自動車のソフト開発期間を3〜4割短縮する、Astemo子会社の新たな挑戦:SDVフロントライン(3/3 ページ)
自動車産業でSDVを推進するキーパーソンのインタビューを掲載していく本連載。第6回は、国内大手ティア1サプライヤーであるAstemoが設立した、ソフトウェアとクラウドサービス事業を行う新会社であるAstemo Cypremosの代表取締役社長の上桶亨氏に話を聞いた。
「開発期間をどこまで短縮できるかが生死を分ける状況にある」
MONOist 国内の自動車業界において開発期間の短縮は長らく課題に挙げられてきましたが、なかなか実現できなかったのが実情かと思います。今後実際に、開発期間の短縮は可能なのでしょうか。
上桶氏 国内自動車業界が強い危機感を持っているのは確かだ。直近では「19カ月」というキーワードも出ており、そこに近づけるためにAstemoもCypremosも貢献していきたい考えだ。
これまでの国内における自動車開発プロセスの課題は、手戻りの多さにあったのではないか。自動車メーカーがサプライヤー各社に個別に仕様書を出して開発をしてもらうが、開発が終わって組み合わせて見るとすり合わせができておらず、そこで手戻りが発生する。これを解決するには、自動車メーカー側からより多くの情報を提供してもらう必要がある。また、自動車メーカーとサプライヤーが一緒になって開発する大部屋開発を進めようということも模索されている。
CypremosのCESを活用することによるソフトウェア開発期間の30〜40%の短縮と、これらの手戻り削減の取り組みが組み合わされば、開発期間を半年〜1年の単位で削減できる可能性は十分にある。
MONOist ただし、日本と中国では自動車開発の方法論が異なる点もあります。
上桶氏 国内自動車メーカーは開発期間の短縮を進める一方で「絶対に品質に妥協したくない」とも言っている。量産1台目から完璧なものを出したいというのが国内自動車メーカーの考え方であり、「走りながら考える」ことが当たり前の中国の自動車メーカーと比べて半年くらいの開発期間での差が出てしまう。そして、中国市場はそれで十分に受け入れられている。
また、中国の自動車メーカーはEV(電気自動車)が中心なのに対し、国内自動車メーカーは内燃機関車もHEV(ハイブリッド車)も展開するマルチパスウェイの戦略を取っている。マルチパスウェイそのものは正解だと考えているが、開発期間は増える方向にならざるを得ない。
何にしろ、国内の自動車メーカーにとって開発期間をどこまで短縮できるかが生死を分ける状況にあると言っても過言ではない。そして、この状況を打破する鍵はソフトウェアにある。自動車の価値に占めるソフトウェアの割合が年々増えてく中で、Cypremosが貢献できる余地は非常に大きいと考えている。
MONOist Cypremosの2つの事業のうち主力はどちらになるのでしょうか。
上桶氏 クラウドSIer事業については、自動車業界においてこれからデジタルツインなどを活用するためのクラウド導入が進んでいくことになるかと思うので、その需要に対応する人材やリソースを用意してしっかり要求に応えていけるようにする。
ただし、Cypremosの成否は、自身の製品であるCESをどこまで広く販売できるかに掛かっている。基本的に自動車メーカーが顧客になるクラウドSIer事業と異なり、自動車の開発プロセスに対応してサービスを分割して提供できるCESは、自動車メーカーだけでなく、Astemoの競合であるティア1サプライヤーにも使ってもらえると考えている。
まずは国内自動車業界に向けて展開していくが、将来的にはAstemoのインドオフィスやパートナーなどを活用した海外展開も広げていきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「SDVフロントライン」バックナンバー
AIで車載ソフトの開発期間を大幅短縮、AstemoのSDV子会社がデモを披露
Astemoは、「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」において、完全子会社のAstemo Cypremosが手掛けるSDVエンジニアリングソリューション「Cypremos SDV Engineering Suite」のデモを披露した。
Astemoと日立が運転支援AI開発基盤構築の狙いを説明、「SDVのさらなる強化へ」
Astemoと日立製作所は、自動運転車両に搭載されるAIである「運転支援AI」の学習/検証/展開のプロセスを革新する新たなAI開発基盤を構築する。日立のフィジカルAIをテーマとするイベント「Hitachi Physical AI Day」内の講演で、Astemoと日立の担当者が同基盤を構築する狙いについて説明した。
AstemoはSDV戦略加速を宣言、新型「レアアースフリーモーター」を初出展
Astemoはジャパンモビリティショー2025で、EV向けに資源リスクを低減する新型のレアアースフリーモーターを初公開した。SDV時代に向け電動化と知能化を両立する「システムプロバイダー」への変革を宣言する。
ホンダがAstemoを連結子会社に、日立から約1500億円で株式を追加取得
ホンダは、持ち分法適用会社であるAstemoの株式を日立製作所から21%分追加取得し、連結子会社とすることを決定したと発表した。日立製作所は株式の譲渡価格を1523億円と公表している。
サプライヤー4社を統合した日立Astemoが始動、2025年に売上2兆円目指す
日立Astemo(アステモ)は2021年1月18日、事業戦略説明会をオンラインで開催した。同社は日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して2021年1月1日付で発足した新会社だ。出資比率は日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%となる。上場については「可能性はあるかもしれないが現時点では検討していない」(日立Astemo CEOのブリス・コッホ氏)という。
