電力を食い過ぎるサーバ、NTTデータが直流とクラウドで解決:スマートグリッド(2/2 ページ)
300台のサーバを社内に抱える日本無線。ITコストや消費電力がばかにならない。仮想化技術でサーバを集約したことに加え、NTTデータやNTTデータ先端技術とともに高電圧直流(HVDC)技術を採用し、消費電力を引き下げた。HVDCはどのような場合に消費電力を低減できるのだろうか。
HVDC技術で何が変わるのか
HVDC技術のメリットは、従来技術と比較すると分かりやすい。
従来システムでは、まず系統から配電されてきた交流を、いったんUPS(無停電電源装置)内で直流に変換し、もう一度交流に変えている(図2)。その後、各サーバが内蔵する電源内で再度、直流に変換している。交流と直流を変換するたびに変換ロスが生じ、これが全て熱に変わってしまう。特にUPS部分の変換効率が80〜90%と低かった。
図2 従来の給電システムとサーバの関係 電力を3回も変換しており、熱の発生(消費電力の増大)要因となっていた。サーバの台数も60台と多い。交流400VでUPSに入力し、交流200Vで出力。サーバは直流12Vで動作している。出典:NTTデータ
新システムの改良点は2つある。まず、変換回数を減らしたこと、次に、各サーバが個別に電源を備えるのはなく、電源を1本化したことだ(図3)。変換回数が3回から1回に減ったことや、サーバ電源の集中化を進めたことで、電力効率を改善できた。「サーバ電源を集中させたDC SERVER RACK SYSTEMでの変換効率は95%である」(NTTデータ)。
図3 HVDC技術を導入した給電システムとサーバの関係 電力変換の回数を減らし、サーバも7台に減っている。交流400Vを受けたHVDC給電システムが直流340Vに変換して出力し、DS RACK SYSETMが、12Vと48Vでサーバに出力している。出典:NTTデータ
図3にある各システムの内容は以下の通りだ。「HVDC給電システム」には、日本無線の「FRESH HVDC」を採用した。FRESH HVDCは交流200〜6600Vを入力すると、直流340〜380Vで出力できる装置。電力変換効率は95%以上だ(図4、図5)。
図5 HVDCシステム全体の詳細 図4の装置は、図中の縦点線よりも左側に相当する。点線より右側はNTTデータなどの製品で構築した。UPSの代わりに停電に使うバッテリーが並列に接続されていることが分かる。出典:日本無線
図3にあるサーバ群へ電力を集中的に送る装置として、NTTデータ先端技術が開発した「DC SERVER RACK SYSTEM」を用いた(図6)。HVDCを生かすためには、サーバ自体も直流対応に変える必要がある。NTTデータの「PRORIZE DCサーバ」(12V入力)と、シスコシステムズの「Cisco UCSサーバ」(48V入力)を用いた。
図6 システム後段の様子 図右下が直流を分配する「DC SERVER RACK SYSTEM」、図右上が直流対応の「PRORIZE DCサーバ」。図左には図4の右側のシステムの一部を示した。出典:NTTデータ
なお、HVDC給電システムとサーバのレイアウトは比較的自由である。「今回の事例では20〜30mの直流ケーブルでHVDC給電システムとサーバを接続した」(NTTデータ)。
【訂正】 記事の掲載当初、2ページ目の図2の下で「サーバ電源を集中させたDC SERVER RACK SYSTEMでの変換効率は98%である」としていましたが、これは「サーバ電源を集中させたDC SERVER RACK SYSTEMでの変換効率は95%である」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。
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