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TRONSHOW2006に見る坂村氏の理想と現実組み込みイベントレポート(1/2 ページ)

まずは坂村氏による基調講演の話題から。そこで語られたユビキタス・コンピューティングとは? だが、展示会場はというと……

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多目的のインフラ作りを

 初日の14日は、坂村健氏による基調講演「ユビキタス始動!」によって開幕した。

 坂村氏はまず、自律移動支援プロジェクトや食品/薬品トレーサビリティプロジェクト、青果物物流実験など、ユビキタス社会実現を目的としたさまざまな実証実験プロジェクトを紹介。その中で同氏は、

  • 1つのシステムで多角展開(複数の目的を実現)すること
  • 1つの目的のために作るシステムはコスト高になること

を強調。ボランティアからビジネスまで、健常者から障害者・老人まで、さまざまな用途に使える共通のインフラを作り出す必要があると主張した。特定の誰かのためではない、誰もが利益を享受できるインフラとすることで、社会コストを分担できる。共通インフラであれば、食品と薬品のシステムを連携させるといったメリットも生まれるという。

 個別の実証実験では成果を上げつつあるユビキタス・コンピューティングだが、坂村氏が目指す真のユビキタスを実現するには、すべてのシステムを貫く横糸が必要になる。そしてそれは、情報世界と現実世界をつなぐものでなければならない。そこで登場するのが、世界のあらゆるモノに付与すべき固体識別番号「ucode」である。ucodeは、同氏が掲げる「uID(Ubiquitous ID)アーキテクチャ」の中核を成す。

 uIDアーキテクチャの一端を簡単に説明すると、

  • 128bitのucode
  • 多様なタグの共存

からなる。128bitとは、「毎日1兆個のモノや場所にucodeを付与することを1兆年続けても足りなくなることはない」(坂村氏)数である。また、コード体系を一本化することは不可能であるとし、EPC Globalが進めているコード体系も含めてあらゆるコードと連携できるようにするという。

東京大学教授 坂村健氏
写真1 東京大学教授 坂村健氏

 さらに、同氏はucodeが「意味コード」ではなく「固体識別番号」であることを強調した。バーコードのように、コード自体に製品名や価格を盛り込む意味コードを、あらゆるモノに付与するのは不可能だ。意味コードは閉じたシステムだから成立するのであり、閉じたシステムだからこそ、意味を自身で保持する必要があったのである。ユビキタス・コンピューティングでは、コードは固体識別さえできればよい。それがどのような名前でどのような属性を持っているかは、ネットワークを介して調べればよい、というわけだ。

 坂村氏の活動は技術面にとどまらない。ucodeからあるモノに関するあらゆる情報を引き出せるようになったとしたら、便利ではあるが手放しで喜んでばかりもいられない。ここで、セキュリティやプライバシの問題が発生する。同氏は、そのための法令整備が必要であるとあらためて訴え、「制度設計が重要」であると語った。

 ユビキタス・コンピューティングは本当に実現するのか? いまどの程度進ちょくしているのか? 坂村氏は、ユビキタス・コンピューティングの実現には10〜15年はかかるという見通しを示し、「インターネットに例えると1992年ごろに相当する」とした。

 ユビキタス・コンピューティングが現在の黎明期を終えて普及期に移行するのは、2、3年後といったところだろうか?


T-Kernelロードマップ発表

 T-Engineフォーラムの重要なプロジェクトの1つである、リアルタイムOS「T-Kernel」の現状とロードマップも示された。

 2004年1月のソースコード公開から約2年。T-Kernelはカーナビなどへの実装も始まり、T-Kernelを拡張したeT-Kernel(イーソル)やPMC T-Kernel(パーソナルメディア)といった商用製品も登場するなど、着実に実用化が進んでいる。

 T-EngineフォーラムにおけるT-Kernelの開発、評価も継続しており、T-Kernel/Standard Extensionがもうすぐ公開される予定だ。2006年には、マルチプロセッサ対応や16bit対応T-Kernel「μT-Kernel」が登場する。これらが実現すれば、スケーラビリティが一気に強化されるだろう。

T-Kernelのロードマップ
図1 T-Kernelのロードマップ

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