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CFRPリサイクル技術の進展、そして次への展開を推察する!知財コンサルタントが教える業界事情(14)(2/3 ページ)

CFRP素材普及の最大のネックともいえるリサイクル技術ではどの企業が優位? 航空・宇宙、自動車の次に各社が狙う市場も調査。

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日本企業3社はこれからどうする?

 日本企業3社は、ここしばらくは自動車用CFRPの完成と、CFRPのリサイクル技術の完成に取り組むと見てよいでしょう。しかし、その次には何を目指した開発を進めるつもりでしょうか?

 自動車産業の規模はとても大きいので、当面は自動車向けの事業に専念することが容易に推測できます。しかし、日本企業3社は今後、「その次に目指すべき用途」の開発に苦しむであろうと推察されます。

 欧米の企業や研究機関(公的研究機関や大学)では、地道にCFRPの開発とCFRPのリサイクルに取り組んでおり*、新興国もいずれPAN(polyacrylonitrile)系CFRPに進出すると推察されます。このため、将来的には企業間競争の激化が予測されます。


 では、次に東レ・三菱レイヨン・帝人系企業のCFRP日本公開系特許出願件数推移をご覧ください(図2)。図2は、前回の「CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は?」に掲載した図1を本編のために再掲載したものです。

図2 東レ・三菱レイヨン・帝人系企業のCFRP日本公開系特許出願件数推移
図2 東レ・三菱レイヨン・帝人系企業のCFRP日本公開系特許出願件数推移

 図2から、出願年が2010年の公開系特許件数*はいまのところ少ないものの、出願年2009年までよりも、乗物を対象とする特許件数の割合が減少しているように見えます。この動きから、どうやらPAN系CFの次なる用途開発が既に始まっていると推察されます。

 ガラス繊維強化樹脂(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastic)は、既に風力発電装置の風車用回転ブレード(回転翼)に使用されています。ですから、航空機から自動車へと生産量での汎用化を遂げつつあるCFRPも、コスト的に見合えば風力発電装置の次世代風車ブレードに採用される可能性があると考えられます**。

* 2010年の日本公開系特許出願件数 通常、特許の出願から公開までは1.5年ですから、2010年公開分には約2カ月分がまだ含まれていないことにご注意ください。
** 風力発電装置 風力発電は再生可能エネルギーとして注目されており、欧米における最近の注目度は太陽光発電をしのぐものとなっています。例えば、日本と世界の風力発電量を参照


 そこで、東レ・三菱レイヨン・帝人系企業の「CFRP特許明細書」中に「風車」という単語が登場する日本公開系特許件数に注目することにしました。その結果は次の通りです。

「風車」に関連する特許の抽出結果
企業名 件数
東レ 66
帝人系企業 4
三菱レイヨン 3

 どうやら、各社とも風力発電装置用の風車ブレードを意識しているようですが、特許出願件数からは東レが先行していると推察されます。

 次に、これらの特許において、「特許の主題(クレーム)に基づき付与される日本特許分類FI*」に注目すると、「F03D:風力原動機」が付与されている特許件数は東レの1件だけです。ですから、多少乱暴な言い方にはなりますが、自動車分野の次を目指す事業開発競争でも東レが先行している**と推察されます***。

* 日本特許分類FI 日本特許庁は特許の主題(クレーム)に基づき、「FI(ファイリング・インデックス)」を付与しています。なお、日本公開系特許公報では、「付与されたFI」が機械的に変換されたものが「IPC(国際特許分類)」となっていることにご注意ください。
** 東レの炭素繊維事業の今後の取り組み 繊維産業シンポジウム「東レの先端材料、技術革新による成長戦略」(2010年3月15日)の講演において、エネルギー分野へのソリュション提供の一例として大型風車を挙げています(資料)。
*** 企業における特許出願 知的財産戦略の観点から、技術開発を行う国や地域(技術開発拠点国)、およびビジネスにかかわる国や地域(生産国・流通拠点国・市場国)に特許を出願します。企業が特許出願にかける費用は、日本出願の場合、社内コストや当初の権利維持費まで考慮すると1件当たり約100万円で、外国出願まで行うと翻訳費用を含め約300万円となり、複数国に出願ともなれば約500万円となります。ですから、特許出願件数には企業の経営的意思が反映されていると推察されます。


 それでは、最大手かつ最古参の東レのCF事業開発を振り返ってみることにしましょう。

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