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インタビュー

約10年ぶりに改定される「ISO 9001」で何が変わるのか JQAが語る規格改定の要点製造マネジメント インタビュー(1/3 ページ)

業界/業種を問わず世界中の企業や組織で利用されている、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO 9001」が、2026年9月に約10年ぶりの規格改定を予定している。これに伴い改定の要点やどのような変化が発生するのかについて、ISO 9001のFDIS情報を基に一般財団法人日本品質保証機構(JQA)の審査員に話を聞いた。

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 品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格である「ISO 9001」は品質保証の考え方から発展し、「組織経営に活用するマネジメントシステム」に進化してきた。顧客満足の向上や業務プロセスの継続的な改善を目標とし、業界/業種を問わず世界中の企業や組織で利用されている。2015年に現行規格である「ISO 9001:2015」に改定されて以降、現在まで世界中の企業や組織で活用されてきたが、2026年9月に約10年ぶりとなる規格改定を予定している。

 そこで、ISO 9001の審査機関の1つである日本品質保証機構(JQA) マネジメントシステム部門 審査事業センター センター長 兼 品質審査部 部長の大久保友順氏にISO 9001の改定の歴史や今回の改定における要点などについて話を聞いた。なお、本稿はISO 9001のFDIS(Final Draft International Standard、最終国際規格案)情報に基づいている。

JQA マネジメントシステム部門 審査事業センター センター長 兼 品質審査部 部長の大久保友順氏
JQA マネジメントシステム部門 審査事業センター センター長 兼 品質審査部 部長の大久保友順氏

ISO 9001は品質管理だけではなく、会社経営にも役立つ

 ISO 9001には大きく分けて「品質の安定化」「顧客満足の向上」「継続的改善の推進」「リスク管理」「経営管理のツール」「社会的信頼の向上」の6つの役割が存在する。

 品質の安定化の側面では、担当者の経験や勘に頼ることなく、業務手順を標準化することで、誰が担当しても品質を担保/維持できるようにする狙いがある。顧客満足の向上の側面では、顧客要求を明確にしてそれを満たすサービスを提供することで、顧客満足の向上に役立てることができる。

 継続的改善の推進の側面では、クレームや発生した不良品、監査結果などから課題を見つけ、再発防止や改善活動を継続的に実施する仕組みを構築可能だ。リスク管理の側面では問題が発生する前にリスクや機会を把握して対策を講じることができる。

 経営管理のツールの側面では、単なる品質管理規格としてではなく、企業や組織が目指す目標管理やプロセス管理、人材育成、業績評価などを通じて組織運営を支えるツールとしても活用可能だ。また、社会的信頼の向上の側面では、第三者認証を取得することで「国際規格に基づいて品質を管理している」ことを取引先や顧客にアピールできる。


ISO 9001の役割[クリックで拡大] 出所:JQA

 大久保氏は「ISO 9001は会社の仕事のやり方を整え、顧客に安心してもらえる品質を安定して提供する仕組みである。仕事のやり方を標準化して顧客の信頼を高める製品やサービスを提供する役割、作業ミスを減らして業務改善や組織改革を進める役割、監視測定による経営の意思決定を可視化する役割を担っている」と語る。

 続けて、大久保氏は「2008年版の規格までは、どちらかというと捉え手によっては“製造業中心”の規格に見えていた。しかし、2015年版の規格からはどの産業でもISO 9001を利用できるという『ユーザーフレンドリー』という考え方が入っている。そのため、製造業以外のサービス業や物流業、事務部門などでも共通して活用できる規格となっている」と強調する。

ISO 9001のルーツは軍事規格 規格改定の歴史

 ISO 9001の起源は1950年代までさかのぼる。大久保氏は「第二次世界大戦時に米国や英国の軍事産業で厳格な品質基準が整備された。代表的な事例としては、B-29爆撃機が挙げられる。B-29の組み立てにあたり、さまざまな部品をはんだ付けで配線していたが、これだと大きな手間がかかってしまう。そのため、共通の規格を用意してモジュール単位で電気部品を製作してこれを組み合わせることになった。これがきっかけとなり、作業をスムーズに実行できるようにするための共通規格の基礎となった軍事規格『MIL規格』が生まれたという歴史がある」と語る。

 MIL規格はアメリカの規格であるが、このように軍需品質管理がきっかけとなり、さまざまな国で品質を作りこむための規格化が進んだ。1979年には英国で品質保証規格「BS 5750」が制定され、同規格をベースとして1987年に国際規格としてISO 9001が発行された。

 ISO 9001の初版規格となる「ISO 9001:1987」は、文書化された手順や検査、管理を優先する“品質管理”と“品質保証”の考え方が中心であり、製造業向けの色合いが強い規格として運用された。その後、初の規格改定が行われた「ISO 9001:1994」では、予防処置(Preventive Action)の概念が取り入れられ、不適合品を未然に防ぐ意味合いを含めた規格に変化した。「1994年頃から日本の企業がISOを取得し始めた。JQAのISO 9001の審査は1989年から始まっているため、日本の審査機関として比較的早い」(大久保氏)。

 2000年には2回目の改定となる「ISO 9001:2000」で大幅な規格改定が実施され、PDCAサイクルといった「プロセスアプローチ」の考え方が規格に盛り込まれた。また、製造に関する要求事項を定めた「ISO 9002」と設計に関する要求事項を定めた「ISO 9003」がISO 9001に統一されることとなり、多くの企業が「品質保証規格」から「経営管理規格」へと認識を改める転換点となった。

 大久保氏は「2000年頃からPDCAという言葉が定着するようになったが、この背景にはプロセスアプローチが関わっている。そして、顧客満足を向上させる活動が品質を担保するという考えの下、経営ツールとして活用が始まったのも2000年頃である。この時期からISO 9001を取得する企業が多くなった」と強調する。


ISO 9001の歴史(1987〜2000年)[クリックで拡大] 出所:JQA

 2000年の規格改定から8年後には「ISO 9001:2008」が発行されたが、2000年の改定からは大きな変化がなく、解釈の明確化や他規格との整合性向上を実施した内容となった。そのため、ISO 9001:2000の改定版という位置付けの規格であった。

 その後、2015年に現行版の規格となるISO 9001:2015に改定された。同規格では新たに“リスクベース思考”が導入され大幅な変更となった。組織の状況や利害関係者といった考え方も追加され、トップマネジメントの関与を強化する内容となった。また、環境マネジメントシステムの国際規格である「ISO 14001」といった他のISO規格と合わせて認証取得する企業が増えたことにより、ISOの要求事項構造の共通要素となる「HLS(ハイレベルストラクチャー)」が採用されるようになった。


ISO 9001の歴史(2008〜2026年)[クリックで拡大] 出所:JQA

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