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日本の自動車メーカーの強さ、その源泉は「適合プロセス」にありいまさら聞けない 適合プロセス入門(前編)(1/2 ページ)

日本のモノづくりの衰退が叫ばれる中で、自動車産業は、世界市場で互角以上に渡り合う強さを維持している。この日本の自動車メーカーの強さを支えているのが、製品開発プロセスとしてあまり注目されることのない「適合プロセス」なのである。

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なぜ「自動車」と「デジカメ」は世界で渡り合えるのか

 本記事「いまさら聞けない 適合プロセス入門」では、2回にわたって車載電装品(主にガソリンエンジンのECU)の「適合プロセス」について解説します。

 一般的な製品開発プロセスの中であまり注目されない適合プロセスですが、筆者は日本が誇るモノづくりの強さの源泉が隠されていると感じています。

 昨今は日本のモノづくりの衰退が叫ばれています。確かに、日本を代表する電機メーカーの収益が大きく落ち込んでいるのは事実です。そんな中で、世界市場で互角以上に渡り合っている、日本の「自動車」と「デジカメ」の強さは衆目の一致するところでしょう。

 なぜ、この2分野の製品は強いのでしょうか? 筆者は適合プロセスが大きな割合を占めると考えています。他の要素ももちろんありますが、それは別の機会にお話しするとして、今回は適合プロセスを取り上げたいと思います。

「適合プロセス」とは何か

 本題に入る前に、少し筆者の思い出話にお付き合いください。

 かつて北欧の高級AV機器メーカーが原宿に店舗を出していました。筆者が、当時幼少の長女を連れてその店に訪れたところ、市場に出回り始めたばかりの液晶テレビが壁に掛かかっていました。それを見ていた長女が、「このテレビ、色が変だよ。なんかいやだな」と言うのです。確かに色味が我が家のテレビと違います。このテレビは色味の合わせ込みが足りなかったかもしれませんし、長女の好みがおかしかったかもしれません。

 いずれにしても感性とダイレクトに向き合う製品に対してヒトは許容と拒絶がはっきり出ると考えられます。皆さんも同様の経験があると思います。

 製品には、機能を満足した上でその製品が持つ「味」というのがあります。「製品の持ち味」と言い換えてもいいでしょう。その味は千差万別です。その味が好みという場合もあれば、到底受け入れられない場合もあります。しかし、製品として成立させるためには、広く受け入れられる「味」にしつつ、個性も出さないと差異化できません。また、工業製品には「公差」や「経年変化(通常は劣化)」があります。これらを考慮、吸収しつつ「持ち味」を作り込んで行く作業が、これから説明する適合プロセスなのです。

車載電装品の適合プロセス

 適合プロセスはあらゆる製品に適用できます。工業製品に限らず、ラーメンなどの食品も対象にすることが可能です(むしろ、「味」を前面に押し出している分だけ相性がいいかも知れません)。ただし、あらゆる製品を対象にした適合プロセスの解説は具体性を欠く上に、話が発散してしまいます。

 そこで本稿では、車載電装品を例に挙げて適合プロセスを解説します。製品開発のすそ野が広くグローバルに展開している自動車産業は、適合プロセスそのものも産業化しており、解説に必要な事例も豊富にあるからです。

 ここで言う車載電装品の代表となるのがECUです。ECUは、Electronic Control Unit(電子制御ユニット)もしくはEngine Control Unit(エンジン制御ユニット)の略語ですが、今回はガソリンエンジンが主な対象なのでどちらの意味でも問題はありません。

 図1がECUの一般的な構成になります。左側が入力信号、中央がECU自身でCPUや各周辺機器(A-Dコンバータや GPIO、ECU間をつなぐ通信インタフェースなど) から構成され、入力信号を受け取って処理します。処理結果は、右側にあるパワーステージを介して出力されます。

図1 ECUの一般的な構成
図1 ECUの一般的な構成(クリックで拡大) 出典:イータス

 組み込み機器の世界では、以下のように書かれるのが一般的です。

一般的な組み込み機器の構成

 ガソリンエンジンのECUですと、左側にあるクランク角、ブースト圧、エンジン水温、ペダル踏度などが入力信号になります。これらの入力信号を基に各種演算処理を行って、右側の出力ステージにある、インジェクタの燃料噴出タイミングやスロットルバルブの開度、点火プラグの点火タイミングが決定されます。

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