血液から卵巣がんの兆候を発見する新技術、患者の負担軽減へ:医療技術ニュース
名古屋大学らは、鎖長を精密制御したポリケトン分子を用いて、酸化亜鉛ナノワイヤの表面を機能化し、血清中にある少量の疾患関連細胞外小胞を選択的に回収、解析するマイクロ流体プラットフォームを開発した。
名古屋大学は2026年5月20日、血液からがんの兆候を高精度に発見する新技術を発表した。鎖長を精密制御したポリケトン分子を用いて、酸化亜鉛(ZnO)ナノワイヤの表面を機能化し、血清中にある少量の疾患関連細胞外小胞を選択的に回収、解析するマイクロ流体プラットフォームを開発した。北海道大学らとの共同研究による成果だ。
今回の研究では、抗体固定化用の足場分子としてポリケトン、抗体修飾用の官能基として活性エステルのNHS基に着目。4個のポリケトンと2個のNHS基を持つpKNHS 4.2が、ZnOナノワイヤ表面への安定した吸着と抗体固定化の両立に適していることが分かった。
pKNHS 4.2を用いた表面では、未修飾のZnOナノワイヤに比べて、非特異的なタンパク質吸着が約50%まで抑制できた。この値は、PEG-NHSなどの一般的な表面修飾剤よりも優れた性能を示している。
開発した表面修飾ナノワイヤを用いて、細胞株から単離した細胞外小胞を評価した。その結果、抗CD9抗体修飾ナノワイヤでは、未修飾時で約65%だった捕捉効率が85%以上に向上し、CD9陽性細胞外小胞に対しては90%の捕捉効率を示した。
さらに、卵巣がん関連マーカーのCLDN3、FOLR1、TROP2に対する抗体を導入したナノワイヤにより、卵巣がん細胞由来細胞外小胞や患者血清中の細胞外小胞を選択的に回収することに成功した。患者血清中の細胞外小胞からは表面マーカーごとに異なるマイクロRNA発現プロファイルが得られ、高悪性度漿液性卵巣がん患者群と非がん群との間で有意な差を抽出した。
この成果は、細胞外小胞表面の膜タンパク質と、その内部のマイクロRNAを組み合わせて解析することの有用性を示している。従来は見えにくかった、希少な細胞外小胞の亜集団を解析できることを意味する。
今回開発した技術は、複雑な表面処理や長時間の反応工程を必要とせず、1段階での抗体修飾が可能だ。採血試料から疾患関連細胞外小胞を選択的に解析することで、患者の負担が少ない診断法への発展が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
外科医と対話する生成AI、胃がん手術の実証実験で有用性80%達成
Direavaは、手術状況をリアルタイムに理解し、医師と対話する外科特化型生成AIを開発した。実際の胃がん手術現場において、解剖学的正確性や臨床的有用性などの評価項目で目標の80%以上を達成した。
ウシ由来の組織再生型靱帯で膝を切らずに再建、2028年実装目指す
CoreTissue BioEngineeringとマイクロ波化学は、膝前十字靱帯再建手術向けの「組織再生型靱帯」の実用化を目指し、マイクロ波を用いた脱細胞化技術を適用した量産装置の開発を開始した。
手の動きで指令を伝達、脊髄損傷者の歩行を手術不要で再建する
脊髄損傷で歩けなくなった人の脚の運動を、人工神経接続システムにより再び制御可能にした研究成果が報告された。手の筋電図と磁気刺激を組み合わせた非侵襲的手法で、歩行に近い脚の動きを引き出すことに成功した。
手術動画から真珠腫を検出するAIを開発
東京慈恵会医科大学は、内視鏡や顕微鏡の手術動画から、真珠腫の残存を判別するAIモデルを開発した。限られた症例でも一定の精度を示し、臨床応用や教育支援への展開が期待される。
器具交換不要で幅広い手技に対応、オリンパスが外科手術向けデバイスを開発
オリンパスは、血管封止や組織の切開、剥離を実施する外科手術向けエネルギーデバイス「THUNDERBEAT II」を発売する。進化した超音波および高周波ハイブリッド出力と新搭載の超音波単独出力が特徴だ。
医療機器の特許影響力ランキングを発表
パテント・リザルトは、医療機器業界の特許の引用状況を分析した「他社牽制力ランキング2024」を発表した。拒絶理由として引用された件数が多かった企業は、テルモ、キヤノンメディカルシステムズ、MEDTRONICの順となった。


