「サービス中心のモノづくりへ」――ビッグデータから“ビッグバリュー”をつかむアプローチ:組み込みイベントリポート【ESEC2013】(2/2 ページ)
上半期最大規模の組み込み技術の祭典「組込みシステム開発技術展(ESEC)」が2013年5月8〜10日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。本稿では展示会場リポート第1弾として、「インテリジェントシステム」への取り組みに注力するインテルと日本マイクロソフトのブースを紹介する。
「Building Intelligent Systems with Microsoft」――Windows Embedded 8 ファミリ登場
一方、インテリジェントシステムに最適なEnd to Endソリューションとして、Windows Embedded OSを展開するマイクロソフトのブースでは、「Building Intelligent Systems with Microsoft」をブーススローガンに掲げ、多くのパートナー企業が中心となり、Windows Embeddedファミリ搭載機器とそれに関連するソリューションの数々を訴求。さらに、パートナー企業のエンジニアやマイクロソフトのエバンジェリストの“生の声”が聞ける取り組みとして、シアターステージでのミニセッションや開発相談所などを設け、多くの来場者でにぎわっていた。
インテリジェントシステムの考えに基づいた組み込みデバイス向けプラットフォーム「Windows Embedded 8 ファミリ」の提供が、2013年3月から順次開始されている(関連記事3)。展示会場では、このWindows 8テクノロジーをベースとした最新OS製品群であるWindows Embedded 8 ファミリの他、従来バージョンのWindows Embedded OSやWindows Azure、Kinect for Windowsセンサーなど、マイクロソフトのプラットフォーム製品を中心とした数多くの展示デモを見ることができた。
Windows Embedded 8 Industryの最新デモ
まず注目したのが、小売業・製造業・医療分野向けの「Windows Embedded 8 Industry」をインストールしたタブレット端末によるデモ環境だ。ホテルの利用者(宿泊者)向けのサービス連携や、ホテルの管理者側の利用をイメージした各種マネジメント機能をデモし、Windows 8テクノロジーならではのリッチで分かりやすいアプリケーションおよびUI(User Interface)、そして、進化したデバイス/クラウド連携を訴求していた。「例えば、ホテル内にあるデジタルサイネージが、あらかじめ設定されたスケジュール通りに表示されているかを確認したり、外の気温に合わせて室内の空調を調整したりなどが可能。ホテルの設備・システムがクラウドに接続されていれば、タブレット端末からそれらをリモートでコントロールできる。一方、ホテルの利用者もタブレット端末などからルームサービスを注文したり、ルームクリーニングの可否を設定したり、近隣で使えるクーポンを取得したりといったさまざまなサービスを手軽に利用できるようになる」と説明員。
また、製造業での利用例として、世界各国に工場が点在しているようなケースを想定した工場管理のデモを実演。世界中にある工場の情報を、クラウドを介して、タブレット端末上から確認し、「万が一製造ラインが停止している工場があった場合は、その状況を迅速に把握でき、再始動/修理の指示などを出すことができる」(説明員)という。
Windows Embedded OSは、こうした“専用端末”として利用することを想定し、通常のタブレット端末で自由に操作できるボタン類や各種キーによるコントロールを制御することが可能。「Embedded Lockdown Manager」と呼ばれるGUI画面から特定のキーボード入力やジェスチャー操作、ファイルシステムのフィルタリング・保護を設定できる。「自由に操作されたくないものをGUI画面から簡単に制御できるため、不要なトラブルを防ぐことが可能だ」(説明員)という。
Zynq+Windows Embedded Compact 7
パートナー企業の1社である富士通ソフトウェアテクノロジーズは、「インテリジェントリモート制御デバイス」と題し、ザイリンクスの「Zynq-7000 All Programmable SoC」のFPGA性能と、「Windows Embedded Compact 7(以下、WEC7)」のネットワーク接続性を活用した、セキュアで安全なリモート制御ソリューションを披露していた。富士通ソフトウェアテクノロジーズは、東京エレクトロン デバイスが2013年3月末に開始した「Zynq All Programmable SoC ソフトウェアサービス for Windows Embedded」(関連記事4)において、BSP(Board Support Package)の提供などを行っており、Zynq+WEC7の開発ノウハウを有している。
「Surface」端末上で表示しているスライド資料(PowerPoint)をHDMIで出力し、それをZynq搭載のインテリジェントリモート制御デバイスでキャプチャー。その画像をネットワーク経由で別のタブレット端末(Windows 7搭載)上に表示させていた。「キャプチャー処理はZynqのFPGAで実装しているので非常に高速。一般的には外からの入力をキャプチャーするには、ビデオキャプチャ−ボードのようなものが必要になるが、FPGAを用いればプログラマブルに、すぐに実現できてしまう(HDMIコネクタは必要)」。活用イメージとしては、例えば、遠隔地(ネットワークの先)にあるFA機器のリモート監視などに利用できるという。
その他、数多くのパートナー企業がWindows Embedded関連ソリューションの展示デモを行っていた。
ミニセッションや開発相談所も
中央のシアターステージでは、マイクロソフトとそのパートナー企業による1回15分間、1日最大18本ものミニセッションが行われており、Windows Embedded関連の技術情報などを聞くことができた。
シアターステージで行われていたミニセッション。画像は、岡谷エレクトロニクスの高橋一夫氏による講演「Taka'sキッチン 8 Industryの簡単インストール」の様子である。同氏は短時間で「Windows Embedded 8 Industry」の入手からインストールまでの流れを分かりやすく解説していた
また、ブースの端には、Windows Embeddedに関する日ごろの悩みを相談できる「Windows Embedded 開発相談所」も設けられており、会期中、毎日日替わりで、マイクロソフトのエバンジェリストやWindows Embedded分野のMVP(Most Valuable Professional:最も価値のある技術者)受賞者が相談員として配置されていた。“よろず相談室”さながらに、実践的な質問への回答の他、一般的なOS/アプリケーション開発の流れ、Visual Studioの最新版の機能説明やチーム開発のやり方、さらには、組み込み機器とクラウド連携のデモまで、来場者のさまざまな要求に応えていた。
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