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CFRPリサイクル技術の進展、そして次への展開を推察する!知財コンサルタントが教える業界事情(14)(3/3 ページ)

CFRP素材普及の最大のネックともいえるリサイクル技術ではどの企業が優位? 航空・宇宙、自動車の次に各社が狙う市場も調査。

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東レのCF事業開発の歴史

 東レは1961年にCFの研究を開始し、1970年には事業化を決定して、進藤・藤井・仙石特許のライセンス供与を受けています。翌1971年には、CFの生産・販売活動を開始しています。その後は、熱硬化性樹脂を使ったCFRPを用いて、釣竿(1972年)、ゴルフクラブ(1973年)といったレジャー用品へと用途開発を進めました。

 その後、航空機用材料の事業開発へと進み、ボーイングの航空機である「B737」二次構造材(1987年)、「B777」一次構造材の認定(1989年)、B787への対応(2003年)へと進んでいきました。実際には、航空機の機体の一部に採用されことから始まり(1983年)、B777で尾翼と主翼の一部に採用され(1992年)、B787では機体そのものに採用される(2006年)までになったわけです。

 これらの経緯を踏まえ、2006年4月に東レは「16年間の長期供給契約」をボーイングと締結しています**。

* 東レアニュアルレポート2008(PDF)
** 材料メーカーと航空機製造企業の専属契約は長期間 公開資料から分かる材料メーカーと航空機製造企業の契約は、いずれも長期間にわたるものです。例えば、Hexcelとエアバスとの契約では18年間、東レとボーイングとの契約では16年間という長期契約となっています。長期契約の締結によって、材料メーカーは腰を据えて、安全性の優れた高性能の材料技術開発が可能になり、航空機製造企業は時間を要する材料技術開発を支援することにより、最高の技術成果を独占的に得られることになります。


 航空機産業も、ボーイングやエアバスといった、航空機製造会社だけでは航空機を製造できない時代になっています。ボーイングやエアバスの役割が約3分の1、サプライヤーとしての日本企業の役割が約3分の1ともいわれています。そして、素材メーカーは航空機の機種にあったCFRPのシートをサプライヤーに納入しています。

 PAN系CFは、その製法に起因して必ずしも地球環境にやさしい素材とはいえません。しかし、CFのライフサイクル全体としての総合的な環境負荷で考えると、「CO2削減に貢献できる軽量構造体用素材」といえるため、注目を集めるようになりました。ですから、近年では航空機だけでなく、自動車用構造材料としても注目されるようになったわけです。そして、自動車産業での大量採用実現に貢献する、CFRTPやCFRPのリサイクル技術開発が進められているのです。

備考:分析仕様・条件

 本稿では、下記の分析条件で各社の動向を考察しました。特許データベースの使い方が分かれば、下記の条件検索パラメータを活用してご自身でも確認できます。

データベース

項目 内容
日本特許 CKSWeb(本稿では中央光学出版のご好意で試用しています)

分析条件

項目 内容
日本特許 炭素繊維強化樹脂(CFRP)特許の調査方法
Fタームを用い、CFRP特許群を作成しました。テーマコードの「4F072:強化プラスチック材料」に注目すると、今回の調査対象に関連するFタームとして、4F072AB10:繊維状物質の材質が有機繊維である炭素繊維」と「4F072AL02:予備成形品、成形品の用途が一般成形品の、乗物またはその本体部品」があります。ですから、乗物用CFRP特許群の検索式は、4F072AB10*4F072AL02となります。
乗物用CFRP特許の調査方法
テーマコード「4F072:強化プラスチック材料」では、材料の全体的特徴が示されているFタームとして、「マトリックスが硬化性樹脂であるもの」には4F072AA07が、「マトリックスが熱可塑性樹脂であるもの」には4F072AA08が、「予備成形品の形状の種類がプリプレグ、シート(SMC)のもの」には4F072AG03が、それぞれあります。
そこで、乗物用CFRP特許群において、マトリクス樹脂や予備成形品に注目した特許検索式は以下のようになります。
・乗物用CFRPのマトリクスが硬化樹脂の特許群の検索式:4F072AB10*4F072AL02*4F072AA07
・乗物用CFRPのマトリクスが熱可塑性樹脂の特許群の検索式:4F072AB10*4F072AL02*4F072AA08
・乗物用CFRPの予備成形品の形状の種類がプリプレグ、シート(SMC)である特許群の検索式:4F072AB10*4F072AL02*4F072AG03

Fターム「4f072強化プラスチック材料」について

 補強材、マトリックスなどの材料関係および製造技術については特許請求の範囲(複数ある場合はその全て)を中心に解析している。

 実施例、図面がある場合には、実施例、代表図面について解析し、クレーム記載の下位概念について具体的情報があると認められるときにのみ、さらに解析している。

クレームのみで分からないときは、明細書全体の記載を参照し、実施例、図面について解析している。

 用途については詳細な説明の項の記載を参照している。用途については、従来技術の項に記載されていても、本願についても同じと認められるときは解析している。ただし、別途記載されているときは、それを優先付与している。以外について、従来技術は解析の対象としていない。


* Fターム「4f072 強化プラスチック材料」の解説 参考リンクを参照ください。





筆者紹介

菅田正夫(すがた まさお) 知財コンサルタント&アナリスト (元)キヤノン株式会社

sugata.masao[at]tbz.t-com.ne.jp

1949年、神奈川県生まれ。1976年東京工業大学大学院 理工学研究科 化学工学専攻修了(工学修士)。

1976年キヤノン株式会社中央研究所入社。上流系技術開発(a-Si系薄膜、a-Si-TFT-LCD、薄膜材料〔例:インクジェット用〕など)に従事後、技術企画部門(海外の技術開発動向調査など)をへて、知的財産法務本部 特許・技術動向分析室室長(部長職)など、技術開発戦略部門を歴任。技術開発成果については、国際学会/論文/特許出願〔日本、米国、欧州各国〕で公表。企業研究会セミナー、東京工業大学/大学院/社会人教育セミナー、東京理科大学大学院などにて講師を担当。2009年キヤノン株式会社を定年退職。

知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、「特許情報までも活用した企業活動の調査・分析」に取り組む。

本連載に関連する寄稿:

2005年『BRI会報 正月号 視点』

2010年「企業活動における知財マネージメントの重要性−クローズドとオープンの観点から−」『赤門マネジメント・レビュー』9(6) 405-435


おことわり

本稿の著作権は筆者に帰属いたします。引用・転載を希望される場合は編集部までお問い合わせください。


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