家庭の電力の7割をまかなう燃料電池:スマートグリッド(3/3 ページ)
燃料電池の改良が進んでいる。高温で動作するSOFCと呼ばれる燃料電池が家庭向けに初めて実用化された。JX日鉱日石エネルギーはSOFCを組み込んだエネファームを製品化。二次電池や太陽電池と合わせたシステム化も進める。
さまざまな用途に使える燃料電池
2009年5月から各社が製品化した従来型のPEFC型エネファームとJX日鉱日石エネルギーのSOFC型エネファームの違いは、燃料電池の方式にある。
PEFCは各種の方式のうち、エネファーム以外にも最も広く利用されている燃料電池。燃料電池車(FCV)や携帯型充電器が今後期待できる用途だ。
PEFCは動作温度が100℃以下と低く、小型化が容易で携帯型機器にも内蔵しやすい。さらに動作を開始してから発電が始まるまでの時間も短い。負荷の変動にも強い。一方、発電効率は30〜40%と燃料電池としては最も低く、低温で化学反応を進めるために貴金属であるPt(白金)触媒が必要だ。従ってコスト低減に限界がある。
SOFCは、PEFCと逆の性質を持つ。動作温度は燃料電池のうち最も高い700〜1000℃(SOFC型エネファームは750℃)。小型化には適さない。予熱動作が必要であり、起動時間が長い。一方、貴金属触媒は不要であり、発電効率は大型の装置では50〜65%にも達する。
大出力用途にも使える燃料電池
このような性質から、SOFCは特定の場所に据え付け、24時間連続運転したときに最大の能力を発揮する。世界で初めてSOFCを量産した米Bloom Energyは、まさにこのような用途を目指している。
Bloom Energyが2010年2月に発表した「ES-5000」(図3)は重量が10tもあり、5.7m×2m×2mという大型の箱だ。出力は100kW、発電効率は50%以上と高い。価格も装置1基70〜80万米ドルと高価だ。企業の社屋やデータセンターの補助電源として役立つといい、米Googleや米Wal-Mart、米Cola-Colaなど20社以上が採用している。
燃料電池は電解質の種類や利用できる燃料、作動温度によって数種類に分類できる。PEFCやSOFC以外にも、複数の燃料電池が開発されている。
PEFCと並んで動作温度が低く、メタノール(メチルアルコール)を燃料として使う直接メタノール燃料電池(DMFC)は、携帯型電源として実用化されている。リン酸水溶液を電解質に使い、蒸気を利用しやすいリン酸形燃料電池(PAFC)や溶液炭酸塩を電解質に使う溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)などは工場の補助電源として活用されている。
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