アップルも太陽電池、米国最大規模の燃料電池と組み合わせてデータセンターを運営:スマートグリッド
工場やデータセンターを「ゼロエネルギー化」しようとする取り組みが進んでいる。再生可能エネルギーの導入に熱心で、データセンターのPUE(電力使用効率)に優れる米Googleに続いて、米Appleが米国最大規模の太陽光発電システムと燃料電池システムでデータセンターのエネルギーを革新する。
米Appleのクラウドサービスは、太陽光発電システムと燃料電池から得られた電力で動くことになる。
米Appleが2012年2月20日(米国時間)に公開した環境対応に関する報告書「Facilities Report 2012 Environmental Update」(PDF)によれば、同社が米国南東部のノースカロライナ州*1)メイデン(Maiden)に建設中のデータセンターは、電力供給の多くを太陽光発電システムと燃料電池システムから受ける(図1)。それぞれのシステムはエンドユーザー(Apple)が所有するものとしては、米国でも最大規模であるという。
*1) ノースカロライナ州中央部は巨大データセンターの集積地である。Appleの10億米ドル規模のデータセンターの他に、例えば米Googleの6億米ドル規模のデータセンターと、米Facebookの4億5000万ドル規模のデータセンターが立地している。
図1 メイデン・データセンター 米Appleがノースカロライナ州メイデン(図中赤丸)に建設中のデータセンター(図下)の外観。「iDataCenter」とも呼ばれる。建物面積は40万5000m2(100エーカー)。建物周囲の敷地に太陽光発電システムと、バイオガスを使う燃料電池システムを設置する。はめ込み写真の出典:米Apple
「太陽電池+燃料電池」で運営
太陽光発電システムの年間出力は明らかにされていない。ただし、同データセンターが敷地内で生み出す再生可能エネルギーの合計年間出力が4200万kWhであるため、次に紹介する燃料電池システムの出力との差分から、約200万kWhではないかと考えられる。
2012年末にはデータセンターと隣接した出力5MWの燃料電池システムと接続する。これは電力会社などが所有するものを除けば米国では最大規模になるという。燃料は全てバイオガス*2)であり、年間発電量は約4000万kWh。燃料電池はデータセンターのベースロードを賄うという。
*2) Appleが利用するバイオガスの種類は不明。米国では、酪農から生じる廃棄物などから作り出したCH4(メタン)を主成分とするバイオガスを大量に利用している。
再生可能エネルギーへ3段階で到達
同社は生産からリサイクルに至るまで地球温暖化ガス排出量を減らす「net zero energy program」(プログラム)を推進している。同社のコーク事業所(アイルランド)やミュンヘン事業所(ドイツ)、オースチン事業所(テキサス)、エルクグローブ事業所(カリフォルニア州)で使う電力は既に全て再生可能エネルギー源から得られたものだという。
Appleは再生可能エネルギーの利用について、3段階からなる戦略を立てた。まずは工場におけるエネルギー消費の効率化、次に今回のように設備に自社所有の太陽光発電システムを敷設すること、最後に不足する電力を遠隔地の再生可能エネルギーで賄うことだ。事業所の立地は必ずしも再生可能エネルギー源に恵まれているわけではないからだという。
メイデンのデータセンターは非常に効率が高いため、LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)プラチナ認証*3)を受けた。同社によれば、これほど大規模なデータセンターとしては初めてLEEDプラチナ認証を受けたという。例えば夜間の冷気を利用した冷水蓄熱システムの導入や、サーバ出力と同期した可変速度ファンの制御、高圧直流給電などが評価されている。
*3) 米国グリーンビルディング協会(USGBC:U.S. Green Building Council)が開発、運営している建築物に対する環境対応評価。「エネルギーと大気」の他、「サステイナブルな敷地」や「水効率」など5つの評価項目がある。
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