器用な指先を持つ手探りピック&プレースロボ、梱包作業の自動化で人間拡張:協働ロボット
自動車部品の包装や梱包を手掛ける那須梱包は、Thinkerのバラ積みピッキングロボット「Thinker Model A」の導入現場を公開した。
自動車部品の包装や梱包を手掛ける那須梱包は2026年4月13日、Thinkerのバラ積みピッキングロボット「Thinker Model A」の導入現場を公開した。
付加価値創造型経営への転換、作業の単純化で労働力掘り起こし
那須梱包は1980年に創業し、大手自動車メーカーを主要取引先としている。大阪府池田市に本社を構え、主な事業拠点として「包装センター」「部品センター」「人財開発センター」を展開。部品メーカーから納入された未包装の部品を、包装センターや人財開発センターで小分け、包装し、自動車メーカーに納入している。
2022年設立のThinkerは、大阪大学 基礎工学研究科 助教の小山佳祐氏が開発した近接覚センサーを活用したロボットハンドの開発などに取り組んでいる。近接覚センサーは、赤外線センサーと独自の軽量AI(人工知能)モデルによって対象物との距離や傾きを把握する。Thinker Model Aは、近接覚センサーを内蔵した同社のThink Hand Fとカメラによる画像解析を組み合わせ、軟質、脆弱(ぜいじゃく)な部品、たわむトレー上でのピッキングなど、これまでロボットでは対応が難しいとされてきた作業に対応するバラ積み用ピッキングロボットとなっている。
今回の導入箇所は、グリップと呼ばれる自動車用補修部品の梱包作業ラインだ。導入前は包装機にセッティングされた袋に人が部品を一つずつ手に取って入れ、包装機を操作して封をするという工程だった。導入後はThinker Model Aによってバラ積み部品を1つずつピックアップし、所定の袋へ投入後は、連動する包装機が自動で封をすることで工程の自動化を図る。ピックアップする個数は事前に設定する。部品の供給と、梱包後の回収は人が行う。
那須梱包 代表取締役 那須喜行氏は「これまでの製造業はコストカットで価格競争力を得てきた。特に、人件費が“コスト”と見なされ、それを削ることで利益につなげるというのが、時代の価値観だった。ただ今、人手不足が深刻化する中で、これまでと同じようなことはできない。従来のコストカット型から付加価値創造型経営へ転換する必要がある」と語る。
Thinker Model A導入の目的として、潜在労働力の掘り起こしと人間拡張による生産性向上を挙げる。那須梱包では障がいのある作業者も働いている。同社では既に、人が部品をピッキングし、包装機にセットされた袋に入れてレバーを押せば包装が完了する、半自動の包装機を導入している。同じ時間稼働した場合、Thinker Model Aの方は現状、3分の1程度の作業効率となっているが、人が担当する台数を増やすことができる。
「これまでも作業を単純化することで労働力の掘り起こしをしてきたし、さらに広げていきたい。今、1人で1台の包装機を操作しているが、ここにThinker Model Aを使った半自動包装機を併設して、1人で2台の包装機を扱えるようになれば、人間の機能の拡張につながる。これをさらに3台、4台と増やしていける可能性もある」(那須氏)
Thinker 代表取締役兼CEOの藤本弘道氏は「大きな動きに関してはロボットはかなり自在に動けるようになったが、指先の器用さに関してはまだまだ人に及ばない。われわれはこの器用さに着目して研究開発と実装を行っている。Think Hand Fでは、近接覚センサーをハンドに内蔵して触った感覚を理解できるようにし、カメラの死角になるような場所でも人間のように手探りでピック&プレースできる技術を実現した。自動車の製造工程にはまだ自動化が難しい工程が存在し、カメラだけでは解決できない、指先の感覚や死角での作業が必要な場面が多数ある。今回はその中で、補修部品の梱包という非定型のデリケートな作業を自動化できた」と語る。
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