破過曲線を用いた吸着塔の設計計算:はじめての化学工学(21)(2/2 ページ)
前回は、吸着の種類や基本的な操作方法について解説しました。今回は、破過曲線と未使用層長さを用いて、実験データから実機の破過時間を見積もる方法について解説します。
吸着量バランスと未使用層長さ
破過曲線から求めた理想破過時間(t*)を用いると、物質収支式が立てられます。左辺は塔の単位断面積当たりに吸着された量、右辺は吸着層全体の保持量です。破過曲線からt*を求めれば平衡吸着量(Wsat)を逆算でき、Wsatが既知なら塔長Lからt*を予測できます。処理量に応じた塔径は、流量と空塔速度から別途求めます。
図4. 吸着量バランスの式、u0:空塔速度[m/h]、c0:入口濃度[kg/m3]、t*:理想破過時間[h]、L:吸着層の長さ[m]、ρb:吸着層の嵩密度(かさみつど)[kg/m3]、Wsat:平衡吸着量[kg-吸着質/kg-吸着剤]、W0:通液前の吸着量[kg-吸着質/kg-吸着剤]
破過時間tbで運転を終えると、出口側には吸着能力を残した領域があります。この使い切れなかった層の長さを未使用層長さ(LUB:Length of Unused Bed)と呼びます。破過前の出口濃度を0として無視できる場合、LUBは次の式で近似できます。
物質移動帯がほぼ一定の形を保って移動する範囲では、吸着剤の種類と粒径、入口濃度、温度、空塔速度などの条件をそろえると、LUBは層長によらずほぼ一定とみなせます。この性質を利用し、実験カラムで求めたLUBから実機の破過時間を予測する方法を「LUB法」と呼びます。
実験データからスケールアップ後の破過時間を予測
有機物を0.10kg/m3含む排水を活性炭で処理する場合を考えます。実験条件は、層長(L)=0.20m、空塔速度(u0)=10m/h、活性炭の嵩密度ρb=450kg/m3、通液前の吸着量(W0)=0とします。測定した破過曲線はほぼ左右対称で、c/c0=0.05となる破過時間tbは12時間、c/c0=0.5となる理想破過時間(t*)は18時間でした。この結果から、層長1.0mのサイズに対して予測します。
まず平衡吸着量を求めます。Wsat=u0c0t*/(Lρb)=(10×0.10×18)/(0.20×450)=0.20kg-吸着質/kg-吸着剤です。次にLUBを求めます。LUB≒L(1−tb/t*)=0.20×(1−12/18)=0.067mです。最後にスケールアップ後の破過時間を推算します。層長1.0mの理想破過時間は、t*=LρbWsat/(u0c0)=(1.0×450×0.20)/(10×0.10)=90時間です。LUBを0.067mとすると、tb≒t*(1−LUB/L)=90×(1−0.067/1.0)≒84時間となります。
吸着層の長さを0.20mから1.0mへ5倍にしています。破過時間も層長に単純比例すると考えれば、実験時の12時間を5倍した60時間になるはずです。しかし、LUBを一定として計算すると、実機の破過時間は約84時間となります。これは、実験カラムでは0.20mの層長に対してLUBが0.067mあり、吸着層全体の約34%が破過時に未使用となるのに対し、層長1.0mの実機ではLUBの割合が約6.7%まで小さくなるためです。層長を長くするほど未使用部分の吸着層全体に占める割合が小さくなり、吸着剤をより有効に利用できます。従って、LUBが一定と仮定した場合、この実機における吸着剤の交換または再生周期の目安は約84時間です。
終わりに
今回は、破過曲線の読み方と、吸着量バランスおよびLUBを用いた吸着塔の設計計算について解説しました。LUB法を用いると、実験カラムのデータから実機の破過時間を見積もれます。次回は、溶液から結晶を取り出す晶析について解説します。
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![図5. 未使用層長さ(LUB)の近似式、LUB:未使用層長さ[m]、L:吸着層の長さ[m]、t<sub>b</sub>:破過時間[h]、t<sup>*</sup>:理想破過時間[h]](https://image.itmedia.co.jp/mn/articles/2608/25/kn20260820chemufac5.jpg)
