Thinkerは2025年1月30日、オンラインで記者会見を開き、同日より販売を開始した新型ロボット「Thinker Model A」の概要を説明した。
独自開発の2Dビジョンシステムが目の役割
Thinkerは大阪大学大学院 基礎工学研究科 助教で同社 取締役の小山佳祐氏が開発した近接覚センサーを活用したロボットシステムを提供している。同社の近接覚センサーは赤外線とAI(人工知能)を組み合わせた独自のセンシングを用いており、これによってロボットが“まさぐる”動作をすることが可能となる。従来のカメラシステムを使った産業用ロボットでは難しかった、鏡面や透明物などの容易なピッキングを実現した。
2023年8月に量産サンプルを提供を開始し、これまでに1200社を超える引き合いがあり、現在は80社を超える企業とともに実証評価に取り組んでいる。既に数社で量産工程における導入も始まっているという。近接覚センサーを用いたロボットハンド「Think Hand F」も開発した。
今回、発売したThinker Model Aは、Think Hand FとThinkerが独自に開発した2Dビジョンシステムを組み合わせて、さまざまな作業を実行する。
「2Dビジョンシステムでは、どこにものがあるのか、どのように折り重なっているのかなどを大まかに立体的に見えることができる。Thinker Model Aは手探りが可能なThink Hand Fと、この2Dビジョンシステムの相補関係で成り立っており、カメラ側で対象物の厳密な座標の計測をする必要がなく、簡単なカメラでも十分にばら積みピッキングに対応できる。そのため、手ごろな導入コストを実現している。手探りできるという機能は非常に優れている自負しているが、ある程度見えればそこに迷いなくアプローチでき、人とそん色ないスピードが実現できる」(同社 取締役 CTOの中野基輝氏)
2Dビジョンシステムとの組み合わせにより、作業スピードも「対象物のサイズなどによるが最大で2倍くらい」(中野氏)と大幅に向上。ばら積みのネジでは、1時間当たり700個のピッキングも可能という。その他、たわむトレーに置かれたワークや、柔らかく脆いワークにも対応する。
ロボットも含めたパッケージとして「600万〜1200万円」(代表取締役 CEOの藤本弘道氏)を想定。2027年度に年間10億円の売り上げを目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「手先のイノベーション」を起こせ、産業用ロボットの可能性開く赤外線型の近接覚センサー
本連載では「ロボット×DX」をテーマに、さまざまな領域でのロボットを活用したDXの取り組みを紹介する。第6回は近接覚センサーを開発するThinkerを取材した。人型ロボと近接覚センサーでキッティング作業自動化、名刺をつかみねじを入れる
Thinkerは「Japan Robot Week 2024」において、近接覚センサーを備えたインテリジェントフィンガーを持つ「Think Hand F」と、カワダロボティクスの人型ロボット「NEXTAGE」を組み合わせ、キッティング作業を自動化するデモンストレーションを披露した。手先のラストワンインチを埋める、器用さをもたらすロボットハンド
Thinkerは量産を見据えた開発フェーズとして開発中のロボットハンド「Think Hand F」のα版を「2023 国際ロボット展」に出展する。“指先”に赤外線センサーを搭載することでロボットは何ができるのか
Thinkerは「2023国際ロボット展」において、同社の近接覚センサー「TK-01」について紹介するとともに、これを組み合わせて実現したロボットハンド「Think Hand F」を参考出品した。“こんな場所も手が届く”手術ロボットなどで活用を目指す椿本の極小チェーン
椿本チエインは「FOOMA JAPAN 2024」において、世界最小ピッチ(同社調べ)の超小型チェーン「RS6-SS」を使ったデモンストレーションを披露した。ロボットハンドに頭脳を与える近接覚センサーがいよいよ量産、2023年7月発売へ
Thinkerは初の製品となる「近接覚センサー TK-01」を2023年7月31日に発売すると発表した。価格は24万2000円(税込み)で5月23日から受注を開始する。2026年度には、10億円を超える売り上げを目指す。