空港も港もないのにどうやって設置? 「島国」の太陽光チャレンジ:スマートグリッド(3/3 ページ)
国内で必要な電力の150%を太陽電池でまかなう国トケラウ。しかし、トケラウには空港も港もない。最寄りの工業国ニュージーランドは3000kmも離れている。これでどうやって太陽電池を設置したのか。建設の様子を写真で紹介する。
太陽電池以外の部分が重要
太陽光発電システムを作り上げる場合、太陽電池は必要不可欠だが、それだけでは不十分だ。直流を交流に変換するパワーコンディショナーを用意しなければならない。さらに、トケラウのように全ての電力を太陽光でまかなおうとすると二次電池(蓄電池)も欠かせない。パワーコンディショナーと二次電池は、図5で緑色に描かれた建物の中に設置した。
建物内部の様子を紹介しよう。内部は細長いパワーコンディショナー室といくぶん広い蓄電池室の2つに分かれている(図12、図13、図14)。電池、パワーコンディショナーとも1つの部品は大人1人が運べるサイズ、重量であるため、1つ1つ人力で設置していった。
システムが完成
このようなシステムを3つの主要な島に合計3つ設置した。1カ所当たり約2カ月で図7の状態から、図15や図16のような完成に至った。
トケラウは南緯8〜9度に位置するため、発電効率を優先するなら設置角度は8〜9度が最適だ。しかしそうはなっていない。約20度である。これは、表面のホコリや小さなゴミを雨水がぬぐい落とす効果を考えてのことだ。
トケラウの例から分かることは、燃料コスト、輸送コストが割高になりがちな国、地域には太陽光発電システムが向くということだ。送電網が未発達な地域にも適する。長大な送電網を建設、維持するよりも個別の太陽光発電の方が国全体で見ると安く付く国があるのだ。サハラ以南のアフリカ諸国やインド(関連記事)、中国の無電化地域で太陽光発電システムが魅力的なのはそのためだ*1)。
*1) 太陽光発電はかなり極端な環境でも利用できる。例えば、ベルギーの南極基地「Princess Elisabeth Antarctica」だ。南極大陸のへり、南緯72度という立地条件からは、太陽光発電の可能性は浮かび上がってこない。しかし、同基地では太陽光で必要な電力の4割をまかなうほどだ(残りの5割を風力、1割を太陽熱で得ている、関連記事)。
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