成功する品質改善プロジェクト体制はここが違う:品質改善の王道を行こう(2)(3/3 ページ)
モノづくり現場で発生している品質不良を改善し、不良率半減を目指そう。品質改善のツールはあくまでもツールであって、それに振り回されてはいけない。本連載は品質改善コンサルタントによる品質改善の王道を解説する。
プログラム2 目標設定
目標設定は、「慢性不良ゼロ」「10分の1」「半減」など、活動として取り組みがいのある数値を設定しましょう。設定した目標値は必ず幹部の承認を得てください。
「モデル製品の特定不良項目の改善」がテーマであれば、「不良ゼロ」「10分の1」も十分達成可能な目標値です。原因が分かれば劇的に改善できるはずです。
モデル製品の特定不良項目の改善は最も取り組みやすい活動ですが、テーマの選定や目標値の設定は「幹部の思い」もありますから、プロジェクトチームだけでは決められないこともあります。幹部の思いとして、「全品種の特定不良項目の改善」をテーマと設定された場合は、「不良半減」が目標値として妥当でしょう。例えば、結果として「傷」という不良項目になっただけで、品種によって傷が付く原因が違うかもしれません。要因把握をしなければ何ともいえないので、「不良ゼロ」「10分の1」は目標値として高過ぎると思います。さらに総合不良率(全品種の不良項目のすべて)をテーマとされると、目標値は悩みます。幹部とよく相談して、達成できそうな目標値より少し高めに設定します。
目標値を決めたら、その前提条件は明文化してください。何年度の不良率をベンチマークとするのか、そのときの品種と生産量、生産ライン、投資採算性などです。前提条件はプロジェクト終了時の効果算出に使いますから、前提条件がコロコロ変わるようだと活動が振り回されてしまいます。
いずれのテーマ・目標値であっても、モデル製品を決めて、特定不良項目の改善から取り組むのが基本です。散発的にアレもコレもと手を出すよりは、マンパワーを集中させて、1つの不良項目を改善してから、次に取り組むようにしてください。
【補足】目標設定に当たり、狙う不良項目の不良率が分からない、データが足りない場合は現状把握を行います。慢性不良の場合は不良率が分かっているはずなので、現状把握を省略します。
プログラム3 活動計画の作成
ここまでで、プロジェクトメンバーの選出、テーマの選定、目標の設定について書きました。最後に、活動開始に先立って決めるべきそのほかの事項について紹介します。活動計画をあいまいなまま進めるプロジェクトは失敗します。決めるべきことは初めにきっちり決めておくことです。
活動の背景
背景とは物事の背後にひそんでいる事情です。競合他社の動向や社内の状況など、品質改善をやらなければならない理由を書きます。
活動の目的
目的とは目標値を達成することで、実現できる事柄です。顧客満足の向上、コストダウンの実現、人材の育成など、活動の狙いを書きます。
活動に対する期待事項
幹部が今回の活動に何を期待しているかをヒアリングして書きます。幹部が常日ごろ繰り返し皆さんに話していることでも構いません。幹部の期待事項に応えてこそ、メンバーの評価も上がるというものです。期待事項を目的としてはいけませんが、頭の片隅に置いて、報告会の際は期待事項を意識して発表するといいと思います。
活動名称
プロジェクトの正式名称です。赤ちゃんが生まれたら名前を付けるように、誕生と同時にきちんと名前を付けて、正式に認めてもらいましょう。一般的なプロジェクト名称としては「○○不良半減プロジェクト」「○○製品品質向上プロジェクト」など、名称から活動内容が分かるような付け方が一般的です。
最近は下の例のように、英語の頭文字をつなぎ合わせ、かつ意味のあるようにした名称がはやりです。
日本語交じりや、文法におかしさがあっても、気になるのは最初だけです。むしろ語感や響きのいい方が「かっこいいプロジェクトに参加しているんだぞ!」とメンバーのモチベーションは上がります。
活動対象
工場やライン、工程など対象になる生産設備と対象製品群や具体的な製品名などです。
活動体制
今回のプロジェクトにおける推進責任者(工場長や製造部長などの幹部クラス)、メンバー、支援メンバーを明確にします。プロジェクトの規模が大きい場合は事務局を設け、関係者との調整、会合場所の設置、議事録の作成など便宜を図ってもらいます。プロジェクトの規模が小さい場合は、事務局をリーダー兼務とします。
活動期間
活動期間は、目標の程度やメンバーのマンパワー、技術的な難易度などによります。品質改善は観察設備の導入や工程実験を必要とするので、6〜8カ月が目安です。幹部への報告会を2〜3カ月に1度行うので、報告会の場で延長の是非を決めるような柔軟な運営が必要です。
チーム行動方針
プロジェクトメンバーがこんな活動をしたいという思いです。「できないといわない、できるようにするのが改善活動だ」「本質を徹底追求し、現状を打破しよう」などチーム行動のルールです。
ここまで決めたら「キックオフミーティング」を開催します。幹部や関係者、プロジェクトメンバーを集めて、プロジェクトの正式スタートを宣言し、テーマ、目標値などの活動計画を発表します。
◇
活動体制の優劣がプロジェクトの成功に大きくかかわってきます。しっかりした活動体制を整えてプロジェクトに臨みましょう! 次回は現状実態分析です。
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