現場の管理監督者必見! 品質管理に必要な注意事項とは?:実践! IE:現場視点の品質管理(18)(2/4 ページ)
本連載で品質管理の考え方、進め方などを紹介してきましたが、今回はそれらをまとめて、品質管理に携わる現場監督者に要求される注意事項を紹介します。
(5)作業の標準化を積極的に進める
現場の第一線の責任者である管理監督者は、現場の諸管理を効率よく行うために作業の標準化を推進し、その結果を作業標準書(作業指導書など)に成文化する能力がなければなりません。職場によっては、生産技術部門などのスタッフによって作成された作業標準書が与えられるかもしれませんが、その際は検討段階や立案時に参画する必要があると思います。例えば、標準化が特定の職場だけに限られた場合だけではなく、他の現場などの作業や管理方式に影響を与えるようなことであれば、自分の現場だけで勝手に変えるわけにはいきません。このような広い範囲に影響を及ぼす標準化は工場全体としてまとめて決めなければなりません。
このように、標準化の影響範囲はさまざまですが、他の現場に影響を及ぼさないような事柄であれば、現場の管理監督者の判断によって決定したり変更できる標準化もありますので、この範囲は管理監督者に任せた方がうまくいく場合も多いものです。
もうひとつ注意しなければならないことは、作業基準というものは皆が分かっている(「はずだから」というのが正しいかも知れません)のだから、書いたものにしておかなくてもよいという意見もあることです。確かに、全ての細かい点まで全部書いておくということは難しく、経験や勘で判断しなければならないという点があることも確かです。
しかし、作業指導書などへ記述することで曖昧な記憶ではなく、ハッキリとした記録として保存できるし、人による作業手順の差もなくなります。また、書いていく過程で問題点や課題も見えてくるというメリットもあります。作業の標準化とその成文化は、現場の技術として蓄積され人材育成や技術の伝承などに役立つものです。長年、モノづくりに携わってきた経験の中から、作業の標準化についての教訓としては以下の項目が大切だと考えています。
- 問題となった事柄について決めていくこと
- 簡単に改訂できるようなルールにすること
- 常に、問題意識を失わず、いつも改善していくように心掛けること
- “やらなくてはいけないこと”と“やってはいけないこと”を記述し、それはなぜかの理由も併記すること
- 標準化の関連事項として、残された問題点も記述しておくこと
標準化に際しては、「製造現場の品質管理 “5M”カイゼンの心構え〔前編〕、〔後編〕」で述べた5M(Man、Machine、Material、Method、Measurement)について押さえるべき要因を見つけ出すことが大切です。着眼すべき要因を発見する洞察力は、日頃から現場の作業をよく観察し、新たな点を発見していく努力により養われるものです。
(6)正確な指示や情報を出していくためには、“形”“数”“語”を使いこなす
作業者が作業を始めるためには、作業を正しく理解してもらってからでなければなりません。作業標準書を作業者に渡して、「はい、この通りやってください」と言っただけでは、読んでもらえるかさえも分かりません。また、記述されていても分かりにくいことも標準書には含まれていますので、管理監督者はこれらのことを十分に説明しておく必要があります。
管理監督者訓練法として広く活用されています「TWI(Training Within Industry)」を受講されたことがあるかも知れませんが、“教育訓練”は、管理監督者の任務の最も重要なもののひとつとして説明されています。作業標準通りの作業を実施するための教育方法にはさまざまなやり方があります。
- 受講対象者を集めて講義をしながら教える(Off Job Training)
- 仕事をしている側で、逐一手をとって教える(On the Job Training)
- 実際に作業を行う人たちと一緒になって検討会を行う
工場の組織や作業時間の長短、作業の難易度などによっても異なりますので、どの方法がよいということではありません。これらの方法にもそれぞれ一長一短があるので、それらの特徴をよく踏まえながら、ひとつの方法だけではなく、さまざまな方法による作業訓練を平行的に行いながら作業方法の徹底を図っていくのがよいでしょう。
ここで大切なことは「教えても分からないのは教え方が悪い」ということです。ただ伝えるだけではダメで、相手がキチンと理解して実際に行ってこそ、本当の意味で伝わった(伝えた)ことになります。伝えようとすることをなかなか理解しない相手を非難するのではなく、伝えることのできない自分の未熟さを反省して、自身の教える能力の向上につなげていくべきなのです。
さらに、ただ品質が良いとか、悪いというのでなく、どれくらい良いのか悪いのかを、できるだけ数値で表すことが必要です。このことを「定量化」といいます。
しかし、実際には数字で表しにくいものもたくさんあります。例えば、外観的な見た感じとか、触った感じとかいうような、いわゆる感覚によって良しあしを判定していかなければならないものは数字では表しにくいものです。これらも「限度見本を作る」「何段階かの評点法を用いる」などによって共通のレベルの目を持つことが大切です。
現場の管理監督者としては、正しい情報と指示を出すために、図に書かれたものや限度見本のような“形(図示)”、数値で定量的に表した“数(数値)”、言葉で説明する“語(言葉)”をうまく使いこなす能力を身に付けることが大切です。とりわけ、絵に描くことは、漠然と頭で捉えられていたことをより具体化することにもつながります。言葉や文字だけでは分かりにくいことも、絵を描くことでシッカリと理解できることも確かです。
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