家庭の電力の7割をまかなう燃料電池:スマートグリッド(2/3 ページ)
燃料電池の改良が進んでいる。高温で動作するSOFCと呼ばれる燃料電池が家庭向けに初めて実用化された。JX日鉱日石エネルギーはSOFCを組み込んだエネファームを製品化。二次電池や太陽電池と合わせたシステム化も進める。
停電に強いエネファームを作る
2011年3月11日に発生した東日本大震災。系統電力が停電した後、計画停電に突入した。太陽光発電システムやエネファームは本来、系統に頼らずに発電できる技術だが、実際には制限があった。系統が停止した際、系統へ電流が流れ込む「逆潮流」を避けるために、機器が自動停止する設計になっているからだ(関連記事:大震災で分かった太陽電池の課題)。
太陽光発電は1.5kWに限られるものの自立運転モードを利用できた。しかしエネファームではガスを燃焼させて動作するバックアップボイラー(ガス給湯器機能)しか利用できず、発電はできない。
JX日鉱日石エネルギーは2012年夏に、エネファームと二次電池や太陽電池を組み合わせた「自立型エネルギーシステム」の販売を開始する*2)。充放電を制御することで、エネファームを核とした家庭用エネルギーシステムを作り上げるということだ。平常時は電力自給率を高めることができ、停電時はシステムの切り替えを操作しなくてもそのまま自立動作できる。
*2)同社は2015年にはエネファームの販売価格が50万円に低減できるよう製品開発を進めるとしている。
平常時、家庭の消費電力がエネファームの出力(700W)よりも少ないときは、二次電池の容量への充電を優先して、電力負荷追従運転ができるという。700Wを上回ったときは、二次電池が放電する。太陽光発電を組み合わせたときは、太陽光発電の売電を優先して動作する。
停電時は家電の電力消費量が600W未満であれば、都市ガスの供給が続く限り、自立運転が続く。二次電池にも充電する。600Wを超えるときは、二次電池が放電し、電池の残容量がエネファーム自体の動作に必要な量を下回るまで動作する。同社によれば、6〜9畳用エアコン(410W)と冷蔵庫(35W)、テレビ(70W)、照明(85W)という構成であれば600Wでまかなえるという。
屋外に設置する独自の二次電池システム(6kWhのリチウムイオン二次電池)とエネファームを組み合わせたシステムだと、電池の価格は約100万円。さらに太陽電池モジュールを組み合わせると、容量にもよるがさらに約200万円上乗せする計算だ。
電力自給率90%を実現
住宅向けエネルギー機器の実証試験を続けている同社のモデルハウス「ENEOS創エネハウス」(横浜市)では、エネファームと太陽電池や二次電池を組み合わせたシステムの実証実験を重ねている。2011年1〜2月に実施した従来のPEFC型エネファームを使った実験の結果は目覚ましい。
出力750Wのエネファームと出力5.8kWの太陽電池モジュール(主に三洋電機「HIT」)、容量11.6kWhのリチウムイオン二次電池を組み合わせた場合、電力自給率は90%に達するという(図2)。
2011年9月にはENEOS創エネハウスにSOFC型を設置。SOFC型はPEFC型よりも発電効率が高いため、電力自給率がより高まると見込まれている。
図2 エネファームなどを使った電力自給実験 2011年1〜2月に実行したもの。1日当たり22.4kWhという消費電力量のうち、20.1kWhを自給できており、自給率は90%である。エネファームは平均すると出力77%で動作しており、ベース電力供給力としての役割を持ち、二次電池と太陽電池がピーク電力供給力として働いていることが図から読み取れる。出典:JX日鉱日石エネルギー
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