ファナックがNVIDIAと連携強化、物理エンジンで高精度デジタルツイン:製造現場向けAI技術
ファナックは、NVIDIAとの連携を強化し、高精度なデジタルツインなどを実現した。ファナックの新商品発表展示会では、仮想空間上のロボット操作と高精度シミュレーション、NVIDIA PhysXを活用した物理シミュレーションなどを披露する。
ファナックは2026年5月15日、NVIDIAとの連携を強化し、高精度なデジタルツインなどを実現したことを発表した。
ファナックとNVIDIAは、産業用ロボットのフィジカルAI(人工知能)実装に向けて2025年12月に連携を発表。「2025国際ロボット展」では、ファナックのロボットシミュレーションソフト「ROBOGUIDE」で作成したロボット動作シミュレーションを、NVIDIAのロボットシミュレーション用レファレンスフレームワーク「NVIDIA Isaac Sim」に取り込み、実機と同一の制御アルゴリズムを用いて、正確な軌跡とサイクルタイムを仮想空間上に再現する技術などを披露した。
今回発表する連携強化により、ROBOGUIDEとNVIDIA Isaac Simをより密接に結合し、ロボットシステムの動作確認とバーチャルコミッショニングに向けてさらに実践的、効率的なシミュレーション環境を実現する。
Isaac Simが前面に立ち、ROBOGUIDEが黒子となるパターンでは、ROBOGUIDEとIsaac Simが常時直接通信を行い、Isaac Sim中のロボットを、ROBOGUIDEに接続された仮想および実物の教示操作盤から、本当のロボットを操っているかのように直感的なリアルタイム操作ができる。Isaac Simの仮想空間におけるファナックロボットに対して、ジョグ操作や結合された教示操作盤でロボットプログラムを教示して実行、確認することが可能となる。ロボット導入前の適用検討や工程設計をGPUによって高速化し、センサーと環境も含めたシミュレーションを直感的に、効率よく行える。
さらに、NVIDIA Isaac Labのオープンなロボット学習用フレームワークやNVIDIA Omniverseライブラリを活用することで、ケーブルなど柔らかい部品の取り扱いや、部品同士を組み付けるかん合作業といった、従来は再現が難しかった作業の高精度シミュレーションも可能になった。Isaac Simの仮想空間で動作するファナックのロボットは、ROBOGUIDEとの結合で、プログラムの実行において実機と同じ軌跡、同じサイクルタイムで動作し、シミュレーションと実機との間のギャップを解消する。強化学習や模倣学習を用いたロボット動作の検証にも対応し、フィジカルAIシステムの適用検討と立ち上げを加速させる。
ROBOGUIDEが前面に立ち、NVIDIAの物理エンジンが背後で高度なシミュレーションを実現するパターンでは、ROBOGUIDEが「NVIDIA PhysX」物理エンジンを利用できるようになった。これまでシミュレーションが難しかった「ばら積み取り出し作業」をROBOGUIDEの仮想空間で再現できる。
部品が無造作に積まれた状態を物理シミュレーションで簡単に再現し、ROBOGUIDE中の3次元ビジョンシステムで部品位置を認識、ロボットがピック&プレースを行う。ばら積みされた部品をロボットが引き抜けない場合を判定して、別の部品を取り出す、といった現実の挙動を机上で再現する。従来は現物を用いた試行錯誤が必須だったばら積み取り出しシステムの検討を、仮想空間上で事前に完了させることで、立ち上げの効率化を図る。
2026年5月に開催するファナックの新商品発表展示会では、ファナックの協働ロボットであるCRX2台による双腕システムで、NVIDIAのオープンなロボット基盤モデル NVIDIA Isaac GR00T Nを用いて柔軟物(Tシャツ)を畳む作業の模倣学習を行ったシステムを披露する。柔軟物であるTシャツを畳む作業は、形を変え続ける対象に応じてロボットの動きを常に変える必要があり、従来のティーチングプレイバックやビジョン補正では実現困難だったという。
今回、オペレーターがCRXを操作してTシャツを畳む様子から模倣学習を行い、双腕のCRXがTシャツを畳みきれるよう、作業のコツを教え込んだ。ファナックのモーション制御技術をNVIDIA GR00T Nモデルと組み合わせることで、模倣学習かつ滑らかな動作を実現したとする。ロボティクス向けコンピュータ「NVIDIA Jetson Thor」を新たに採用した、人の腕を迅速で滑らかに避けるロボットも披露する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ファナックがNVIDIA協業にROS2対応、フィジカルAIでオープンプラットフォーム推進
ファナックは産業用ロボットのフィジカルAI(人工知能)実装を推進するため、NVIDIAと協業すると発表した。また、ROS 2上で同社のロボットを駆動させる専用ドライバを公開。フィジカルAIでオープンプラットフォーム対応を加速させる。
オープン化のファナック、ロボット制御装置のソフトPLC機能活用デモ
ファナックは「2025国際ロボット展(iREX2025)」において、ロボットコントローラー「R-50iA」で対応したソフトPLC(プログラマブルロジックコントローラー)機能を使ったデモを披露した。ユーザー側でのカスタマイズの自由度を高めるプラットフォームとして提案する。
ファナックがGoogleと協業、AIエージェントでロボットを操作へ
ファナックは、Googleとの協業により、産業用ロボットのフィジカルAIシステムを構築した。
ソフトウェアデファインド×オープン化は製造現場を変えるのか
近年、製造業でも「ソフトウェアデファインド」という言葉が定着しつつある。制御や機能をハードウェアから切り離し、ソフトウェアで定義するという考え方だ。そして、分離されたソフトウェアは、外部とつながる「オープン化」によってさらなる拡張性を獲得する。ソフトウェアデファインド×オープン化の流れを考察する。
ユニバーサルロボットがAIトレーニングシステム、モデルの学習と実行を支援
Universal Robots(ユニバーサルロボット)はScale AIと共同開発したAIトレーニングシステム「UR AI Trainer」を発表した。人の動作をロボットが模倣するトレーニングセルを通じて、マルチモーダルデータを取得し、基盤モデルの現場適応を迅速化する。
NVIDIAの「Rubin Ultra」は新サーバラック「Kyber」を導入、中は全て縦置き
NVIDIAは、ユーザーイベント「GTC 2026」の基調講演において、主要チップの量産開始を発表したAIインフラ基盤「Vera Rubinプラットフォーム(以下、Vera Rubin)」以降の開発ロードマップを紹介した。


