T-Kernel+POSIXでLinux資産を有効活用:組み込みイベントレポート
トロンプロジェクトの最新技術が集うTRONSHOW。今回は、次世代リアルタイムシステム技術展で見えた最新動向・注目技術についてお伝えする
POSIX対応の動向
NECソフトは、昨年のTRONSHOW2007のイベントレポート「μT-Kernel登場! その実力と可能性は?」で取り上げた「T-Kernel版 POSIX互換ライブラリ」を参考出展した。昨年との違いについて説明員は「昨年はパーソナルメディアのT-Engine開発キットをベースに開発を進めていたが、このたびオープン版のT-Kernel環境でLinuxミドルウェアを利用できるようにPOSIX互換ライブラリを開発した」と話す。
同製品は、T-Kernel Standard/Extensionをベースとして開発、ライブラリとして実装されている。T-Kernel上でLinuxソフトウェアを利用できるため短期間でPOSIXベースのソフトウェアを開発、T-Engine上での動作確認が行えるという。
また、同社はPOSIX互換ライブラリの動作検証ならびにT-Kernel上のミドルウェアの整備として、Webサーバ、FTPサーバ、TELNET、SMTP/POP、RTPなどLinuxの通信ミドルウェアの移植を行っている。製品化の時期について説明員は「来年度中を目標にしている」と話す。
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また、イーソルも今年のESECのイベントレポート「モデル駆動型開発にSysML対応ツール登場!」で紹介した「eT-Kernel/POSIX」を出展した。同製品は、サブシステムとライブラリとしてeT-Kernelを拡張する形でPOSIX機能を実装しており、1つのシステム内にPOSIXベースのアプリケーションとT-Kernelベースのアプリケーションを共存させることができるというもの。POSIX機能をラッパーライブラリとして実装せず、eT-Kernelのコア内部をチューニングすることでオーバーヘッドを少なくし、リアルタイム性を確保しつつ、POSIX機能を実現している点が特長だ。
また、サポートしているPOSIX APIについては、The Open Base Specifications Issue 6/IEEE Std 1003.1, 2004 EditionのBase Definitions volume(XBD)およびSystem Interfaces volume(XSH)に規定されているほとんどだという。
ちなみに同製品は、同社の統合化されたソフトウェアプラットフォーム「eCROS(イークロス)」の“リアルタイムOS”のラインアップの1つとして提供されている。同製品上に構築するプロセス、スレッド、システムプログラム、共有ライブラリ、DLLのすべてを同社の開発スイート「eBinder」で開発・デバッグできるとのこと。
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PC/AT互換ボードでT-Kernel開発を
パーソナルメディアは、x86プラットフォーム用のリアルタイムOS「PMC T-Kernel/x86」をベースとした組み込みシステム開発パッケージ「T-Kernel/x86 開発キット」を出展した(同製品は2007年11月30日に発売を開始している)。
「PC/AT互換ボードでT-Kernelベースの組み込み開発を行いたい」というユーザーからの要望を受け製品化したもので、PC/AT互換の組み込みボード上で動作するPMC T-Kernel/x86やT-Kernel Extension、グラフィック、TCP/IPなどのミドルウェア、LAN、USB、HDD、LCDなどのドライバ、開発環境(Eclipse for PMC T-Kernel)などが含まれている。
また、同製品は仮想化ソフト「VMware」上で実行することも可能だ。これにより、開発用の評価ボードがなくても、PC1台でPMC T-Kernel/x86上の組み込みソフトウェアの開発やデバッグが行える。もちろん同環境で開発したソフトウェアを再コンパイルすれば、ほかのT-Engine製品に移植可能だ。「T-Kernelの環境をPC上で手軽に実現できるため、T-Kernelの教育や学習などでも活用できる」と説明員は話す。
宇宙関連分野での応用
シマフジ電機は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同開発した「SpaceCube(SEMC5701B)」を展示した。同製品は「SpaceWire」と呼ばれるIEEE1355をベースとした次世代宇宙機用ネットワーク規格を用いた機能検証用のプラットフォーム(SpaceWireを3ch搭載)であり、SpaceWireで構築したシステムのホストコンピュータとしても使用可能なもの。対応OSは、T-KernelとLinuxだ。
CPU | 64bits RISCプロセッサ VR5701(NEC製) 200MHz/250MHz/300MHz |
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フラッシュメモリ | 16Mbytes |
DRAM | DDR SDRAM 64Mbytes |
入出力I/F | SpaceWire×3、RTC、CF、XGA(1024×768)、USB1.1、 LAN(100BASE)、Audio(Stereo)入出力、RS232C、JTAG I/F |
電源 | +5V |
外形寸法 | 52×52×55mm(突起部を除く) |
表1 SpaceCube(SEMC5701B)の仕様 |
また、同社はSpaceWireで構成されたシステム構築を可能にするため、SpaceCubeに接続できる(SpaceWireインターフェイスを搭載した)各種アナログ入出力ボードやデジタル入出力ボードを開発している。
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⇒ | シマフジ電機 |
⇒ | JAXA |
⇒ | Space Cube |
また、NECブースではNEC、NEC東芝スペースシステム、NECソフトの3社による「SpaceWireを活用した遠隔操作システム」の試作を出展した。同システムは、T-Kernel上でSpaceWireプロトコルを利用し、人工衛星での遠隔操作を想定したもの。ちなみに、遠隔で操作する操作機器の振る舞い(これを“シナリオ”という)は「RoboStudio」と呼ばれるロボットソフトウェアプラットフォームのシナリオエディタで作成する。
PCから命令を実行し、それがSpaceWireで接続された制御器と中継器に伝わり、中継器の「シナリオ配信機能」により各操作機器に対して指令を送るというデモを実演した(制御器と中継器にシマフジ電機の「SpaceCube」を、操作機器にNECのパーソナルロボット「PaPeRo」を使用)。
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⇒ | NEC |
⇒ | NEC東芝スペースシステム |
⇒ | RoboStudio |
⇒ | PaPeRo |
本番さながらの模擬試験を実施
2007年12月5日、T-Engineフォーラムとトロン協会が発表した「トロン技術者認定試験」の模擬試験を同展示会の会場内にて実施した(3日間で5回、1回12名の定員)。模擬試験は、2008年度第1四半期に開始予定の本試験と同様にコンピュータ・ベースド・テスト(CBT)で実施、試験結果は受験者本人に送付されるとのこと。
大領域 | 内容 |
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組み込みリアルタイムの基礎 | 組み込みシステムの特徴、リアルタイムシステムの特徴、タスク管理の基礎、タスクスケジューリングの基礎、割り込み処理の基礎、同期通信基礎、記憶管理基礎、時間管理基礎、RTOS基礎、HWアーキテクチャ基礎、SWアーキテクチャ基礎、ほか |
組み込みソフトウェア開発の基礎 | 開発環境基礎、組み込み開発基礎、プログラミング言語基礎、データ構造とアルゴリズム基礎、デバッグ基礎概念、ソフトウェア工学基礎、信頼性基礎、テスト、検証手法、ほか |
TRONアーキテクチャの基本概念 | 「オープン」の概念、ゆるやかな標準化、T-Engine・T-Kernelの意義、サービスコールやエラーコードのネーミングコンベンション、ほか |
ハードウェア分野 | T-Engine・μT-Engine、ほか |
RTOS分野(ITRON、T-Kernel、μT-Kernel) | トロン仕様の概念、タスクモデル、タスク管理機能、同期・通信機能、時間管理機能、メモリプール管理機能、アドレス管理機能、省電力機能、デバイス管理機能、デバッグサポート機能、標準デバイスドライバ、個別デバイスドライバ、ほか |
ミドルウェア(T-Kernel/SE、TCP/IP、ほか) | コンピュータネットワークの基礎概念、ファイルの基礎概念、プロセスの基礎概念、T-Kernel/SE(TK/SE)の概略、TK/SE プロセスモデル、TK/SE 同期通信機能、TK/SE ファイル管理、TK/SE イベント管理、TK/SE 応用、ITRON TCP/IP API仕様、ほか |
マルチプロセッサ | マルチプロセッサ・マルチコア技術の概略、AMP T-Kernel、SMP T-Kernel、ほか |
そのほか | ソフトウェアライセンス、法令、ビジネスモデル、組み込みリアルタイム分野の教育トレーニング、標準化、ほか |
表2 出題領域 |
関連リンク: | |
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