障壁を低減
また一方で、SAPジャパン代表取締役社長の安斎富太郎氏は「日本においてクラウド化の流れは、従来のアプリケーションベースのものから、よりミッションクリティカル(止まることの許されない業務遂行に重要なシステム)なものへと移りつつある。その中で日本でも国内へのデータセンター設置に対するニーズは高まっていた」と必要性を語った。
製造業にとっても、ITシステムのクラウド化は大きな流れになりつつあるが、ERP(Enterprise Resource Planning)などの業務の根幹に関わるシステムについては、海外のデータセンターへの移行における、パフォーマンス面、セキュリティ面での問題が不安材料となり、クラウド化が進まないケースが多かった。
今回SAPが、東京と大阪の国内2カ所に新たなデータセンターを開設したことで、国内から基幹となるデータやアプリケーションを持ち出す必要がなくなる他、離れたデータセンターとの通信を必要としないため「数値的な調査結果は持っていないが、伝送距離が縮まるために、反応速度も速くなる」(シッカ氏)。そのため基幹システムのクラウド化への障壁が軽減される。また、東京と大阪の2カ所を用意したことで、災害対応などの要求にも応える。
データセンターの能力についてはSAPが運用するグローバル共通のデーターセンター基準を用いたというが、耐震構造などの日本独自の性能を保障しているという。また、保障する可用性については99.7%と、ミッションクリティカルなシステムを担うにはそれほど高くはない(データセンターファシリティスタンダードでは最も低いティア1クラスで99.67%の可用性)が「ユーザーに応じて可用性を高めることが可能。データセンターサービスレベルでティア3クラスを実現できている」とSAP CIO兼エグゼクティブバイスプレジデントでクラウド&デリバリー担当のビヨン・ゲルケ(Bjorn Goerke)氏は述べている。
HANAによりシステムをシンプル化
また、同データセンターでインメモリデータベース「SAP HANA」をベースとしたクラウドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」を提供。同サービス上で、基幹業務システム「SAP Business Suite」や「SAP NetWeaver Business Warehouse」、各種クラウド対応アプリケーションを、利用できるという。
安齋氏は「SAP HANAの利点はインメモリによる高速処理能力で、システムの簡素化が可能だということだ。クラウドサービスと組み合わせることで、ITシステム導入の短期化、低コスト化、シンプル化が可能になり、従来の複雑で多くの時間が必要だった『ITの制約』を取り払うことが可能になる」と話している。
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