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インドが狙う太陽光発電、ゼロからコスト重視で立ち上げる世界の再生可能エネルギー(2)(2/3 ページ)

中国に続いてインドの再生可能エネルギーを報告する。インドのエネルギー状況は中国と似ており、総量が不足している上に急速な需要増にも苦しんでいる。さらに多数の無電化地域が残る。水力、風力の増設に加えて、インド政府は2022年までに20GWという太陽光発電導入を計画する。

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太陽光発電に期待をかける

 インドの電力の課題は2つある。総発電量が不足していることと、系統が十分に発達していないことだ。

 系統が十分に発達していないため、多数の無電化地区が残っている。2005年時点、インド国内の7800万戸が電化されていなかった。特に村落の状況が悪い。都市部の世帯電化率は9割だが、地方部(村落)は4割にとどまっていた。

 インド政府は2005年4月、「Rajiv Gandhi Gramin Vidyutikaran Yojana(RGGVY)」という電化計画を立案、2009年までに全ての村落を電化し、全世帯が電力にアクセスできる設備を整備、貧困層には無償で世帯電化を行うという3つの方針を掲げた。RGGVYにはRural Electrification policyという方針も含まれている。1世帯1日当たり1kWh*4)という電力が最低限必要だと定めた。

*4)日本の1世帯当たりの平均消費電力は、約10kWhである。

 しかし、系統が脆弱なままでは電化がなかなか進まない。そもそも送配電網が存在していない地域を電化しようとすると、電力供給量が1世帯当たり1kWhという小さい値であっても莫大な投資が必要になる。そこで役立つのが太陽光発電だ。太陽光はスケーラブルであり、モジュール1枚(出力100〜200W)単位で増設できる。出力120Wのモジュールで8時間発電できれば、RGGVYで定めた1kWhという水準をほぼクリアできる。

 インドは2008年6月に太陽光発電に関する初の長期計画「Jawaharlal Nehru National Solar Mission」を発表している。総発電量に寄与し、無電化地域をなくすという両方の目標を満たす意欲的な計画だ。国内全域を対象とし、太陽光発電の将来像を定めた。

 計画の骨子は、2020年までに20GW、2050年までに200GWという累計導入量だ。初期段階として、2012年までにインド政府が公共施設に100MWの太陽光発電システムを導入することになっている。

 2020年時点の太陽光発電の姿はこうだ。まず、系統連系した発電所(メガソーラー)を12GW設置する。次に家屋の屋根に設置し、系統と連系させる。これが3GWだ。この3GWは日本国内の太陽電池の利用方法とよく似ている。

 これ以外に地域で閉じた系統に接続しているものを3GW。最後に、分散電源として機能するものが3GWある。これは各戸ごとに閉じたシステムだ。これらは日本ではほとんど見られない利用法だ。

 以上の取り組みの結果、2000万世帯に太陽電池を使った照明を提供でき、太陽電池を使った暖房が多数の家屋(2000万m2)に行き渡る計画だ。

 計画の進展は順調だろうか。2009年の太陽光発電システムの導入量は30MW。これでは間に合わない。

 インド政府の動きは速かった。2009年10月、中央電力規制委員会(CERC)が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT:Feed-In Tariff)を発表。水力や風力を含む全再生可能エネルギーを対象とした。インドの制度はFITと太陽光発電システム購入時の補助金を組み合わせた形になっている。買い取り期間は、太陽光発電の場合25年、出力3MW以下の小規模水力は35年である。経済的なインセンティブを与えて、普及を促進する政策だ。

 2010年1月には、2008年のJawaharlal Nehru National Solar Mission計画を修正した政策も打ち出した。累計量が20GWに達する期限を2年遅らせて第13次5カ年計画(2017〜2022年)と合わせた他、2022年までを3つのフェーズ(2010〜2013年、2013〜2017年、2017〜2022年)に区分して、3種類の太陽光発電の方式ごとに目標を定めた。3種類の方式とは、集光型太陽光発電と系統独立型、系統に連携した住宅の屋根置き型とメガソーラーである。

 集光型では、設置面積を定めた。各フェーズごとに累計導入量を700万m2、1500万m2、2000万m2へと順次広げていく。系統独立型は無電化地区などに設置するものだ。順に200MW、1GW、2GWとする。独立系統型の容量は2008年時点の計画の3分の2に減ったことになる。これは無電化地域が減ったためだ。系統に連携する部分は、フェーズごとに1〜2GW、4〜10GW、20GWというように達成目標に幅を持たせた。

 国内に太陽電池産業を作り上げるために、2020年までに4〜5GWの製造能力を持たせる目標も掲げた。

 このような政策の変化が良い結果を生み始めている。まずは100MWの太陽光発電所だ。

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