シミュレーションはもはや限られた専門家のための技術ではない――アンシス フレッドベルグ氏インタビュー:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
コンピューティングパワーの成長やクラウド環境の普及からシミュレーションの活用の範囲が広がっている。「われわれが想定するシミュレーションの使用部門のうちまだ1%も導入されていない」と語るアンシス マーケティング担当バイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ氏に、シミュレーション市場の動向や製造業の活用動向について話を聞いた。
クラウドコンピューティングのインパクト
MONOist クラウドコンピューティングやビッグデータなどITにおける技術進化の影響は?
フレッドベルグ氏 特に大きいのがクラウドだ。シミュレーションが容易になったとはいえ、要求されるコンピューティングパワーは大きなものが必要となる。クラウドを活用することで必要なときに必要なだけ、コンピュータをスケールアップすることが可能で、従来の投資を考えると実現不可能だった大規模なシミュレーションが簡単に行えるようになる。
この流れはシミュレーションの普及拡大に大きなインパクトを与えることだろう。従来は大企業でなければ導入できなかったところが、中堅以下クラスの企業でも自由に扱えるようになるからだ。
アンシスでは、クラウドやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に対応し、これらの動きに積極的に対応していく方針だ。長期的には、ビッグデータおよびアナリティクス分野も積極的に取り入れ、消費者のデータによるグローバルトレンドのシミュレーションなども行うことも想定している。
想定市場の1%しか利用していない
MONOist 今後のシミュレーションの発展をどう見ていますか。
フレッドベルグ氏 シミュレーションの活用は1つの面ではコストやリスクを下げることにつながり、もう一方の面ではイノベーションにつなげることができると考えている。
コンピュータによりシミュレーションを行うことで、従来はプロトタイプを数多く製作してきたコストを低減できる他、従来は検証しきれていなかった不具合によるリスクを低減でき、不具合発生時に発生していた対策費用などを抑えることができる。
また、今後重要になってくるのがイノベーションへの貢献だ。今シミュレーションは開発の最終段階で活用される機会が多いが、これをもっと早い構想設計などの段階から利用することで、開発に際する多くの試行錯誤を行うことができる。より創造的で革新的な商品開発につなげることができるだろう。部門の壁を超え、シミュレーションを基軸に設計の工程を組み直すことで新たなイノベーション創出につなげることができる。
そう考えたとき、われわれが想定しているシミュレーションのユーザー数に対し、現在使用している数は非常に少なく、もっと成長できると見ている。今は想定市場に対し普及は1%にも満たない状況だ。今後も成長を続け、シミュレーション市場の拡大を進めていきたい。
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
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