製造業AI活用の鍵は「基盤整備」にあり、自律化工場に向けた4つのステップ:スマートファクトリー
ロックウェル オートメーション ジャパンは東京都内で記者説明会を開き、生産現場でAI(人工知能)を実用化するための技術および同社のソリューションについて紹介した。
ロックウェル・オートメーションの日本法人ロックウェル オートメーション ジャパンは2026年7月8日、東京都内で記者説明会を開き、生産現場でAI(人工知能)を実用化するための技術および同社のソリューションについて紹介した。
高いAI投資意欲の一方でデータ活用などに課題も
製造業でAIの活用が求められている。少子高齢化を背景とした人手不足や設備の老朽化、複雑化が進む中で、生産性向上や効率化への期待が高まっているためだ。
ロックウェル・オートメーションが世界17カ国1560人の意思決定者を対象に実施した「第11回スマートマニュファクチャリング報告書」によると、日本の製造業はスマートマニュファクチャリング技術やAIに対する理解/関心/投資意欲が世界でも高水準にあることが分かったという。生成AIおよび因果推論AIへの投資済み割合は70%となり、世界平均の55%を大きく上回った。また、AIで高いROI(投資収益率)を実現した企業は41%となっており、世界平均32%より高い割合となった。
一方で、AIや機械学習(ML)を活用して業務を強化している割合は26%にとどまり、世界平均の34%を下回った。収集したデータのうち有効活用できている割合も31%となっており世界平均(43%)を下回っている。
ロックウェル オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏は「日本国内でも、PoC(概念実証)で終わらせるのではなく、本格的に製造現場でAIを使いたいという引き合いが多くなっている」と語りつつ、“AIを生かす基盤整備”が次の課題とした。
AIの根本原因を特定につながる“振る舞い”の標準化
データ基盤を整備する上でまず必要になるのが、人間が持っている知見と、データから読み取れる見識を見つけ、その関係性を保持しておく仕組みとなる。例えば、「経験上、このセンサーがこういう数値を示すと必ず機械が壊れる」といった過去の関係性などを「知識グラフ(産業ナレッジグラフ)」として可視化し、AIが理解できる情報にする。
また、工場の設備や制御プログラムの定義が部署やラインごとにバラバラになっているケースが多い。これでは、AIにデータを与えても正しい答えを出す可能性が低くなってしまう。
そこで、機械の状態や運転モードを定義する国際自動化学会(ISA)が発行した「ISA-TR88」の考え方に基づく、同社の制御標準化ライブラリ「RapidLaunch(ラピッドローンチ)」を用いた、モジュールライブラリを使った制御プログラム開発によって、機械の“振る舞い”を標準化する。これらをAIに与えることで、「AIが複雑なトラブルの一番の根本原因を特定できるようになっていく」(矢田氏)。
異常系テストを仮想空間で、エッジ環境へのAI実装
制御プログラムを仮想空間上で検証できるのが、同社のデジタルツインソフトウェア「Emulate3D」だ。「工場の機械を動かす制御プログラムは“このような異常があった時にどう対処するか”という記述が大部分を占めている。テストでも、それらの異常系の検証が大半になる」(矢田氏)。最新機能の「Test Runner」では、ユーザーやAIが作成した工場内のテストシナリオを検証でき、何万種類ものテストスクリプトを走らせてトラブル事例を自動で再現できるという。
検証を終えたプログラムやAIを実際の生産現場で高速かつ柔軟に実行/展開するための要となるのが、同社のエッジゲートウェイソリューション「OptixEdge」と、2026年12月にリリース予定の「LogixEdge」という2つのハードウェアとなる。Optix Edgeは制御システムと接続し、データの収集、分析、クラウドへの送信を実施する他、Dockerコンテナを搭載でき、AI予測モデルや推論機能を実装できる。
このOptixEdgeに、制御機能を搭載したのがLogixEdgeとなる。LogixEdgeによって画像やセンサーから得たデータを基にAIが異常を検知して深層学習モデルによる推論を行い、さらにLogixEdgeの制御機能を使って問題を解決するといったシステムがエッジ側で構築できるようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ソフトウェアデファインドはオートメーションに何をもたらすのか
本連載では、ソフトウェアデファインドオートメーションおよびソフトウェアデファインドマニュファクチャリングのトレンド、方向性と実現に向けた要点について、多くの製造領域のリーダーやテクノロジープレイヤーとの議論を通じた筆者の考えを述べる。今回は、ソフトウェアデファインドの概要を説明しながら、モノづくりにおいてソフトウェアデファインドが必要とされる背景を考える。
ソフトウェアデファインドオートメーションを支える制御プログラム構築技術
本連載では、ソフトウェアデファインドオートメーションおよびソフトウェアデファインドマニュファクチャリングのトレンド、方向性と実現に向けた要点について、多くの製造領域のリーダーやテクノロジープレイヤーとの議論を通じた筆者の考えを述べる。今回は、ソフトウェアデファインドオートメーションの実現に向けて必要なコンセプトや、メリットおよび課題について考える。
ソフトウェアデファインドマニュファクチャリングは製造基盤として何を生むのか
本連載では、ソフトウェアデファインドオートメーションおよびソフトウェアデファインドマニュファクチャリングのトレンド、方向性と実現に向けた要点について、多くの製造領域のリーダーやテクノロジープレイヤーとの議論を通じた筆者の考えを述べる。最終回となる今回は、ソフトウェアデファインドマニュファクチャリングについて考える。
米国製造業の人手不足がAI活用と自動化のソフトウェアデファインドを進める
米Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション)の年次イベント「Automation Fair 2024」を視察した、同社の日本法人ロックウェル・オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏に今回の展示や米国製造業に対する印象について聞いた。
製造現場もソフトウェアデファインドへ、ロックウェルが描く次世代の自動化
米Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション)の年次イベント「Automation Fair 2024」において、初日の基調講演に同社 CEOのBlake Moret(ブレイク・モレット)氏らが登壇し、今後の同社の方向性などを紹介した。
製造現場のデータ活用促進、ロックウェルがエッジゲートウェイソリューション
ロックウェル オートメーション ジャパンは、製造現場のデータ活用率向上を目指すエッジゲートウェイソリューション「OptixEdge」を発表した。データをリアルタイムで処理し、時間とコストの削減に貢献する。



