社員の“挑戦を阻む壁”を壊せ パナソニックグループが仕掛ける「UNLOCK」改革:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
パナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏は就任以来、継続して「組織カルチャーの変革」を訴えてきた。では、パナソニックグループでは現在、具体的にどのような変革に取り組んでいるのだろうか。組織カルチャー変革を担当するパナソニックHD グループCHROの木下達夫氏が、一部報道陣の合同取材に答えた。
パナソニックグループの各事業部門で実際に生まれた変化
これらの取り組みにより、UNLOCK指標が大きく改善した事業部門の1つが、パナソニック IHクッキングヒーターSBUだ。IHクッキングヒーターSBUでは、組織カルチャー変革のために、変革を推進する専任の部長付“右腕ポジション”を設置し、迅速な意思決定のためにミニ経営会議を毎日開催し、変革を進めていったという。特徴的だったのが「課長ポスト総選抜」だ。これは、課長ポストの公募を行い、現職や経験の有無にかかわらず立候補できるというものだ。これにより、課長ポストの2割が入れ替わり、風通しの良い自律型組織づくりに貢献したという。
こうした取り組みにより、UNLOCK指標は1年で7ポイント改善し40%となった。さらに、サブ指標である「組織を越えて協力」「キャリア目標を達成」「成果を出す体制」なども大きく改善している。木下氏は「2割の入れ替わりというとネガティブな面もあるように見えるが、実際はマネジメント業務がやりたくない人が仕方なくやっていたところもあり、逆に実務で生き生きと働いている例もある」と述べる。
また、パナソニック コネクト アビオニクスBUでは、経営者の活動の日常的な発信や対話、手挙げによる育成プログラムの充実、業務と行動の目標設定ガイドなどを整備することで、組織カルチャー変革を推進した。育成プログラムには、米国やシンガポールに数カ月滞在し、事業課題に直結するテーマをプロジェクトリーダーとして推進するものなども用意した。これにより、UNLOCK指標自体は1ポイントの改善で32%にとどまったが、サブ指標である「組織を越えて協力」「チャレンジを達成」「成果を出す体制」などは10ポイント以上の改善につながっている。
さらに、パナソニック エレクトリックワークス 電材&くらしエネルギー事業部 電設資材BU 住宅システム事業では、TOC(制約条件理論)の考え方を活用した組織カルチャー変革を推進したという。TOCは組織活動プロセスの中でボトルネックを見つけ、解消することで全体最適を図るという考え方で、工程改善などに活用されている。
エンゲージメントサーベイの結果を、モノづくりのエンジニアリングチェーンとサプライチェーンの工程に落とし込み、モチベーションが低いプロセスを洗い出した。そしてTOCの考え方でボトルネックを解消し、プロセス全体のモチベーション向上につなげたという。これらの取り組みにより、事業として3年間で売上高30%成長、調整後営業利益を10ポイント改善させつつ、UNLOCK指標も11ポイント改善し37%とした。パナソニック エレクトリックワークス 電材&くらしエネルギー事業部 配線システムコミュニケーションBU BU長の福尾尚紀氏は「(UNLOCK指標の)絶対値は大きくはないが、火が付いたところを高めていく」と語っている。
社内公募やAI活用でも組織の壁を打破
その他にも、組織全体として手挙げの活発化を推進。社内版ビズリーチとして、社内のマッチングによる転籍制度なども用意した。こちらは1910人が登録し、2026年6月時点で2人のマッチング成立があったという。さらに、AI活用の推進による組織の壁の打破や、大部屋活動などにも取り組んでいる。
UNLOCK指標が高まったからといって現状ではすぐに事業収益が高まっているわけではない。木下氏は「組織カルチャーの変化は、すぐに業績につながるものではない。しかし、先行指標になると見ている。こちらが先に上がって組織が活性化することで、業績成果は半年後、1年後、あるいは2年後についてくる」と考えを述べている。
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