「蛇口をひねれば思考が出てくる時代」へ マクニカが示すAI革命の最前線:人工知能ニュース(1/2 ページ)
マクニカはメディア向け勉強会を開催し、「思考のコスト」を下げるAI革命の背景と進化を説明した。自律型AIの台頭、エッジAIへの移行、現実空間で稼働するフィジカルAIへの拡張という、3つのパラダイムシフトを示す。
企業における生成AI(人工知能)の業務活用が本格化するなか、AI技術は新たな転換期を迎えている。その適用領域は、従来のクラウドベースのデジタル空間から、端末側でリアルタイム処理を担う「エッジAI」や、現実の物理空間に直接作用する「フィジカルAI」へと拡張しつつある。
半導体やサイバーセキュリティ、AI、IoT(モノのインターネット)技術などをグローバルに展開する技術商社のマクニカは、新横浜本社(横浜市北区)で「今さら聞けないAIの進化:生成AIからエッジAI、フィジカルAIまで」と題したメディア勉強会を開催した。同社の新事業本部や社内カンパニーの担当者らが登壇し、AI技術の最前線とそれに伴う社会のパラダイムシフトについて解説した。本稿では、その内容をもとに次世代AIの動向を紐解いていく。
蛇口をひねれば思考が出てくる「AI革命」の到来
「機械化によって生産や労働のコストを下げた『産業革命』、通信技術によって情報検索のコストを下げた『インターネット革命』……そして現在は、AI技術により思考のコストを限りなく下げる『AI革命』のさなかにある。蛇口をひねれば思考が出てくる世界の到来だ」(マクニカ 新事業本部 AI事業推進室 室長の林雅幸氏)
林氏は説明の冒頭で、現在のAIの進化をこのように表現した。経験に基づく判断や膨大な情報分析といった、これまで人間が行ってきた複雑な思考プロセスをAIが代替することで、人間の時間や労力は大幅に解放される。これがビジネスのスピードを劇的に引き上げ、結果として企業の競争力強化に直結するという。
AIの進化によって訪れる3つのパラダイムシフトとは
林氏は、今後のAIにおいて“3つのパラダイムシフト”が進行すると指摘した。第1のシフトは「思考能力の進化」である。これまでのAIは、特定のデータを人間が整理して構築するタスク特化型の個別最適モデルであり、専門技術として「人が作るもの」であった。その後、大規模事前学習モデルの登場で単発応答型の生成AIが普及し、AIは「人が使うもの」へと変化した。さらに2025年ごろからは推論能力が強化され、AI自身が別のAIを使用したり、自律的に情報を整理したりするAIエージェントへの移行が始まっており、AI自身が実行主体になりつつあるという。
第2のシフトは「実行環境の進化」である。AI処理専用回路を搭載したチップの普及や、低消費電力アクセラレーターの発展といった半導体ハードウェア技術の進化に加え、オープンソースの基盤モデルにおいても軽量化技術が進んでいる。これにより、AIの処理基盤はデータセンターなどのクラウド環境から手元の端末へと移行しつつある。カメラやセンサーそのものに軽量なAIモデルを搭載できるようになり、通信網を介さずにその場で即時解析や問い合わせを行うエッジAIの実装が進んでいる。
第3のシフトは「活用領域の進化」である。AIの活用範囲が、PCやスマートフォンの画面の中といったデジタル空間から、現実の物理空間へと広がっている。従来のテキストや画像処理にとどまらず、カメラやLiDAR、IoT機器、車載センサーなどから得られる現実世界の生データを扱うようになっている。エッジ端末上でのリアルタイム推論を通じて、ロボットや自動運転など物理空間に直接作用するフィジカルAIの領域が拡大している。
マクニカでは、こうしたAIのパラダイムシフトを見据え、エッジAIやフィジカルAIに対応する製品群を展開している。勉強会では、最新のチップを用いたリアルタイム画像認識やロボット制御などのデモンストレーションを実施した。
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