大企業は「普通の活動」を実現するのが難しい?:「製造マネジメント」ランキング
@IT MONOist 製造マネジメントフォーラムでアクセスが多かった記事を紹介します。今回の集計対象期間は、2012年4月1日〜15日です。
2012年4月前半の人気記事ランキングをご紹介します。第1位は「家電版『覇者の驕り』――名門家電メーカーは垂直統合モデルから脱却できるか」でした。
家電メーカーの厳しい決算状況については、経済紙などで報道されている通りです。井上久男氏のコラム『ある視点』では、海外で活躍する「侍エンジニア」や独自の経営手法・生産方式を確立しつつある「現代自動車の経営方針」、現場エンジニアを勇気付ける「土光敏夫の言葉」など、勢いのある企業や個人の取り組みを紹介してきました。
その井上氏が「今回ばかりは」と非常に厳しい筆を取ったのが、今回ランキング1位となった「家電版『覇者の驕り』――名門家電メーカーは垂直統合モデルから脱却できるか」でした。かなり刺激的な内容だったこともあり、多くの反響をいただきました。記事を公開した段階ではおおよその決算情報が公開されていましたが、その後、赤字額はさらに増えていることが伝えられています。
記事で紹介したメーカー各社は既に痛みを伴う改革にかじを切り、復活に向けた活動をスタートさせています。日本のモノづくりをけん引してきた各社の今後に期待したいところです。
そして第2位だったのが、「ウチだって『普通の活動』ができなくて倒産寸前だったんデスヨ」という、カタコトの日本語タイトルの記事でした。こちらは、実は硬直した組織が企業活動の阻害要因となっていた、ある架空の企業の起死回生に至る道のりを紹介しています。
「S&OPプロセス」は、2011年ごろから注目を集めつつあるキーワードです。以前からS&OPプロセスを実現するためのITシステムの類いはありましたが、新たにこのプロセスに即した製品が出現してきています。
サプライチェーンの長大化とグローバル化による普通の業務の混乱をどう解消するか、事業戦略を日々の業務にどう落とし込んでいけばうまくいくのか、といった課題解決へのヒントがS&OPプロセスの中にあるからかもしれません。
個々人で語っていくと、当たり前、普通の活動としか思えないことが、組織のしがらみの中でうまく実現できないことは少なからずあるかと思います。こと、S&OPプロセスがフォーカスしている通常業務の中での販売・生産部門の協調は、相互の利害が衝突するために、難しくなりがちです。
しかも、こうした問題に頭を悩ませているのは経営トップではなく、現場リーダー層であることから、なかなか改革が進まない現実もあります。
経営トップはあくまでも「もうけ」がいくらになるか、売り上げがいくらになるか、より多くの利益を出すための新しい戦略をどう組み立てるか、というように「お金」の世界で思考しています。
一方の、現場リーダーは在庫コストを削減しろ、より多くのモノを売れ、と製品=「モノ」の世界と日々格闘しています。しかも、生産現場はより少ない在庫で多くさばくことを目指しており、販売の現場はとにかく早くたくさん納品することを目指しています。ここで利害が衝突する双方が調整のテーブルについたとしても、うまくいかないことは明白です。
しかし、通常のオペレーション業務に都度経営トップが参加して、水戸黄門のように問題を解決していく……というのは、企業規模が大きくなればなるほど非現実的です。それゆえに、業務の中で全体最適の計画を打ち出せずに部門と部門のすき間に多くのムダを生じさせることになるのです。歴史が長くグローバルで展開してきた企業ほど、拠点ごとの部分最適が先行し、こうした問題は深刻かもしれません。
S&OPプロセスは、このような問題を調整し、解決するのに適したモデルといえるようです。記事では業務の進め方や組織そのものをS&OPプロセスに即して変更し、危機を脱却した架空のグローバル企業「OKメディカル社」の改革事例を紹介しています。連載ではこれまで、各部門の担当者の視点で、課題を紹介してきました。読んでみて、同じ悩みを抱えていると感じたならば、ぜひ連載第6回目以降で展開する詳細な解説にも目を通してみてください。
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