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ドイツの自動車産業が推し進める「電動化」と「自動化」フランクフルトモーターショー2013(2/3 ページ)

「フランクフルトモーターショー2013」では、開催国であるドイツの自動車メーカーやティア1サプライヤによる「電動化」と「自動化」に向けた取り組みが目立っていた。

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BMWはPHEV「i8」を発表、価格は12万〜13万ユーロ?

 BMWは、SUV「X5」の新モデルと、「3シリーズ」をベースにしたクーペ「4シリーズ」を披露。これとともに、EVとPHEVのための新しいサブブランド「i」の発表も大々的に行った。

 2013年7月末に、ニューヨーク、ロンドン、上海を結んで世界同時プレミアを行ったEV「i3」に続き、PHEVの「i8」を2014年に発売すると発表した。出力96kWのモーターで前輪を駆動し、排気量1.5lの3気筒ツインターボ付きエンジン(出力170kW)に、回生/スタート用のモーターを組み合わせて後輪を駆動する。時速0〜100kmの加速時間は4.5秒と俊足ぶりを誇る一方で、CO2排出量はわずか59g/kmに抑えられている。NEDCによる100km走行当たりの燃料消費量は2.5lと極めて少ない。35kmまでのEV走行が可能で、それ以上の距離を走行する場合にはエンジンを始動し、6速ATを介して後輪にトルクを伝える。エンジン出力に余力があれば、直結した発電機を使って電池パックへの充電を行うこともできる。システム全体では、最高出力266kW/最大トルク570Nmと強大だ。

BMWのPHEV「i8」(左)とEV「i3」。i8は斜めに開くバタフライドア、i3は観音開きドアを採用している(クリックで拡大)

 アルミ製フレームの中に電池パックを抱えるように内蔵し、その上に炭素繊維強化樹脂を使ってピラー類を含む居住空間を構成。樹脂ボディパネルで表面を覆う構造を採る。価格は、12万〜13万ユーロとの予測が主流だ。

「i8」の内部構造
「i8」の内部構造(クリックで拡大)

 目新しいところでは、新型「X5」のPHEVコンセプトモデル「X5 eドライブ」がある。最高出力70kWのモーターによって、最高時速120kmまでのEV走行が可能で、エンジンの動作をモーターでアシストすれば、時速0〜100kmまでの加速時間は7秒以下になる。最大30kmまでのEV走行が可能。発売時期などの言及はなかったが、欧州における排気ガス規制が2015年以降に強化されることを鑑みると、市販される可能性は高そうだ。

PHEVのコンセプトモデル「X5 eドライブ」
PHEVのコンセプトモデル「X5 eドライブ」(クリックで拡大)

メルセデス・ベンツは「Sクラス」にPHEVを追加

メルセデス・ベンツブランドが記者発表で公開した新型車やコンセプトモデル
メルセデス・ベンツブランドが記者発表で公開した新型車やコンセプトモデル。一番下にあるのがPHEV「S500 プラグイン・ハイブリッド」、その上にあるのが自動運転の実験車両「S500インテリジェントドライブ」である(クリックで拡大)

 Daimler(ダイムラー)のMercedes Benz(メルセデス・ベンツ)ブランドは、フラッグシップの「Sクラス」に、CO2排出量がわずか69g/kmというPHEV「S500 プラグイン・ハイブリッド」を追加すると発表した。モーターは最高出力80kW/最大トルク340Nmと、最高出力20kWのモーターを使用していた「S400ハイブリッド」と比べると大幅に強化されている。最高出力245kW/最大トルク480Nmのエンジンとの組み合わせで、時速0〜100kmの加速は5.5秒でこなし、最高時速は250kmに達する。電池パックの容量を増やして、回生装置を改良した結果、30kmというEV走行距離を実現した。

 一方、ピュアEVである「Bクラス・エレクトリック・ドライブ」も発表された。提携関係にあるTesla Motors(テスラモーターズ)と共同で開発しており、最高出力130kW/最大トルク340Nmというパワフルなモーターを搭載し、時速0〜100kmの加速時間は7.9秒という俊足ぶりだ。ただし、満充電状態からの走行距離を確保するために最高時速は160kmに制限されている。その走行距離は200km。欧州の400V電源を使えば1.5時間で満充電になる。

ベンツ夫人と同じ道を走ったダイムラーの自動運転実験車両

 メルセデス・ベンツが行った記者発表の中では、Sクラスの実験車両「S500インテリジェントドライブ」による公道での自動運転の実証試験も大きな話題になった。レーダーなどを使った自動ブレーキをはじめとする高度運転支援システムを指す「Automated Driving」ではなく、自動車が自律的に走行することを意味する「Autonomous Driving」と表記されていたのも印象的だった。技術の詳細は発表されていないが、現地でヒアリングしたところ、センサー類については、高度な運転支援機能を備える現行のSクラスや「Eクラス」に搭載さいれているものとほとんど同じで、自動運転のためにレーザーレンジセンサーを追加したとのことだった。これは、自動運転の実験車両で必ずと言っていいほど使われている車両の上に載せられている円筒状のセンサーである。ほとんどの自動運転車は、Velodyne(ヴェロダイン)製を使用しているが、その価格は8万米ドルと非常に高価だ。ダイムラーでは、同等または類似の機能を持つセンサーを搭載し、公道で自動運転させることに成功したという。

 ダイムラーが自動運転の実証試験を行ったのは「ベルタ・ベンツ街道」である。マンハイム、ハイデルベルク、カールスルーエといった比較的大きな街を結んでおり、アップダウンも多少ある。自動車の交通量も少なくはない。この街道には、カール・ベンツがエンジン車を発明したころの逸話が残っている。当初、エンジン車に対して人々は疑念を抱いていた。この疑念を払拭(ふっしょく)しようと、カール・ベンツの妻であるベルタ・ベンツが、夫妻の住んでいたマンハイムから故郷のプフォルツハイムまでの約100kmを走ってその信頼性を実証したというのだ。街道の名称は、そのベルタ・ベンツに由来している。

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