AIと量子化学計算の連携で色純度の高い青色発光材料を開発:研究開発の最前線
名古屋大学は、AIと量子化学計算を連携させ、ホウ素を含まない青色発光材料を探索するデータ駆動型手法を開発した。次世代有機ELディスプレイに必要な色純度の高い青色発光と高い発光効率を両立した、安価で合成しやすい材料の開発に成功した。
名古屋大学は2026年7月22日、AI(人工知能)と量子化学計算を連携させ、ホウ素を含まない青色発光材料を探索するデータ駆動型手法を開発したと発表した。次世代有機ELディスプレイに求められる色純度の高い青色発光と高い発光効率を両立した、安価で合成しやすい材料の開発に成功した。九州大学との共同研究による成果だ。
研究では、まず五員環と六員環が計13個連結した多環芳香族骨格を生成し、約2万種のカルバゾール含有多環芳香族分子(Cz-PAH)から成る分子ライブラリを構築した。この中から無作為に1000分子を選び、発光エネルギーと熱活性化遅延蛍光(TADF)に関係するエネルギー差を量子化学計算で求めた。計算が完了した944分子のデータから、グラフニューラルネットワーク(GNN)を用いたML(機械学習)モデルを構築した。
テスト用データに対する決定係数R2は、発光エネルギーで0.80、エネルギー差で0.76となった。残りの分子から三次元構造を準備できた1万7433分子に同モデルを適用して評価したところ、TADFに有利な小さなエネルギー差を持つ候補が青色側に多く分布しており、材料選定の指針が得られた。
膨大な候補群から有望な分子を高速に見出す手法を確立したことで、残りの全候補の発光特性を高速かつ高精度に予測することに成功。青色発光が期待され、かつエネルギー差が小さい上位50分子を抽出し、より詳細な計算からCz-PAH-1とCz-PAH-2を選定した。
2つの候補分子を合成して発光特性を調査した結果、半値幅17〜19nmの波長幅の狭い青色発光を示した。薄膜状態での発光効率は93〜99%に達し、どちらも優れたTADF材料として機能することを実証した。これらを用いた有機EL素子は、次世代の超高精細映像規格「Rec. 2020」の青色原色に近い高純度な青色発光と、最大35.2%という高い外部量子効率を達成した。
AIによる分子設計から有機EL素子の作製、評価までの一連のプロセスにより、次世代ディスプレイの低コスト化と省資源化につながる。また、候補数が膨大な有機機能材料の開発を加速する基盤技術となることが期待される。
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