医療にもAIの裾野を広げるインド、欧州各国との連携にはグローバルサウスも絡む:海外医療技術トレンド(129)(2/3 ページ)
前回は、2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック・パラリンピック大会を巡る最新テクノロジー動向を紹介した。今回は、AIを巡るインドと欧州各国/地域の連携について取り上げる。
AIとデジタルヘルスに焦点を当てたインド−フランス間の科学技術連携策
今回のサミットでの「ニューデリー宣言」に合わせて、世界各国/地域の間で、AIを巡るインドとの関係強化の動きが顕在化している。以下では、欧州諸国に焦点を当てて紹介する。
最初に、前回のグローバルAIサミット開催国を務めたフランスの大統領のエマニュエル・マクロン氏は2026年2月17日、インド首相のナレンドラ・モディ氏とともに、インド−フランス間の共同宣言を発表している(関連情報)。モディ氏の招待を受けて、マクロン氏は、2026年2月17〜19日に公式訪問のためインドを訪れ、今回のサミットに参加した。訪問中、両首脳は二国間会談を行い、2月17日にムンバイで「2026年インド・フランス革新年(Year of Innovation)」を共同で開始している。
今回のインド−フランス共同宣言の概要は表3の通りである。
表3 インド−フランス間共同宣言の概要[クリックで拡大] 出所:La Maison elysee「India - France Joint Statement.」(2026年2月17日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成
なお保健協力分野において、インドとフランスは、2024年1月のマクロン氏のニューデリー訪問時に保健医療分野における協力に関する意向表明書に署名したことを受けて(関連情報)、AIとデジタルヘルスをこの戦略的協力の中核に据えた。これをさらに推進するため、両首脳は、ソルボンヌ大学、ニューデリーの全インド医科大学(AIIMS)、パリ脳研究所の協力による、医療におけるAIに特化した独自の研究センターが今回の訪問中に設立されることを期待すると述べている。フランスのデジタル医療に特化した官民共同の研究機関であるパリサンテ・キャンパスとインドの細胞・分子プラットフォームセンター(C-CAMP)、フランスのヘルス・データ・ハブとインド医学研究評議会(ICMR)の連携を含め、デジタルヘルス分野における両国間の協力は、このダイナミズムを強化するものである。
両首脳はまた、主要な地球規模の健康課題に対処するため両国の22を超える主要高等教育機関と研究機関を結集する旗艦プロジェクトである、健康のための生命科学に関するインド−フランスのキャンパスの進展を称賛している。加えて両国は、感染症の研究開発と地球規模の健康研究を促進するための協力に関する意向書の署名を歓迎するとしている。
グローバルサウスに向けてソブリンAIの多国間連携を提案するイタリア
本連載第112回および第128回で触れたように、イタリアは、データの重要度に応じてロケーションを国内に限定するソブリンクラウド方式を採用した政府クラウドサービス適合性評価制度を構築/運用している。今回のAIインパクト・サミット2026の成果として、インド、イタリア、ケニアの3カ国は、アフリカ全土で拡張可能かつソブリンAIの普及経路を共同で設計/展開するための戦略的な3カ国間パートナーシップを発表した(図1参照、関連情報)。
図1 アフリカにおけるソブリンAI普及促進のためのインド、イタリア、ケニアによる3カ国間パートナーシップ[クリックで拡大] 出所:Ministry of Enterprises and Made in Italy「India, Italy, and Kenya Partner to Drive Sovereign AI Adoption Across Africa」(2026年2月19日)
このパートナーシップは、インドのベンガルールを拠点とするエクステップ・ファウンデーション(EkStep Foundation)、ケニア情報通信・デジタル経済省のデジタル経済・新興技術局、そしてイタリア企業およびメイド・イン・イタリア省が、国連開発計画(UNDP)と共に主導するものである。UNDPとイタリア企業およびメイド・イン・イタリア省のパートナーシップであり、G7の支援を受けた「持続可能な開発のためのAIハブ」(関連情報)およびイタリアの「マッテイ・プラン(Mattei Plan)」(関連情報)に沿った3カ国間の枠組みにより、インド、イタリア、ケニアを連携させる。
これら3カ国は、現地の官民双方のイノベーターと協力し、低通信環境、現地語およびデータの所有権に焦点を当てて、アフリカのコンテキストに最適化された音声対応AIソリューションの規模を拡大していく予定である。これにより、他国に依存せず、自国の文化や言語、データの権利を維持したままAIを活用する「ソブリンAI」の概念に立脚しながら、AIの実装を断片的な試行から「AI普及経路(AI Diffusion Pathways)」へと移行させ、自律性とエンパワーメントを通じて、数十億人の生活におけるインパクトを拡大することを目指すとしている。
本パートナーシップの主な重点分野とインパクトは以下の通りである。
- セクター別のインパクト:農業、保健、教育、生計向上および公共サービスの分野においてAIソリューションを展開する
- 中核インフラ:多言語対応の音声モデルや手頃な価格のコンピューティング資源(計算能力)を含む、共通の「水平的イネーブラー」を活用し、AI導入の障壁を低くする
- 共通の野心:信頼性が高く、現地のコンテキストに即したAIを確保するため、2030年までに「100のAI普及経路」を確立するという目標に向けて取り組む
今後、インドのイノベーションにおける専門知識やデジタル公共財(DPG)およびそのノウハウ、ケニアの現地におけるエコシステムとアフリカでのリーダーシップ、そしてイタリアの「AIハブ」が注力する分野横断的な課題解決力と産業パートナーシップを融合させることにより、スマートエコシステムへの経路を加速させ、アフリカ主導の具体的な進展をもたらすことができるかが注目されている。
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