現場の管理監督者必見! 品質管理に必要な注意事項とは?:実践! IE:現場視点の品質管理(18)(1/4 ページ)
本連載で品質管理の考え方、進め方などを紹介してきましたが、今回はそれらをまとめて、品質管理に携わる現場監督者に要求される注意事項を紹介します。
モノづくりの経営改善手法である「IE(Industrial Engineering)」による品質改善を解説する本連載「実践IE!:現場視点の品質管理」では、今まで品質管理の考え方、進め方などについて、さまざまな切り口で紹介してきました。
本章ではそれらをまとめて現場の第一線で日々の品質管理に携わっている管理監督者に要求される注意事項について紹介したいと思います。管理監督者としての日常の管理活動、改善活動、自己啓発などのための参考としていただければ幸いです。
品質管理活動における管理監督者が注意すべき事項
(1)品質管理の基盤は、決めたことを守り抜く“習慣づけ”
より良い品質を作り出すためには、高度な技術が必須であることはいうまでもありません。しかし、もうひとつの重要な側面は、全ての従業員の高い品質意識です。服装の清潔度合い、職場の整理整頓、コンベヤや作業台の上や機械設備周辺の整然とした物の置き方など、どれひとつをとってみても品質管理のレベルを判断する尺度になり得ます。これらは「正しい仕事をしてより良い製品を作る」という気持ちにつながるものであり、品質に対する意識向上の基礎となるものです。
社内外で発生する品質にかかわる不具合や不良の発生原因を調査してみると、いかに多くの凡ミス(つまらない失敗)による不良が発生しているかが分かります。凡ミスは、作業者の責任というよりも、凡ミスが発生しやすい作業設計をした管理監督者の責任の方が大きいと指摘せざるを得ません。
凡ミスは技能の不足というよりも、「正しい仕事を決められた通りにキチンとやる」という品質管理の基本を外していることが大きな原因です。そのため「決めたことを守り抜く」という職場風土を作らなかった管理監督者の責任という見方ができるのです。品質管理は、単に技能教育だけに重点を置かず、基本の習慣づけのことも重視していただきたいと思います。さらに、このことが生産管理活動の基礎を確立・向上することになり、それらをより揺るぎないものにできます。
(2)事実に基づいて行動するためにはデータを読み取る能力が欠かせない
“現場、現物、現実(現状)”から得られた知見によって対処するという「三現主義」に代表されるように、問題が発生した場合に、机上であれこれ考えるのではなく、すぐに現場へ飛んで行って事実をつかむということが大切です。
品質管理においては、勘や経験ではなくて、実際に得られた事実を正しく解釈し、それに基づいて行動を取っていくことが大切になります。次の点によく注意して日頃から“データを読み取る能力”を養っておかなければなりません。
- 定量的に正しいデータを把握する能力
- 時系列的なデータの見方
- 層別して物を見る見方
(3)製品知識を深める
品質管理でいう「品質」は、結局は顧客の要求品質でもあり、顧客を十分に満足させることができる水準でなければなりません。顧客の真の要求品質を明確にするのは設計部門の仕事ですので、その顧客の要求品質に対して狙いの品質でもある「設計品質」を決めます。
製造部門の管理監督者は、その「設計品質」を正しく作りあげるためには、製品に要求されている品質水準、製品機能、製品が使用される状態などについて十分な知識と認識が必要です。製品に対しての責任感の強弱は、「異常」に対するアクションの甘さや判断の適切さなどに影響してくるものです。
(4)作業の良しあしを判断するための自分なりの尺度を持つ
図面や仕様書で設計品質は示され、場合によっては作業標準書などでさらに細かく工程ごとの品質水準が展開されます。現場の管理監督者は、これらの定められた品質水準を標準時間(Standard Time)の中で維持していくことが最も重要な役割となります。不良統計表や管理図に現れた兆候、結果について常に注意を払っていなければなりません。
ここで強調したいことは、図面や仕様書、各種作業標準類に書き表されていない個々の工程のささいな事柄に対して品質水準の尺度を持っていることが大切だということです。例えば、作業の良しあしの判断の目安として「ここはこうあるべきだ」というような基準があるかないかで最終的な品質への影響度は変わってきます。
それが技術者の立ち入り得ない現場独特のものの見方となります。この目と尺度(目安)を養い、異常を見つけ出すことに努力していかなければなりません。しかしながら、昨今の現場の状況を見ていると「いつもと何かが違う」とか、「今日は、何か変だ」というような異常に気付く感性が低下しているように感じています。
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