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電力を液体に変えて備蓄、南極昭和基地でも再生可能エネルギースマートグリッド(1/2 ページ)

風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、出力が変動しやすいという欠点がある。南極ではこの問題が日本国内以上に深刻だ。日立製作所が開発したシステムは、風力発電を使って水素を生成し、これを別の物質と化合させて液体として蓄えることで長期的な出力変動の課題を解決した。

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 先進国や発展途上国、産油国など、国や地域を問わず再生可能エネルギーが注目を集めている。石油への依存度を下げる他、エネルギーコストの引き下げやCO2(二酸化炭素)排出量の削減などさまざまな目的がある。

 南極でも再生可能エネルギーが注目を集めている。どのような理由だろうか。

 南極の昭和基地は外部から電力の供給を受けておらず、ディーゼル発電機を利用している。発電機用の燃料は全て南極観測船「しらせ」で輸送している。ところが、しらせの輸送量に占める燃料の割合は約5割に達しており、今後の観測規模拡大には対応できないという。そこで燃料を輸送する必要がない再生可能エネルギーが注目を集めている。

使いにくい南極の再生可能エネルギー

 南極の風力資源は豊かだ。昭和基地は南極大陸から離れているため、大陸部と比べて風速は小さい。それでも年平均風速は6.5m/sであり、これは北海道や東北地方の平均値と比べても大きい値だ。風力発電には適しているように見える。

 問題点は風の強さではなく、強さが極端に変化するところにある。「夏の間は風が弱い。さらに時々20m/s以上のブリザード*1)が吹き荒れ、風があまりにも強くて使えない」(情報・システム研究機構 国立極地研究所、以下国立極地研究所)。

*1) 最大瞬間風速は61.2m/s。

 太陽光発電はどうだろうか。「冬季の3カ月間の出力はゼロ」(国立極地研究所)。地球の地軸が傾いているため、そもそも日が昇らないからだ。このように南極は再生可能エネルギーの資源量自体は大きいが、長期的な出力変動が激しく使えない。どうすればよいのだろうか。

 「季節をまたいで蓄電できる方式として、日立製作所の『風力発電機利用水素発電システム』*2)が優れていると判断した。平均風速10〜12m/sという最適な風況を持つ地域も南極大陸にある。将来はこのような場所で燃料を作り、ドラム缶などで備蓄し昭和基地で使用することも考慮に入れている」(国立極地研究所)。同システムは二次電池とは異なり、南極の過酷な環境に耐え、エネルギー蓄積量を拡大しやすい。

*2) 日立製作所によれば、同システム初の納入事例だという。

電力を液体燃料に変換して蓄積

 日立製作所のシステムは風力発電機を使う。電力で水素を製造し、さらにジェット燃料の一種である液体のC7H14(メチルシクロヘキサン、MCH)の形で蓄えるところに特長がある(図1*3)。製造した水素をそのまま蓄えようとすると、高圧ガスタンクが必要になるが、MCHの形で蓄えればガソリンなどと同一のインフラで安全に扱うことができる。これが同システムの利点だ。

*3) 触媒反応を利用して水素を可逆的に吸収、放出する有機化合物を有機ハイドライドと呼ぶ。今回のトルエン−メチルシクロヘキサン系の他、ナフタレン−デカリン系などの研究が進んでいる。メチルシクロヘキサン、デカリンとも常温(昭和基地の外気温範囲)で液体であり、水素を液体の形として貯蔵、運搬する用途に向いている。


図1 水素を蓄積、放出する化学反応 高温条件下でトルエン(右)1分子当たり、水素を3分子加えると、発熱し、メチルシクロヘキサン(左)に変化する。トルエン10cm3当たり約5Lの水素を固定できる。

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