在任中に“トリプル”8000億円達成へ、DMG森精機社長の展望とは:FAインタビュー(2/2 ページ)
DMG森精機のグループ会社であるDMG MORI Ultrasonic Lasertecが、超音波技術を搭載した5軸マシニングセンタを製造するドイツのシュティプスハウゼン工場を拡張した。同工場の開所式に出席したDMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏が、報道陣の合同インタビューに応じ、DMGとの経営統合や工作機械とAI、注力産業などについて語った。
半導体「その時に備える」自動車「“工程集約”が必要」
Q 半導体や航空、宇宙、防衛、医療などを伸ばしていく方針を出しています。また、自動車産業はどのように見ていますか。
森氏 半導体業界は、微細化と積層化という方向性自体は出ており、5年先くらいまでは見えている。
トヨタ生産方式では“ジャストインタイム(必要なものを必要な時に必要なだけ)”という言葉を使うが、景気のサイクルがある半導体業界からは“ジャストインケース(その時に備えて)”を求められる。
“その時”が5年後か、もしくは10年後になるかもしれないが、その時のためにわれわれも準備をしなければならない。
航空業界も、方向性は見えている。古くなったエンジンを、より効率の良いエンジンに替え、CFRPなど軽量の素材を使うことでより機体を軽くする。エアバスやボーイングなどの航空機メーカーやロールスロイスやGE、P&Wなど航空機用エンジンメーカーの話を聞いていると、どんなワークがどれくらい必要になるか5年先までかなり正確に見えている。
ドイツも日本も自動車産業は今、なかなか苦労されているように見える。ただ、社会的状況から見れば、それは自動車会社が悪いからとかではなく、従来と自動車の所有の仕方が変わろうとしてると考えるべきだ。
例えば、日本には約8000万台の自動車があるが、そのうちタクシーやバス、トラックのように1日中利用されているような自動車は1000万台程度で、多くの自動車は毎日の通勤などで1日2時間程度しか動いていない。仕事で往復2時間、年間240日働いたとしても自動車の利用時間は約500時間、さらに週末などに自動車で旅行に出かけたとしても、年間1000時間程度だろう。
自動車は本来、年間数千時間は走ることができる。工作機械では複数の機械や工程に分かれていた加工を1台にまとめる工程集約という言葉を使うが、自動車でも“シェアリング”などを通じていかに自動車としての“工程集約”をしていくかが課題であり、これは技術の問題ではない。
自動車という存在は魅力的で私も大好きだが、今後はこれまでと異なる魅力をどのように打ち出していくかが重要になる。ただ、これには時間がかかるだろう。次の新しいルールの自動車が登場するのを待っている状態だ。
工作機械の各ユーザーに「AIエージェント」を
Q 製造業でAI(人工知能)の活用が進んでいますが、AIは工作機械をどのように変えていくのでしょうか。
森氏 今、われわれ自身が開発や設計などの場面で、エージェントとしてAIを活用している。社内でドイツ語のメールが送られてきても、AIでほとんど翻訳できるし、ドイツ側でも同じことをしている。とても効率的になった。
ユーザー向けに動画を作る際も、各地域に合わせたキャラクターをAIで生成できる。ユーザーとのコミュニケーションにおいても利用している。
もちろん工作機械の中に組み込んで、われわれのAIチップリムーバル(切りくず自動除去機能)のように切りくずを効率的に除去したり、加工中の振動から主軸の回転数を最適に調整したり、クラッシュ(機械衝突)を回避したりといった使い方は当然として、今後は、われわれの工作機械や提供しているサービスの中にAIを入れて、それぞれのユーザーにAIエージェントが付く方向にしたい。
例えば、工作機械のプログラミングはとても複雑なので、プログラミングや工具の選択をAIエージェントがサポートしてくれたり、ワーク保持の方法を過去の事例から探してきてくれたりする使い方だ。2030年頃にはそれがスタンダードになっているのではないか。
プログラムで動く工作機械はAIとの親和性がとても高い。自動車の自動運転では、屋外で誰かが飛び出してくるなど、さまざまなイレギュラーな事象が起こり得るが、工場はそういった環境ではない。
われわれとつながっている工作機械が全世界に2万台あり、日々データが送られてくる。世界中のMROエンジニアが連日、ユーザーを訪問して機械を修理しているので、それらのデータもたまっている。テスト加工のデータもある。そういうデータが蓄積され、いわゆるLLM(大規模言語モデル)の加工データ版、修理データ版のようなものが出来上がってきた。
われわれのエンジニアがユーザーを訪問して、“このシリアルナンバーの工作機械がこういう状況になっている”とAIエージェントに質問すると、3〜4の対処策を答えてくれる。その通りうまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もあるが、そうやってどんどん賢くなっている。
今、工作機械を3D CADで設計しているが、新機種を試作する時に、デジタルツインでかなり正確なデータが得られるようになっている。実機を作る前に、スチールやステンレス、チタンなどのワークに対して、どんな工具ホルダー、工具を使うと、どんな表面になるか、どれくらいの精度が得られるのか、AIとシミュレーションを使って分かるようになっている。従来、3年かかっていた新機種の開発が、1年8カ月程度まで短縮している。
この仕組みを工作機械の機械設計だけでなく、電気設計にも応用したい。今、電気設計CADメーカーのEPLANと取り組んでいる。データがたまってくれば、3カ月かかっていたものが1カ月程度になるのではないか。もちろんわれわれの製品は消費財ではないので、フルモデルチェンジのようなものは5年や10年に1回となるが、開発の負荷はだいぶ減っている。
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