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シミュレーションはもはや限られた専門家のための技術ではない――アンシス フレッドベルグ氏インタビュー製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

コンピューティングパワーの成長やクラウド環境の普及からシミュレーションの活用の範囲が広がっている。「われわれが想定するシミュレーションの使用部門のうちまだ1%も導入されていない」と語るアンシス マーケティング担当バイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ氏に、シミュレーション市場の動向や製造業の活用動向について話を聞いた。

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 米国ANSYS(以下、アンシス)は、解析ツール「ANSYS」を基軸としシミュレーションの活用領域の拡大を推進し、急成長を遂げている。同社の2012年の売上高は前年比15%増の7億9800万ドルで2013年には売上高9億ドルを目指しているという。

 シミュレーション市場の拡大には市場環境の変化とともに、コンピューティングパワーの成長など技術的な進化の影響も大きい。アンシス マーケティング担当バイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ(Josh Fredberg)氏に、シミュレーション市場の変化についてインタビューした(関連記事:開発初期段階で自由に試行錯誤できるシミュレーションを――アンシスユーザーイベント)。

シミュレーションは用途も市場も急拡大

アンシス マーケティング担当バイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ氏
アンシス マーケティング担当バイスプレジデントのジョシュ・フレッドベルグ氏

MONOist シミュレーション市場についてどう見ていますか。

フレッドベルグ氏 シミュレーション市場は急速に成長を遂げている。それには2つの要因がある。1つ目はコンピューティングパワーの急成長だ。「ムーアの法則」にあるように集積回路のトランジスタ数は18カ月で2倍になり、演算能力は急速に高まっている。そのため以前はスピードやコストの面でシミュレーションを使いたくても使えなかった分野で、実用性が出てきた。

 もう1つは、シミュレーションソフトが簡単になったことだ。以前は専門知識を持つ人が専門分野として取り組むべきものだったが、解析を専門としないエンジニアが利用できるような容易なものになってきた。そのために、より多くの部門、用途で利用されるようになってきた。

 実際にアンシスの業績も急成長を遂げている。毎年2桁成長を遂げ2013年は売上高9億ドルを計画している。アンシスの特徴は業界に偏りがないことで、売上高の比率で見ると全ての業界が20%以下となっている。業界や部門の広がりが、アンシスの1つの成長の要因になっている。

石油・ガス産業、風力発電での活用

MONOist シミュレーション活用でどういう新しい分野での使用があるのでしょうか。

フレッドベルグ氏 宇宙や防衛関連、航空機、自動車などの分野は早くからシミュレーションが使われてきた分野だが、物理的なものを扱う産業は全てが活用するようになったと言っても過言ではない。実際にフォーチュン500(全米の総収入上位500社)の96%が解析ツールを活用しており、使用していない企業は物理的な商品を扱っていないところだけだ。

 その中でも最近新たに活用が進んでいるところとして、石油・ガス産業がある。最近災害などで石油・ガス産業で被害を受けるケースなどがあったが、これらの災害にも耐え得る設備を作ることがエンジニアリングの面で課題となっている他、経営上のリスクにもなっている。シミュレーションによりコンピュータ上であらゆる災害パターンを再現することで、リスクを織り込んだ設計を可能とし、災害発生時のリスクを低減できる。

 また日本での活用事例として風力発電などがある。風力発電は事業全体にシミュレーションが生かせる産業だ。風のモデリングはもちろん、風車の羽根への負担や発電におけるタービンの効率的な稼働など各所にシミュレーションが生きてくる。

 シミュレーション活用はますます進むだろう。その中でアンシスの強みは、シミュレーション技術の幅の広さと深さを持っていることだ。シミュレーションには、そこで起こりうる全ての物理現象を理解することが何よりも重要になってくる。その意味でアンシスは、あらゆる分野での物理現象を的確に理解し、フィードバックする技術を保有していることが強みになっている。

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