失敗データこそ資産だ――3Dモデルや解析結果をAIで統合、一目で探せるナレッジに:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
「RAGでは超えられない製造現場の暗黙知がある」――ギリアは3Dモデルや解析結果をマルチモーダルLLMで統合し、設計の暗黙知を形式知化する新プラットフォームの提供を開始した。不採用理由や失敗の文脈も、組織の資産に変える。
「失敗」の記録を「企業の資産」に変える
ナレッジの蓄積を重視するGADの設計思想は、2024年の開発スタート当初から一貫している。「CEATEC 2025」(2025年10月14〜17日)で披露したプロトタイプから、非構造データを読み込んでテキストとして構造化するという基本コンセプトは変わっていない。その上で、今回の製品版において実装された最大のアップデートが、「失敗した知見や不採用データのナレッジ化」である。
従来の製造現場では、最終的に採用された設計データは保存されていても、不採用となった経緯や失敗の記録は検索可能な形で残されないことが多かった。製品版のGADでは成功例だけでなく、「なぜその設計を採用し、なぜ失敗に至ったのか」という背景の文脈も含めて蓄積し、検索できる仕組みへとブラッシュアップした。また、検索処理速度の向上や現場のエンジニアにとって直感的に扱えるUIへの改良を重ね、今回バージョン1.0としての提供に至った。
ギリア AIソリューション事業部 アカウントエグゼクティブの飯干茂義氏は、「従来は過去の失敗が引き継がれず、仮想領域での3D設計から物理的実証に移行する際に、多くの手戻りが発生していた。GADを活用することで、現場の負担を増やさずに問題を事前につぶすことができ、全体の工数そのものを削減できる」と語った。
導入に向けた実証段階では、企業の規模やデータの状態によって変動はあるものの、設計プロセス全体における関連作業のリードタイムの削減効果が確認できた。
デジタルスレッドの起点へ、組織の知識資産を最大化する
提供方法は、オンプレミス環境での提供を基本としている。利用料金は年間基本料300万円をベースとし、その他は企業の要件に合わせた個別カスタマイズなどに対応する。
今回提供を開始したバージョン1.0では、最大2万件のナレッジ登録に対応しており、企業の需要に応じて拡大も可能だ。今後は先行導入企業などからのフィードバックを蓄積し、2027年春以降をめどにバージョン2.0の開発を進める。2.0では、各企業の業務に合わせたナレッジテンプレートの自由なカスタマイズ機能や、マルチモーダルLLMとの対話形式による直感的な登録/検索機能などの実装も視野に入れている。
ギリアがGADを通じて目指すのは、単一の設計部門にとどまらない業務効率化である。設計から製造、検査、保守に至る生産プロセスのデータを糸のようにつなぐ「デジタルスレッド」の起点となることで、各プロセスで用いられるツール間の連携を維持し、組織全体で知見を共有する自律的な学習組織の形成を支援していく構えだ。
宮澤氏は「失敗や不採用にこそ、アイデアが眠っている。暗黙知の喪失に危機感を抱く企業にとって、設計現場のワークフローに寄り添いながら知識を形式知化するGADは、その課題を根本から解決するための有力な選択肢となるはずだ」と語った。現場のニーズに応じた機能拡張を続けながら、製造業におけるナレッジのデジタル化と競争力向上を支援する方針だ。
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