光量子コンピュータ実用化に向けた「10dBの壁」を突破、誤り耐性の獲得にも寄与:量子コンピュータ(2/2 ページ)
NTTと東京大学らは、光量子計算の根幹となるスクイーズド光で世界初の10.1dB量子ノイズ圧縮に成功した。位相検出専用の導波路を並列配置する新手法により実現した。現在は12dBへ到達しつつあり、数年内の15dB達成による量子計算の実用化も視野に入っている。
位相検出専用の導波路を並列に配置
そこで研究チームは、量子光源導波路に加えて、新たに位相検出専用の導波路を用意し、これらを並列に配置する手法を採用した。導波路に入射する前の段階であらかじめ基準光と励起光を分岐させ、それぞれを「量子光源用の導波路」と「位相検出用の導波路」へと独立して入射させる仕組みだ。
これにより、生成された後のスクイーズド光(量子光)から、信号抽出のために光を分岐する必要がなくなるため、量子光のダイレクトな損失を事実上ゼロにおさえることができる。また、位相検出専用の導波路では位相敏感増幅(PSA)を適用することで、位相同期用の信号光の強度だけを強くし、雑音比を抑えることで測定時の位相誤差を減らせるようになった。さらに、導波路の設計および作製プロセスを根本から改善し、出射される光の形状が他の光と干渉させやすい真円に近付けた。
これらの技術を適用して、スクイーズド光の評価を実施したところ、光通信波長帯において10.1±0.2dBの量子ノイズ圧縮を観測することに成功した。これは通常の光が持つ最低限のノイズレベルから、量子ノイズを90%以上圧縮したことになる。また、損失は12%から8%、位相誤差は14mradから9mradに低減した。
柏崎氏は「今回の成果は量子計算精度を向上させるものであり、将来の誤り耐性型高速光量子コンピュータ実現に向けた前進を意味することとなった」と強調した。
12dB、15dBの達成も数年以内の視野に
研究チームは次なるマイルストーンを見据えている。古澤氏は、「すでに次の目標である12dBのスクイージングレベル達成にも到達しつつあり、最終目標の15dBの実現も数年以内の視野に入っている」と明かした。15dBの圧縮が達成できれば、現在の公開鍵暗号を解読しうるレベルの量子計算が現実のものとなるという。
今回の成果は、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」の目標6である「2050年までに、経済/産業/安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」の達成に向けた一歩にも寄与する。研究チームは今後、今回の技術を導入した大規模システムの構築を進め、2027年には1万量子ビットの光量子コンピュータの実証を目指す方針だ。
なお、今回の研究成果は、2026年2月25日発行の学術論文誌「Optics Express」のオンライン版に掲載された。
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