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三角線図を用いた抽出の設計はじめての化学工学(17)(2/2 ページ)

前回は抽出の基本原理について理解を深めました。今回は液液抽出を例に、三角線図を用いた作図法から分離組成や必要段数の試算方法を解説します。

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三角線図を用いた抽出設計

 三角線図の読み方が分かったところで、抽出設計を行うための作図方法を解説します。基本操作として、抽質を希釈剤に溶かした抽料と抽剤を混合することになります。次の手順で作図を行います。

  1. 希釈剤/抽質の軸上に、抽料の抽質濃度[wt%]に応じた点をプロットする
  2. 抽剤側が100%濃度の場合、抽剤の頂点にプロットする
  3. 各点を直線で結ぶ
  4. 抽料の量と抽剤の量との比率に内分する点Mをプロットする(抽料:抽剤=1:3の場合、原料-Mを3、M-抽剤を1に内分する)
  5. 「点Mと重なるタイライン」と「溶解度曲線」との交点が2層分離したときの組成になる
図3 抽出液と抽残液の組成を求めた図のイメージ
図3 抽出液と抽残液の組成を求めた図のイメージ[クリックで拡大]

単抽出と多回抽出

 単抽出で目的成分を十分に回収できない場合は、抽残液に新しい抽剤を加えて多回抽出を行います。一般に、同じ総量の抽剤を使う場合でも、1回で全量を加えるより、複数回に分けて抽出した方が回収率は高くなる傾向にあります。三角線図で作図する場合も、原料組成の点が抽残液の点に変化するのみで手順は変わりません。これを目的とする組成になるまで繰り返します。

図4 多回抽出における作図のイメージ
図4 多回抽出における作図のイメージ。※図4に設けたM'およびM''は図作成の都合上、事前に作成したタイライン上に都合よくプロットされています。実際には原料(もしくは抽残液)と抽剤との量の比によりM'およびM''の位置が決まり、そのうえでタイラインとの交点が決まります[クリックで拡大]

工業的な抽出装置

 工業的には、抽出効率の高い連続向流多段抽出が広く使われます。これは、抽料と抽剤を逆方向に流しながら何段にもわたって接触させる方法です。ミキサーセトラーを直列に並べたり、抽出塔内で液同士を向流接触させたりして実現します。比重の大きな液は上から入れて下から取り出し、比重の小さな液は下から入れて上から取り出します。

 このとき、必要な抽出回数(理論段数)は三角線図上の作図から求められます。これは蒸留におけるマッケーブ・シール法(第15回の蒸留塔の理論段数と還流比の計算で解説)に対応するものとして理解できます。

 ただし計算された理論段数は、液と液が完全に混ざり合い、平衡に達する理想的な状態を前提としています。実際の装置では完全に平衡には達しないため、総括段効率を考慮して実際の段数を設定します。「化学工学便覧 第6版」によると、ミキサーセトラーでは混合と分離が独立しているため一般に高い段効率(90%以上)が得られます。対して抽出塔の場合は1回の接触時間が短く相分離も十分に行われない影響もあり、段効率は低め(30〜80%程度)になります。

 撹拌(かくはん)槽で十分混ぜて抽出/分離するミキサーセトラー型の方が効率は良いですが、スペースやコストの面から抽出塔が選ばれる場合もあります。



終わりに

 今回は、三角線図を用いた抽出操作の基本的な作図法と、装置設計の考え方について解説しました。実際の原料は多成分になる場面が非常に多いものの、三角線図を活用した設計は、系内を非常に単純化した基礎的な作図法です。この考え方を理解することで最適な分離プロセスの選択がイメージできるようになります。

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筆者代表紹介

かねまる

プラント技術の解説サイト「ケムファク」を運営。大学院まで化学を専攻し、現在は化学メーカーの生産技術職に従事。


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