使いにくい風力を使いやすく、東京電力など電力3社が風力発電拡大へ:立ち上がる風力発電(3)(2/2 ページ)
風力発電を大量導入するには、出力変動を吸収する仕組みが必要だ。個別の電力会社がそれぞれ対応するよりも共同で取り組んだ方が、より導入量を増やせる。北海道電力と東北電力は、東京電力が持つ火力発電能力を使って風力発電の大量導入に取り組む。新規導入量は60万kW(600MW)だ。
東日本の電力会社3社が共同で風力を安定化、大量導入に備える
北海道電力と東北電力、東京電力は、2011年9月30日、共同で「風力発電導入拡大に向けた実証実験」を開始すると発表した*3)。従来の電力会社ごとの風力の導入拡大ではなく、大量の火力発電所を抱える東京電力がバッファ役となり、北海道電力と東北電力の風力発電拡大を助ける形だ。共同実証実験では、3社間を接続するのではなく、北海道電力と東京電力、東北電力と東京電力という2社間で組む。
*3)3社は2009年12月時点で、風力発電導入拡大のため、先行して北海道電力と東京電力の2社で「北海道地域内における風力発電導入拡大の実証試験」を行うことについて基本合意したと発表している。このとき2014年をめどに合計10〜20万kWの風力発電を新規に導入し、北海道電力が受電するとしていた。今回の発表は、この発表を受け、さらに拡大した形になっている。
北海道電力と東京電力の取り組みは、次のように進める。まず2013年度中に北海道地域で新規に風力発電を20万kW募集する。「風力発電所の稼働後、2014〜2015年に実証実験を開始する。風力発電の連系が全て完了するまで1〜2年実験を続ける」(東京電力)。
東北電力と東京電力の実証実験への募集期間は2013〜2014年度だ。新規風力発電の募集量は40万kW。「2016年から実証実験を開始し、40万kWが全て連系完了するまで数年間実験を続ける」(東京電力)。
北海道電力と東北電力は性格が異なる
風力発電の出力変動には2種類ある。1つは出力の変化量が小さく、数分程度で変化する短周期変動、もう1つは数時間単位で出力が緩やかに大きく変動する長周期変動だ。北海道電力、東北電力とも短周期変動には単独で対応できる。必要な火力発電の容量が小さくてもよいからだ。北海道電力は30分より短い周期の出力変動を自社で調整するとしている(図3)。
北海道電力は30分以上の長周期変動に対応する能力が低いため、風力発電所が出力する電力が過大な場合は、北海道・本州間電力連系設備(双方向60万kW、直流±25万V)を通じて、最大20万kWの電力を東京電力に送る(図4)。
図4 北海道電力と東北電力、東京電力の協力関係 風力発電の出力が連系可能量を超えて、過大になったとき、(1)連系線を通じて東京電力に送電し、(2)風力発電所に遠方指令を出して、出力上限時を定める。出典:東京電力
さらに過大なときは、北海道電力が風力発電事業者に遠方指令を出し、出力上限値を定める(図5)。解列条件と似ているように見えるが、あらかじめ決められた時間に出力を停止しなければならない解列条件よりも、風量発電の出力を有効に利用できる。
東北電力は長周期変動に対応する能力もある。しかし、消費電力量が小さい(負荷が小さい)季節では問題が起こる可能性がある。春季や冬季の夜間は負荷が小さいため、火力発電を最低限度まで絞っている。ここで風力発電の出力が増えると対応できない。そこで、東京電力に相馬双葉幹線(東京電力方向500万kW、交流50万V)を通じて最大24万kWを送電し、同時に火力発電の出力を上げる。わざわざ火力の出力を上げる理由は、その後の火力の「下げ代」を増やすためだ(図6)。
図6 東北電力と東京電力の関係 夜間など火力発電がほとんど動いていない時間帯では、風力発電の変動を吸収できなくなる(左上)。そこで、火力の出力を上げつつ、東京電力に送電する(中央下)。東京電力は送られてきた電力を社内で吸収する(図右上)。出典:東北電力
この方式でも吸収できない場合は、北海道電力同様、東北電力の遠方指令により、風力発電所に対して出力制御指令値を伝える(次回へ)。
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