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ドライブバイワイヤの生みの親は自動変速機!?いまさら聞けない 電装部品入門(10)(3/3 ページ)

アクセルペダルの踏み込み具合とスロットルバルブの開度を連携させるドライブバイワイヤ(Drive-By-Wire、DBW)システム。自動車にとってDBWが必須のシステムとなったのは、自動変速機の普及が背景にある。

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電子制御化に向けて

 しかし自動車業界の技術進歩に伴い、アクセルペダルやスロットルバルブに求められる役割がエンジンの出力調整だけではなくなります。

 新たに役割が追加されるきっかけとなった大きな出来事の1つが、自動変速機(オートマチックトランスミッション、AT)の普及です。

 ATの基本動作を今さら説明する必要は無いと思いますが少しだけ紹介しましょう。

 ATは、車速の上昇に合わせて自動的に変速するとともに、急な加速が必要だと判断すれば、ギヤを下げて(キックダウンして)ドライバーの出力要望にこたえます。もちろん減速に合わせたシフトダウンも自動で行いますので、ドライバーは走行状態に合わせた変速操作を意識することなく、単純にアクセルペダルとブレーキペダルの操作だけを行っていれば運転操作が成り立ちます。

 さてここでドライバーの出力要望という重要な要素が出てきました。

 「自動車は何をもってドライバーの出力要望を認識しているのでしょうか?」

 その答えは、ATのキックダウンにヒントがあります。

 高速道路の合流などでアクセルペダルをググッと踏み込んだ時に、ATを搭載する自動車は、キックダウンと呼ばれる強制シフトダウンを行います。その際に参考にしているのは、アクセルペダルの踏み込み量(=スロットルバルブの開度)です。

 つまり、ドライバーがキックダウンしようとしているのかいないのかを自動車側で予測するために最も重要な情報源は、アクセルペダルの踏み込み量なのです。この踏み込み量(+スロットルバルブ開度)を電気信号としてコンピュータ(CPU)に送信することで、「加速したい」「減速したい」といったドライバーの意思を把握できるようになるのです。

 そこで、アクセルペダルにアクセルポジションセンサーを、スロットルボディにスロットルポジションセンサーを設置することで、CPUはドライバーの意思を基にした変速制御をリニアに行えるようになったのです。

 しかし自動車の技術進歩はこれだけにとどまりません。

 高速道路などで主に活躍する、設定した車速を自動的に維持して走行するオートクルーズコントロール機構では、ドライバーがアクセルペダルを踏み込まなくても、モーターなどを用いて機械的にアクセルペダルやスロットルバルブを開閉して制御を行っています。

 滑りやすい路面などで、路面との摩擦力をエンジン出力が上回った際に生じるホイールスピンを抑制するために導入されたトラクションコントロールシステムでは、アクセルペダルを踏み込むことで、開いているスロットルバルブを強制的に閉じる動作を機械的に行います。

 ……といったように挙げていればキリがありませんが、自動車に求められるさまざまな技術を実現するために、スロットルバルブを強制操作するための複雑な機構を次から次へと追加していく必要があったのです。

 これはすなわちコスト増加に伴う車両販売価格の高騰はもちろん、複雑な機械が増えることによる故障のリスクなど、ユーザー側にとってのデメリットが増えることになります。

航空機で実績のあったフライバイワイヤがベース技術

 これらのデメリットを払拭するために、既に航空機で実績があったフライバイワイヤ(Fly-By-Wire)と呼ばれる技術をベースに開発された、ドライブバイワイヤシステムが自動車に導入されます。

 ここでいうWireというのは電線、つまりは電気配線のことです。従来はアクセルペダルとスロットルバルブを金属ケーブルで連結していました。しかし、この金属ケーブルを排除して、電線を介して伝達される電気信号(バイワイヤ)でスロットルバルブを駆動していることからDBWと呼ばれているのです。

 アクセルペダルの踏み込み量を電気信号に変換してCPUへ送信し、その信号を基準にしてさまざまなセンサーからの情報を基に補正を加え、CPUは走行状況に合わせた目標スロットル開度を瞬時に決定します。その目標スロットル開度になるように駆動モーターへと駆動信号が送信され、スロットルバルブが駆動モーターによって開閉します。

DBWシステムの相関図
DBWシステムにおける各種センサー、CPU、スロットルバルブの相関図


 スロットルバルブが全て電気信号を基にして駆動されると知ると、「安全性はどうやって確保しているの?」とか「誤信号を送ってしまうと危ないのでは?」といったことを真っ先に考えてしまいますね。

 自動車を開発する上で安全性や信頼性の確保は最重要項目です。逆に言えば、安全性や信頼性が確保できていないならば技術として採用することはできません。もちろん、万が一のトラブルが致命的な大事故に直結する航空機の場合、そういった不安要素を払拭できていなければ採用していないはずです。

 次回は、DBWシステムの安全性を確保するための仕組みについて紹介します。お楽しみに!

プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



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