競合他社の戦略を読み解くパテントマップ〜知的財産権情報の分析とビジュアル化:自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識(5)(2/4 ページ)
自社だけでなくライバルの研究開発動向まで分かっちゃうパテントマップってどんなもの? 分析方法の基本を一気に理解しちゃいましょう
特許公報の分析から読み解く業界動向・他社の研究開発戦略
前回の講義でも触れたように、特許・意匠・商標公報の1ページ目(フロントページ)には以下のようないろいろな情報が掲載されています。
特許・意匠・商標番号 (出願番号・公開番号など)
日付 (出願日・公開日など)
分類情報 (特許であればIPC・FI・Fターム、意匠であれば国際意匠分類(ロカルノ分類)や日本意匠分類(Dターム)、商標であればニース分類)
知的財産権を出願した組織体に関する情報 (出願人、発明者、代理人など)
これらの情報を書誌的事項といいますが、書誌的事項を利用することで、特許公報の内容を1件1件読み込まなくても、いろいろな角度から分析を行うことができます。
いくつか分析の例を示していきましょう。例えばある特定の技術を集めた特許の集合について出願年ごとに並べると以下のような出願件数推移マップになります。
この出願件数推移マップの例では出願件数が一貫して増加していますので、この技術分野に関する研究開発活動が非常に積極的に行われていると予想できます。
次に特許の集合に含まれる出願人(=特許を出願している企業や研究機関など)を円グラフで表現すると以下のような出願人シェアマップとなります。横棒グラフで整理すれば、出願人ランキングマップとなります。
出願人シェアマップを見るとA社のシェアが特許的には過半数に届きそうな勢いです。もちろん特許出願件数と市場シェアはリンクしませんが、特許を数多く出しているということは、より多角的に他社に対する法的な参入障壁を築いているといえます。
そのほかに、出願人と特定の分類項目(例:課題別、解決手段として用いる材料・パラメータなど)のマトリックスマップなどがあります。
A社は項目aから項目cに対してバランスよく特許出願しているのに対して、B社は項目b、C社は項目cに偏った特許出願をしていることが分かります。ここから、A社・B社・C社の各項目への注力度合いを把握することができるのです。
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