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ドイツの自動車産業が推し進める「電動化」と「自動化」フランクフルトモーターショー2013(3/3 ページ)

「フランクフルトモーターショー2013」では、開催国であるドイツの自動車メーカーやティア1サプライヤによる「電動化」と「自動化」に向けた取り組みが目立っていた。

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ティア1サプライヤは「駐車支援」から「自動駐車」へ

 大手ティア1サプライヤでは、ボッシュ、Continental(コンティネンタル)、Valeo(ヴァレオ)が自動運転のソリューションを大々的に発表していた。その中でも、数年以内に市販される可能性がある技術として、ほぼ自動で駐車できる運転支援システムが興味深かった。

 ヴァレオは、これまでにも「パーク4U」の製品名で、既存の超音波センサーに左右方向を検知するセンサーをそれぞれ1つずつ加えるだけで、片側で40cmの車幅の余裕があれば駐車が可能な自動駐車システムを発売している。今回はこれをさらに発展させ、無人での自動駐車を実現した「バレット・パーク4U」を発表した。独自開発の小型レーザーセンサーに加えて、12個の超音波センサーと4個の車載カメラによって車両周辺を確認し、駐車可能なスペースを見つけると自動で駐車する。ドライバーは、スマートフォンで駐車の指示を出すだけでよく、車載センサーからの情報は映像化されてスマートフォンに送られるので、駐車中の状況をスマートフォンで確認することもできる。実際に、会場内で自動駐車のデモを披露していた。

ヴァレオの自動駐車システムのデモンストレーション
ヴァレオの自動駐車システムのデモンストレーション(クリックで拡大)

 ボッシュは、欧州と米国で実証実験を行っている自動運転車を会場に持ち込んだ。その技術の一部を活用した「パーキングエイド」と呼ぶ自動駐車機能は、2015年の実用化をめどに開発が進められている。ドイツでは、物損事故の半数程度が駐車中に起こっているとの調査結果があり、ボッシュもこれまでに超音波センサーと車載カメラと使った駐車支援システムを発表している。パーキングエイドはその発展型であり、CMOSセンサーを使ったマルチカメラの採用によりサラウンドビューなどの機能を実現。周囲を検知し、自動駐車を行う。

ボッシュが欧米で実証実験を行っている自動運転車
ボッシュが欧米で実証実験を行っている自動運転車(クリックで拡大)

 2013年9月10日に、自動運転のための地図データ構築に向けて、Nokia(ノキア)、メルセデス・ベンツと提携を発表したコンティネンタルも、もちろん自動運転に積極的だ。360度のバードビューは4個の車載カメラからの情報で構成されており、この機能を使って、レーンキープアシストや自動駐車が行える。

ZFがFF車向け9速ATを投入

 ZFは、スマートフォンを使ったトレーラーの遠隔操作による駐車支援に加えて、話題のFF車向け9速ATを発表した。FR車向け8速ATでは定評のあるZFだが、これまでFF車向けは手つかずだった。今回、FF車向け9速ATを新開発し、乗用車試乗の約75%を占めるFF車向けトランスミッション市場に再参入する。ギア比が9.81と広く、従来の6速AT比で10〜16%も低燃費化しているのが特徴だ。外形寸法が363×482×386mmで、重量が78kgと軽い「9HP 28」と、367×429×521mm/86kgと少し大きく重くなるが、トルク容量が高い「9HP 48」の2機種。最大トルクは200〜480Nmまでカバーし、小型車からSUVまで多種多様な車種に対応できる。

ZFのFF車向け9速AT「9HP」の外観(左)と内部構造(クリックで拡大)

 具体的には、8速ATより1組多い4組のクラッチパックを組み合わせることで、9段分の変速プログラムを作り出している。2組のドグクラッチを採用することで、小型・軽量化を図ったのがポイントだ。この場合、変速ショックの発生が懸念されるが、実際に試乗してもそういった振動や衝撃は感じられなかった。DCT(デュアルクラッチトランスミッション)では難しい、2段飛びや3段飛びの変速ができるので、応答性が高くスポーティな印象だ。ほとんど2速発進をしており、時速100kmまで速度を上げてやっと9速に入る。応答時間は150ms、変速速度は450msという数字からも応答性の高さは裏付けられる。



 新型車やコンセプトカーはモーターショーの華だが、フランクフルトショーは自動車産業が盛んなドイツで開催されることもあって、各社とも新技術の出展に気合が入る。今後数年間かけて強化される排気ガス規制に対応するため、車両の電動化は一気に進むと見込まれている。また、駐車場のような限定的な場所における自動運転技術の導入も始まるだろう。今回のフランクフルトショーでは、そうしたダイナミックな動きが、自動車メーカーだけでなくサプライヤからも感じられた。

おまけ:これがホントのV2H、Vehicle to Human!
おまけ:これがホントのV2H、Vehicle to Human!(クリックで拡大)

筆者紹介

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川端由美(かわばた ゆみ)

自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。



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