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DMG森精機社長が図る工作機械のソフトウェアデファインド化、MX実現への道のりEMOハノーバー2025(1/2 ページ)

DMG森精機は欧州最大級の工作機械展示会「EMO Hannover 2025」において、同社が提唱するMX(マシニングトランスフォーメーション)を推進する数々のソリューションを展示した。同社 代表取締役社長 CEOの森雅彦氏にMXの現在地などを聞いた。

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 DMG森精機は欧州最大級の工作機械展示会「EMO Hannover 2025」(同年9月22〜26日:現地時間、ドイツ・ハノーバー)において、同社が提唱するMX(マシニングトランスフォーメーション)を推進する数々のソリューションを展示した。

 MXは、工程集約と自動化でGX(グリーントランスフォーメーション)を実現し、それをDX(デジタルトランスフォーメーション)でさらに加速させる仕組みだ。EMO Hannover 2025の会場において、DMG森精機 代表取締役社長 CEOの森雅彦氏にMXの現在地などについて話を聞いた。

100億円投資で最新操作盤開発、スマホのようにアプリ追加

MONOist MXの進捗に対する森氏の評価を教えてください。

森氏 MXを打ち出して約3年が経過したが、かなりユーザーの理解が進んできた。MXが非常に受け入れられていると感じている。

DMG森精機 代表取締役社長 CEOの森雅彦氏
DMG森精機 代表取締役社長 CEOの森雅彦氏

 現在、全世界でおよそ500万台の工作機械が稼働している。その中で、20年以上稼働している機械が約300万台があり、さらにその内の200万台は30年以上稼働している。こういった工作機械に対して、2台あったものを1台に、3台あったものを1台に、場合によっては10台あったものを超音波加工なども加えて1台に工程集約するような置き換えが始まっている。

 MXを実現するためには工作機械単体だけではなく、3次元のCAD/CAMから始まり、CAMで生成されたパスをNCプログラムに変換するポストプロセッサ、工具のマネジメント、ERPとの連携なども必要になる。今回のEMO Hannoverの会場では、4年ほどかけて開発した操作盤およびソフトウェア「ERGOline X with CELOS X」をほぼ全ての機械に搭載している。これは、スマートフォンのように、いろいろなアプリケーションがクラウドからダウンロードできるようになっている。

100億円を投じて開発したという操作盤およびソフトウェア「ERGOline X with CELOS X」
100億円を投じて開発したという操作盤およびソフトウェア「ERGOline X with CELOS X」[クリックで拡大]

 半年に1回くらいは最新のソフトウェアに書き換えていきたい。従来はエンジニアが訪問して、PCをつないでインストールするという作業を2時間くらいかけて行っていたが、これからはある程度の速さのインターネット環境があれば、短時間で更新できるようになった。

 本当の意味でのデジタル化を図り、MXの下地が十分に出来上がったので、少しほっとしている。ERGO Line Xの開発には延べ100億円くらい投資した。随分とお金を使ったが、やっと出来上がった。これから“刈り取り”に入る。

MONOist 工作機械もソフトウェアデファインドが進んでいくということですね。

森氏 ソフトウェアデファインドによって、いろいろなことがやりやすくなる。

 例えば、クーラントを加工に合わせて緩めたり、強めたり、工具のクーラント穴の大きさに合わせて最適な量を吐出したりできるソフトウェアが載せられるようになる。

MONOist MXの実現に向けて、これからどんな取り組みが必要になりますか。

森氏 取り組まなければならないことが山ほどある。

 日本とドイツで、部品の共通化ができるようになってきた。タレットやATC(オートツールチェンジャー)、主軸などはかなり共通化している。外注していた部品の内製化も進めている。これらの生産をドイツや日本、ポーランドでしっかりと立ち上げていくことが重要だ。

 コロナ禍で伸び切ったサプライチェーンの適正化も図っている。納期の長期化を見越して部品を発注するようにしてきたが、今後、これらを適正にするためにサプライヤーとの交渉や選別、さらに内製するかどうかの判断をしていく。

 現在、工作機械の400V化を進めている。それによって同じサイズのスピンドルなら1.5〜1.8倍のパワーが出るようになり、加工時間も短縮できる。これもMX実現のためには必要なことだ。

 また、今、約5000台の機械がユーザー向けのオンラインサービス「myDMG MORI」に接続しているが、国によっては全てmyDMG MORiを介してサービス依頼が来る。だが、日本や米国は60%程度だ。これを2、3年かけて100%にして、ユーザーとデジタルでしっかりとつながっていきたい。

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