データをつなぎ、AI活用へ――オートデスクが示す設計/製造DXの未来像:Design & Make Summit Japan 2026レポート(1/3 ページ)
オートデスクは「Design & Make Summit Japan 2026」を東京都内で開催した。本稿では、米Autodeskのビック・ベダンサム氏による基調講演から、AI時代の製造業に求められるデータ基盤と設計/製造の変革について紹介する。
オートデスクは2026年7月22日、製造業やAECO(建築/エンジニアリング/建設/運用)業界のビジネスリーダーなどを対象としたイベント「Design & Make Summit Japan 2026」を東京都内で開催した。
本稿では、設計/製造業界向け基調講演に登壇した米Autodesk D&Mインダストリー戦略担当シニアディレクターのビック・ベダンサム氏の講演内容をダイジェストで紹介する。
製造業を取り巻く環境変化、設計と製造の変革が不可欠に
ベダンサム氏はまず、製造業を取り巻く経営環境が、これまで以上に複雑さを増していると説明した。世界経済の不透明感やサプライチェーンの分断、人手不足、地政学的な緊張が企業活動に大きな影響を与える一方で、AI(人工知能)をはじめとするテクノロジーは急速に進化しているという。
従来、製造業は品質、コスト、スピード(納期)のバランスを追求してきた。しかし現在は、それらに加えて、リショアリング(生産拠点の国内回帰)や人材確保、スループット、在庫管理、サステナビリティといった課題への対応も求められている。
ベダンサム氏は「こうした環境で成功するためには、製品の設計と製造の在り方を変革しなければならない」と述べ、データとテクノロジーを活用した製品開発への転換が不可欠だと強調した。
さらに、人材基盤の強化や技術の近代化、コストの最適化を進めることで、継続的なイノベーションに取り組むための余力を生み出す必要があるとの考えを示した。
製品開発を「構想」「設計」「製造」「生産」の4段階で捉える
続いてベダンサム氏は、オートデスクが製品開発のライフサイクルを「構想」「設計」「製造」「生産」の4つのステージで捉えていると説明した。
最初の「構想」では、実物を製作する前にアイデアをデジタル上でモデル化し、可視化や検証を行う。この段階では、クラスAサーフェシングに対応する「Autodesk Alias」、設計初期にリアルタイムの物理シミュレーションを取り入れる「Autodesk NavPack」、没入感の高いビジュアライゼーションを実現する「Autodesk VRED」などを活用し、早期の意思決定を支援する。
次の「設計」では、コンセプトを、機能や製造性、コストを考慮した具体的な設計へと落とし込む。3D機械設計ソフトウェア「Autodesk Inventor」とデータ管理システム「Autodesk Vault」に加え、Inventorに搭載した「Autodesk Assistant」により、パラメーター情報の取得などを自動化するという。
「製造」の段階では、設計意図を滞りなく実際の製品へ反映する必要がある。ベダンサム氏は、加工機の稼働率向上や熟練人材の不足が課題となる中、CAM機能を備えるクラウドベースの製品開発プラットフォーム「Autodesk Fusion」が重要な役割を担うと説明した。
Fusionは、多軸加工やアダプティブクリアリング(負荷制御)、バリ取り、工作機械の動作検証などを単一環境で提供する。同氏は、調査会社CIMdataのデータを基に、「オートデスクが世界のCAM市場で14.4%のシェアを獲得し、トップに位置する」とアピールした。
最後の「生産」では、工場全体の効率化がテーマとなる。「Autodesk Factory Design Utilities」や「Autodesk FlexSim」「Autodesk Tandem」「Autodesk Fusion Operations」を活用し、工場レイアウトや生産計画、設備管理などのプロセスをつなぐ。講演では、国内企業のヤマト科学が建築データと製造データを統合し、業務の迅速化を図った事例も紹介された。
分断されたデータと手作業が生産性を奪う
しかしながら、多くの製造現場では、依然としてプロセスやデータが分断され、手作業に依存した業務が数多く残っている。
ベダンサム氏によると、機械加工の担当者は部品加工用プログラムの作成に週8時間以上を費やし、設計者は図面作成だけで週21時間を使っているという。さらに、エンジニアの48%が標準部品の検索に毎日1時間を費やし、81%の企業が既存の部品データを手作業で再作成している。重複した部品データを保有する企業も72%に上るとのことだ。
同氏は「設計者やエンジニアが複雑な問題を解決し、迅速にイノベーションを起こすために使えるはずの貴重な時間が、反復的で付加価値を生まない作業によって失われている」と指摘した。
このような非効率を解消するには、個々のツールを導入するだけでなく、製品開発に関わるデータとプロセス全体をつなぐ“基盤”が必要になるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.





