グローバルサプライチェーンにおける知的財産盗用のリスク:法律家が見るサプライチェーンの知財侵害リスク(1)(3/3 ページ)
全世界にサプライチェーンが広がる中、サイバーセキュリティに対するリスクは急速に高まっています。本連載では、知財の専門家が製造業のサプライチェーンに潜む情報漏えいリスクにどう向き合うかについて紹介。第1回では、企業の知財保護を支援するNPO法人CREATe.orgが、情報漏えいがどのように起こるかを解説します。
サプライチェーンパートナーとの連携
グローバルサプライチェーンの中で、知財を守るために、企業としてどのような取り組みができるでしょうか。品質管理や衛生安全コンプライアンスなどの課題への対応では、サプライチェーンパートナーと連携し、パートナー自身が現場での業務を改善できるシステムを整備できるよう支援するのが最善の方策だとされています。
では、具体的にサプライチェーンパートナーに対してどのようなチェックや規則の順守を求めればよいのでしょうか。われわれが考えるチェックすべきポイントは以下の8点です。
- 知財に特化した方針、手順、記録があるかどうか
- 知財コンプライアンスチームがあるか
- リスク評価およびコンプライアンスプログラムに知財保護が盛り込まれているか
- 1次サプライヤーが2次サプライヤーに対して実施するデューデリジェンスに、知財コンプライアンスは含まれているか
- コンピュータおよびネットワークにおいて、知財や機密情報を保護するシステムを整備しているか
- 知財保護に関する従業員トレーニングを実施しているか
- 知財コンプライアンスを監視する手順(営業機密の保護、ソフトウェアの違法コピー防止、偽造防止など)はあるか
- 知財コンプライアンスに関する問題(データの盗用、偽造、違法コピーなど)が生じた場合、問題を解決して業務を改善するシステムが整備されているか
サプライチェーンにおけるそれぞれのポイントを確認することで“第三者”からのサイバーリスクは大きく低減できることでしょう。CREATe.orgでは、サプライチェーンパートナーが確実に知財保護を行えるようにするため、オンライン・セルフアセスメント、独自評価、改善計画による3ステッププログラムなども開発していますが、自社の知財を保護することは、継続的に行うべきプロセスだと感じています。
まず、サプライチェーンパートナーが「保護すべき専有資産をどのように扱っているか」について彼らと話し合いを始めることが、生産的かつ良好な関係の構築に向けた重要な初めの一歩となると考えています。
筆者紹介
Pamela Passman(パメラ・パスマン)
Center for Responsible Enterprise and Trade(CREATe.org)会長 兼CEO
CREATe.org は、企業やそのサプライヤーおよびビジネスパートナーに対し、偽造や著作権侵害、営業秘密の盗用、企業内の不正行為を防止するための支援を行う非営利組織。
Webサイト www.CREATe.org
名取 勝也(なとり かつや)
Center for Responsible Enterprise and Trade(CREATe.org)顧問、名取法律事務所の創設者。弁護士。
2012年に同事務所を設立する以前は、日本アイ・ビー・エムの法務・知的財産・コンプライアンス担当取締役執行役員およびグローバルプロセスサービス事業担当執行役員を務める。その他ファーストリテイリングにて執行役員法務部長、サン・マイクロシステムズにて取締役法務本部長、アップルコンピュータにて法務・渉外本部長、エッソ石油にて法務部弁護士を歴任。2012年からは、オリンパスの社外監査役。慶應義塾大学経済学部卒業。ワシントン大学ロー・スクール卒業(LLM取得)。ジョージタウン大学ビジネス・スクール卒業(MBA取得)。
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