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そもそもEDAって何なの?電気回路設計者向け 実践! EDAツール活用法(1)(1/2 ページ)

電子機器設計のあらゆる場面で利用されているEDA。設計プロセスでのEDAの目的や活用方法を分かりやすく解説

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電気回路設計者向け:実践! EDAツール活用法
サイバネットシステム
電子機器設計の現場で最近よく耳にする「EDA」。本連載では、電子機器設計の構想から実装に至るあらゆる場面で利用されているEDAが、設計プロセスの各場面でどのような目的でどのように活用されているのかを解説していく。(編集部)

0. はじめに

 電子機器の設計に携わる方は、「EDA」という言葉をよく耳にされると思います。お仕事でEDAの恩恵を毎日受けている方もいらっしゃるかもしれません。実際に、EDAは電子機器設計の構想から実装に至るあらゆる場面で利用されています。この連載では、初回にEDAの概要について説明し、その後、回路設計、プリント基板設計、信号解析、電磁波障害抑制設計、熱解析、部品データ管理システムなど、現在EDAと呼ばれるものが設計プロセスの各場面で、どのような目的でどのように活用されているのかを解説していきます。

1. 用語としてのEDA

 EDAとは、Electronic Design Automationの頭文字を取ったもので、集積回路や電子機器など電気系の設計作業の自動化を支援するためのソフトウェアやハードウェアを意味します。

 一般に、コンピュータを使った設計・製造支援ツールを表す用語としては、CAD(Computer Aided Design)やCAE(Computer Aided Engineering)、CAM(Computer Aided Manufacturing)というものがありますが、EDAは電気系の CAD/CAE/CAMの総称と考えると理解しやすいかもしれません。

 EDAの実現に利用されるコンピュータソフトウェアはEDAツールと呼ばれ、EDAツールを開発・販売する企業はEDAベンダといいます。EDAツールを動作させるハードウェアとしては、主にPC(Personal Computer)や WS(Workstation)が使われています。企業によっては、設計者の仕事をやりやすくするため、特別にEDA環境を整備するための部門を設けているところもあります。

2. EDAツールで何ができるの?

 一口に電子機器といってもいろいろあります。その設計といわれてもピンとこないかもしれませんが、普段皆さんが目にするものとしては、テレビやエアコンなどの家電をはじめ、携帯電話などが代表的です。それ以外にも自動車や産業機器の制御用にも使われたりしています。しかしEDAツールを使っても、テレビや携帯電話のすべてを設計できるわけではありません。EDAツールが担う(得意とする)設計というのがあります。

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画像1 エレクトロニクス製品に使われているプリント基板を設計するのにEDAツールが使われている

 テレビあるいはPCでもいいのですが、裏蓋を開けて中を見ると、そこには電子部品がたくさん付いた緑色(別の色もあります)の板が入っています。この板はプリント基板と呼ばれ、搭載している大小さまざまな部品の組み合わせで各製品に必要な機能を実現しています。これらの中には、抵抗やコンデンサといった単純な機能部品もありますが、IC(Integrated Circuit:集積回路)やLSI(Large Scale IC:大規模集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)など、非常に複雑な機能を持つ半導体部品も含まれています。かなり大ざっぱないい方をすれば、これらの集積回路やプリント基板を設計するために使うのがEDAツールです。


3. なぜEDAツールを使うの?

 誤解があるといけませんが、EDA環境、つまりコンピュータによる設計支援がなければモノが作れないというわけではありません。現在でもEDAツールの補助なしに電子機器の設計・製造を行っている企業も多数存在します。では、コンピュータによる設計支援はなぜ必要とされているのでしょうか?

 理由はいろいろと挙げられますが、簡単にいえば、いいものを安く早く作りたいからです。品質や安全基準を満たしつつ、市場の要求に応えて企業としての競争力を維持するために、EDAツールは欠かせないものになっています。前述したように、必ずしもすべての製品においてこれが当てはまるとはいい切れませんが、EDAツールを使わずにこれらを実現することが難しくなっているのは事実です。

 電子機器に対する市場からの要求としては、多機能/高機能化、小型軽量化、低価格化、低消費電力化などが挙げられます。一方、企業にとっては、いかに早く市場に製品を投入できるかが、利益を確保し生き残るためのキーポイントとなっています。設計者が手書きで図面を引き、テスト基板を起こして検証を行うことも可能ですが、回路の複雑化・小型化などが進む昨今では、一度で設計がうまくいくことはまれで、何度もやり直しを強いられることになります。小さな基板であれば数回の実験コストもそれほど気にならないかもしれません。しかし部品も無駄にすることになりますし、それだけ開発の完了が遅れてしまうことになります。1つの基板の試作を数回、それが年に数プロジェクト走るとしても、積み重ねれば膨大な損失になります。基板ならまだしも、それがLSIの試作ということになると、損失の額も桁(けた)が変わってしまいます。

 EDAツールを使ってコンピュータ上で実験ができれば、実機によるテスト回数を大幅に減らし、さらに廃棄物も減らすことができ、コストを低減できます。それだけでなく、設計期間を短くし、早期に次期製品の開発に着手できれば、人的リソースを有効利用し、競争力を維持することも可能になります。EDAツールの利点として、過去の設計の再利用が容易だという点も見逃せません。

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