SynopsysとAnsysの技術統合が切り開く、AI時代の新たな設計/解析プロセス:Ansys Simulation World 2026 Japan(4/4 ページ)
アンシス・ジャパンは、年次イベント「Ansys Simulation World 2026 Japan」を開催した。基調講演と特別セッションでは、SynopsysとAnsysの技術統合によって進む半導体からシステム全体までを対象とした設計/解析環境の進化や、AIと物理シミュレーションを組み合わせたエンジニアリングの将来像を紹介。さらに、AIエージェントによる解析業務の効率化、デジタルツインやフィジカルAIへの取り組みなども披露された。
AIを活用したシミュレーションで設計案の検討を加速
こうしたAI技術の進化が、設計開発プロセスそのものを変えていくという。一般的な製品開発は、要求仕様の策定からCADによる設計、シミュレーションによる検証、製造、試験へと進む――。今後は、AIを活用したシミュレーションによって、設計者がさまざまな条件を変更しながら、より多くの設計案を検討できるようになる。
「エンジニアは『この条件を変えたらどうなるか』といった問いを繰り返しながら、最適な設計を見つけたいと考えている。そこで大きな力を発揮するのが、物理法則に基づくソルバーと組み合わせたAIシミュレーションだ」とパイテル氏は述べる。設計と検証の反復をデジタル空間上で高速化することで、開発期間の短縮や製品の市場投入の迅速化につなげる考えだ。
続いて、基調講演で紹介されたKronesの事例に再び触れ、飲料の充填工程と包装工程における課題について補足した。充填工程では、液体をボトルの上部まで入れながら、外部への飛散を防ぐ必要がある。液体が飛散すれば飲料の無駄が発生するだけでなく、充填機の停止につながる可能性もある。また、包装工程では、コンベヤー上でボトルを正しくまとめられず、人手による調整が必要になれば、ラインの停止によって時間とコストが増加する。
こうした製造設備の運用に関する課題も、AIとシミュレーションを組み合わせた技術の活用対象となる。その適用分野は製造設備に限らず、データセンター、半導体、自動車、航空宇宙、建設、ヘルスケア、ロボティクスなどにも広がっており、NVIDIA Omniverseのライブラリを活用したデジタルツインの展開も進めているという。
ヒューマノイドロボットの開発にもシミュレーションを活用
特別セッションの終盤、パイテル氏はフィジカルAIの新たな活用分野としてヒューマノイドロボットを取り上げた。産業用ロボットは従来、自動車工場などで広く活用されてきたが、その用途は倉庫や物流などへと拡大しつつある。さらに、AI技術の進化によって、人間のような身体を備えたヒューマノイドロボットの実用化に向けた動きも進んでいる。
具体例として、Schaefflerによるヒューマノイドロボットの開発や活用に向けた取り組みが披露された。同社の担当者はインタビュー映像の中で、ヒューマノイドロボットを人間の労働を補完する存在と位置付け、箱を持ち上げてコンベヤーに載せる作業などへの活用を進めていると説明。将来的には、熱処理炉の周辺などの高温環境での作業や、有害な化学物質を取り扱う工程など、人間にとって負担や危険が大きい作業への適用も期待しているという。また、特定の設備での作業だけでなく、複数の設備を対象に部品の投入や取り出しなどを行う、汎用(はんよう)的なヒューマノイドロボットの実現も目指している。
こうした開発を支える技術の1つがシミュレーションだ。ロボットを実際の工場に導入する前に、仮想環境で動作を学習させることで、導入後に必要な追加学習や調整を減らせるという。さらに、ロボットの構造設計にもAnsysの解析技術を活用している。Schaefflerでは、アクチュエーターなどの部品に対して有限要素解析(FEA)を実施し、構造の軽量化と最適化に取り組む。アクチュエーターなどを軽量化できれば、搭載するバッテリーの小型化にもつながる。バッテリーが小型化すればロボット全体をさらに軽量化できるため、設計上の好循環が生まれるという。パイテル氏は、こうした事例を通じて、フィジカルAIが今後さまざまな産業や用途へ広がっていく可能性を示した。
最後にパイテル氏は、Synopsysが創立40周年を迎え、Ansysが50年以上の歴史を持つことに触れ、「現在、私たちができることや新たに生み出せるものは、30年前には想像もできなかったようなことばかりだ」と述べ、特別セッションを締めくくった。
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