シーメンス、AIでCFD設計探索を高速化 「Simcenter PhysicsAI」を発表:CAEニュース
シーメンスは「Simcenter」の新機能として、AIを活用した設計空間探索向けソフトウェア「Simcenter PhysicsAI」を発表した。CFDのシミュレーション結果からAIサロゲートモデルを構築し、数千もの設計バリエーションを短時間で評価できる。従来は数日を要していた設計空間探索を数分に短縮し、設計初期段階での意思決定の迅速化を支援する。
Siemens(シーメンス)は2026年5月27日、エンジニアリングシミュレーションおよびテストソリューションのためのプラットフォーム「Simcenter」に、新たに「Simcenter PhysicsAI」を追加すると発表した。「Simcenter STAR-CCM+」のアドオンとして提供し、AI(人工知能)を活用した設計空間探索を強化する。
Simcenter PhysicsAIは、実績のある幾何学的ディープラーニング(Geometric Deep Learning:GDL)技術をSimcenter STAR-CCM+で活用できるようにするソフトウェアだ。エンジニアは既存のCFD(熱流体解析)シミュレーションデータからAIによるROM(Reduced Order Model:次数低減モデル)を構築し、新たな設計案の性能をほぼ瞬時に予測できる。これにより、従来のCFD解析ワークフローと比較して約1000倍高速にWhat-If分析を実行できるとしている。
Simcenter PhysicsAIは、Simcenter STAR-CCM+に実績のある幾何学的ディープラーニング(GDL)技術をもたらし、AIを活用した設計空間探索を加速させる[クリックで拡大] 出所:Siemens
従来、設計空間探索では多数の設計案に対して個別に解析を実施する必要があったが、同ソフトウェアではAIモデルを活用することで数千もの設計バリエーションを短時間で評価できる。設計空間探索に要する時間を数日から数分へと短縮し、設計初期段階における検討の幅を広げる。
Siemens Digital Industries Software シミュレーション/HPC/AI担当エグゼクティブバイスプレジデントのサム・マハリンガム氏は、「エンジニアリングシミュレーションは物理法則によって制限されているのではなく、どれだけ迅速に可能性を探索できるかによって制限されている。当社はAIを活用して探索を加速し、エンジニアが最適なソリューションを迅速に見つけられるよう支援する」とコメントしている。
既存のシミュレーション資産を再利用し、複雑な形状変化にも対応
Simcenter PhysicsAIでは、既存のシミュレーション結果を学習データとして活用し、AIサロゲートモデルの学習と検証を実施できる。過去のDOE(実験計画法)による解析結果を含む既存資産を再利用できるため、同じ条件でCFD解析を繰り返し実行する必要性を低減できる。また、新たに生成したシミュレーション結果を追加学習に利用することも可能だ。
予測モデルの構築には、幾何学データに最適化したTransformer型ニューラルネットワークアーキテクチャを採用した。これにより、複雑な形状変化を伴う設計検討でも高い予測性能を維持しながら、設計案の性能を迅速に評価できるという。
さらに、従来はソルバーによる解析実行に依存していた初期段階の設計案の絞り込みをAI推論に置き換えることで、設計の反復サイクルを短縮する。AI ROMを最適化検討に組み込むことで、数週間ではなく数時間で数百件規模の設計バリエーションを評価できるとしている。
検証機能とGPUアクセラレーションで設計探索を支援
AIモデルの信頼性確保にも配慮した。誤差評価指標や検証ツールを組み込み、予測精度を定量的に評価できるようにしたことで、AIモデルが正しい性能傾向を捉えているかを確認しながら設計判断を行える。また、高精度なCFD解析結果へ容易にアクセスできるため、必要に応じてシミュレーション結果との比較検証も可能だ。
処理性能の面ではGPUアクセラレーションに対応する。予測処理はCPUと比較してGPU上で最大100倍高速に実行できるとしており、大規模な設計空間探索のさらなる効率化を図る。
Simcenter PhysicsAIは現在、Simcenter STAR-CCM+向けアドオンとして提供している。既存および新規のユーザーは、SiemensとAltair Engineeringの統合製品エコシステムにおける継続的なイノベーションや機能拡張の恩恵を受けられるとしている。
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