電子機器設計部門向け データ管理システムの必要性:電気回路設計者向け 実践! EDAツール活用法(5)(1/2 ページ)
EDAツール活用法を知る連載。今回は設計作業以外に従来の回路設計現場が抱える課題について触れる
サイバネットシステム
電子機器設計の現場で最近よく耳にする「EDA」。本連載では、電子機器設計の構想から実装に至るあらゆる場面で利用されているEDAが、設計プロセスの各場面でどのような目的でどのように活用されているのかを解説していく。(編集部)
0. はじめに
前回の記事では、プリント基板の回路設計から基板の設計で重要な「線路」と「電源」を考慮したSI/PI解析について紹介しました。もう一つ重要な、放射ノイズ(EMI)への対策を紹介する前に、設計作業以外に従来の回路設計現場が抱える課題について触れたいと思います。回路設計現場は現状どのような環境になっており、どのような問題が発生しているのでしょうか?
1. 回路設計環境の現状と課題
ITツールが進歩したおかげで、回路設計CADや回路シミュレータツールなどの設計を効率化するためのさまざまなソフトウェアが設計者の環境にあり、シンボル作成や設計そのものの効率化は進んでいます。ただし、ITツールが進化した今でも設計者は品質向上や業務効率改善のため、多くの課題に直面しています。そして、いま設計者が抱えている問題の約50%が純粋な回路設計に掛かる工数以外のフェイズにあります。
<設計者からの要望の一例>
- 部品選定に必要な情報の収集に時間がかかる
- 既存部品の情報に誤りが存在するため、チェック/修正に時間がかかる
- BOM作成が手作業のため、時間がかかるうえ、ミスが発生しやすい
このような問題は従来のCADツールやシミュレータで解決することができません。なぜ、このような状況にあるのでしょうか? 回路設計のプロセスから見直してみます。
このプロセスにおいて上述の問題がなぜ発生するのでしょうか? 部品選定に必要な情報が複数のシステムで管理されていたり、量産された回路図が紙もしくはイメージファイルで管理されていたりするため、結局設計者の頭の中で情報を収集し分析するしかないからです。この作業は以前の紙ベースの設計と何も変わっていません。
これらの問題を改善するには設計プロセスを変更する必要があります。
2. 回路設計プロセスの改善
どのように設計プロセスを改善すればよいのでしょうか? 1つは図2のように設計データを承認するプロセスを設け、後工程に進む前に何段階かのチェックプロセスを経由させることです。
図2のように従来、出図段階でしか設けられていなかったチェックプロセスを部品選定/シンボル作成段階にも設けます。これによって誤ったデータを流用することでミスが伝播するリスクを削減できます。
もう1つはこのように承認されたデータを共有することです。従来の設計環境では紙ベースでの管理や単なるファイル置き場での管理といった管理形態が主な方法でしたが、インデックスとしてデータに付加できる情報が少ないため、検索/共有には向いていません。これらは適切な管理システムなどで管理する必要があります。
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