AIカメラで「最後の砦は人」を脱却、レンゴーとキリンビールの工場安全DX:ファクトリーイノベーション Week2026【秋】(1/3 ページ)
「ファクトリーイノベーションWeeK2026秋」において、特別講演「【工場の安全対策】AI/デジタルICTで従業員の安全を守るには」が行われ、レンゴーとキリンビールが登壇した。AIやIoT、ウェアラブル機器などを活用した安全対策に関する両社の講演を抜粋して紹介する。
この記事の見どころ
- レンゴーとキリンビールがAIやIoTなどを駆使した工場の安全対策を説明
- レンゴーはAIカメラを使って人に依存せずに危険から遠ざけるアプローチ
- キリンビールはIoTで点検も効率化、将来のオペレーション無人化も描く
「ファクトリーイノベーションWeeK 2026秋」(2026年9月9〜11日、幕張メッセ)において、特別講演「【工場の安全対策】AI/デジタルICTで従業員の安全を守るには」が行われ、レンゴー パッケージング部門 技術開発本部 技術開発第一部 技術開発課長の藤岡寛史氏と、キリンビール 生産本部技術部 主査の宮浦直人氏が登壇した。
藤岡氏はAI(人工知能)カメラと生産設備を連動させた安全対策を紹介。宮浦氏はAIやIoT(モノのインターネット)、ロボット、ウェアラブル機器などを活用したプラントオペレーションの変革について講演した。両者の講演を抜粋して紹介する。
「最後の砦が人」になっている安全対策
製造現場で安全対策を徹底しても、最後に残るのは「人」に起因するリスクだ。作業ルールを整備し、安全装置を導入しても、人が判断し、操作する以上、ミスを完全になくすことは難しい。では、AIやデジタル技術によって、そのリスクをどこまで減らせるのか。
「21世紀に入ってから、休業4日以上の労働災害の発生件数は減っているのかどうか」
レンゴーの藤岡氏は「AIカメラ×設備連動で実現する人に依存しない安全対策」と題した講演の冒頭、来場者にこう問い掛けた。
20世紀後半にかけて労災の発生件数が減少してきた一方、21世紀に入ってからはその傾向が下げ止まっている。その背景について藤岡氏は、20世紀に「安全機器の高性能化」「フェイルセーフ、フールプルーフなど安全設計の進化」「作業ルールや安全意識の改善」が進んだことを挙げる。一方で、こうした従来型の安全対策だけでは限界も見え始めていると指摘した。
例えば、安全柵内で産業用ロボットのトラブル処理をする場合、非常停止ボタンを押したり、主電源を遮断したり、命札を掲示したりなどの手順が定められている。しかし、これらを実行するのは全て人だ。
「どれだけ機器が進化しても、最終的には最後の砦が人になってしまっている。ここが今の安全対策の限界なのではないか」(藤岡氏)
そこでレンゴーが着目したのがAIカメラだった。一般的なライトカーテンやレーザースキャナーは物体の有無を検知できても、それが人なのか、ワークなのか、設備なのかを判断することは難しい。AIカメラであれば、カメラの画角内に「人がいるか」を識別できる。ただし、安全用途となれば認識精度への要求は厳しくなる。
「100回人が入って99回検知できたとして、1回見つけられないAIを安全用途に使ってよいのか。社内でもそういう議論があった」(藤岡氏)
レンゴーがたどり着いたのは、AIカメラを既存の安全機器と置き換えるのではなく、従来は検知できなかった領域を補うものとして位置付ける考え方だった。非常停止スイッチやレーザースキャナーなど従来の安全機器と組み合わせ、「足し算」で安全性を高めていく手法だ。
AIカメラの性能に不満、JR西日本との取り組みへ
レンゴーは2024年3月からAIカメラを安全対策として現場に導入した。ただ、当初使用していたAIカメラでは、コンベヤーの一部を人と認識するなどの誤検知が発生した。
「学習しているデータがきれいすぎたためなのか、AIモデルがFAの現場をあまりにも知らなすぎた」(藤岡氏)
AIカメラを他工場にも展開するには性能面に不満が残った。一方、現場からはAIカメラを活用したいという声が相次いだ。そこで新たに採用したのが、西日本旅客鉄道(JR西日本)が開発するAIカメラ関連技術だった。
JR西日本は駅や車両などで数千台のカメラを運用しており、かつては外部のAIカメラを購入していたが、機能や性能への不満から自ら開発し、現在は外販も行っているという。藤岡氏が評価するのは、単なるAIカメラベンダーではなく、JR西日本自身が「大口ユーザー」であることだ。
「AIカメラの提供元でありながら、彼ら自身がかなりの大口のユーザーでもある。そのため、非常に開発スピードも速い」(藤岡氏)
レンゴー側から製造現場で必要となる機能や性能をフィードバックすることで、JR西日本は製造業向けの製品を改善し、レンゴー側もより使いやすいシステムを得るという関係を築いている。さらに、再学習に使用する画像データを、JR西日本が個人情報などを扱うために備えているセキュリティ面に配慮した環境で処理できることも評価している。
「こういったAIカメラの再学習用のデータも、その枠組みの中で処理してもらえる。他のAIカメラメーカーとは違うところだと思っている」(藤岡氏)
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