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日野自動車はCLOを軸にしたロジスティクス戦略で「現場から経営を変える」サプライチェーン改革

日野自動車はHacobu主催の「Hacobu Innovation Day 2026 for CLO&Leaders」に登壇。物流を経営の最前面に位置付け、早くからCLOを起用した理由を同社 代表取締役社長CEOの小木曽聡氏が語った。

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 日野自動車は2026年2月19日、Hacobuが東京都内で開催したイベント「Hacobu Innovation Day 2026 for CLO&Leaders」において、企業講演「経営視点と現場視点でひも解く先進企業の実例」に登壇した。同講演では、日野自動車 代表取締役社長CEOの小木曽聡氏と、Hacobu 代表取締役社長CEOの佐々木太郎氏が対談を行った。現場起点の物流改革や、自動車業界全体で取り組むべき共同物流の展望などについて議論を交わした。

(左)Hacobu 代表取締役社長CEOの佐々木太郎氏と(右)日野自動車 代表取締役社長CEOの小木曽聡氏
(左)Hacobu 代表取締役社長CEOの佐々木太郎氏と(右)日野自動車 代表取締役社長CEOの小木曽聡氏[クリックで拡大]

いち早くCLOを設置、背景と効果を語る

 日野自動車は製造業として早い段階からCLO(Chief Logistics Officer、最高物流責任者)を設置した企業である。同社は2024年2月に、グループ会社で物流実務を担う日野グローバルロジスティクス 社長の山根良和氏を、日野自動車のCLOに任命した。山根氏は現在、日野グローバルロジスティクスの社長に加え、日野自動車のSCM本部長とCLOを兼務しており、物流現場と経営をつなぐ役割を担っている。

 CLOを早くから設置した狙いについて、小木曽氏は次のように語った。

「CLOの設置に当たって最も重視したのは『現場感』だ。トラックには、『架装(クレーンや荷台などの特殊装備の取り付け)』という特有の工程がある。車両本体の製造は3日ほどで完了するが、その後の架装工程は平均3カ月を要する。リードタイムの短縮は、メーカーとしての収益力に直結するため、各工程をいかに早くつないで、輸送の部分でも短縮するかが重要。こういった細かい部分であっても、現場の課題を熟知し経営判断に反映できる人材が必要だと考えた。そこで、当社物流子会社社長として現場にも精通している、山根氏に日野自動車本社のCLOに就任してもらった」(小木曽氏)

物流を経営の中心に据える重要性を強調する小木曽氏
物流を経営の中心に据える重要性を強調する小木曽氏

 さらに、小木曽氏は物流を経営の中心に据える重要性を次のように強調した。

「物流が機能しなければ、お客様に商品は届かない。そのため、経営戦略において物流を最前面に位置付ける必要があると考えた。CLOの設置とあわせて経営組織のフラット化を断行したことで、経営会議の場でもロジスティクスの実態に基づいた議論が、ダイレクトかつ濃密に行えるようになった。現場の課題に精通した人間が経営に参画することで、全社的な問題解決のスピードが向上するなど、効果が生まれている」(小木曽氏)

「物流は自動車製造のアキレス腱」 自工会も重点テーマに

 続いて佐々木氏は、自動車業界全体の意識改革に話題を転じた。日本自動車工業会(自工会)が2025年12月18日に発表した2026年度の重点テーマ「新7つの課題」では、その大枠の1つに「サプライチェーン全体での競争力向上」を掲げている。佐々木氏はこの決定に至った背景を小木曽氏に問いかけた。

 小木曽氏は、自動車メーカーが物流を「自らの経営課題」として捉えているのは、業界特有の切実な背景があると語った。

「当社を含め、自動車メーカーは部品調達や完成車輸送に至るまで、膨大な量を動かす大きな『荷主』という側面も持っている。それに、自動車製造において物流はまさに『アキレス腱』のような存在。たった1つの部品が入荷待ちになるだけで全ての製造ラインが止まり、経営に致命的なダメージを及ぼす。だからこそサプライチェーンに対する危機感は極めて強い」(小木曽氏)

 さらに、これまでの商慣習を見直し、競合の枠を超えてメーカー間で協力する新たな取り組みについても言及した。

「従来は部品調達などの物流はサプライヤー任せになりがちだったが、現在はメーカー同士が連携して『共同物流』を推進する検討を始めている。ただし、改革を具体化するには課題も多い。メーカーごとにデータ形式や伝票、契約形態までもが異なるからだ。今後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタルツールを活用して情報を可視化し、共通言語を作る必要がある。各社バラバラの仕組みをデジタルで1つずつ丁寧につなぎ合わせていくことが、改革の要になると考えている」(小木曽氏)

 この「共通言語化」の基盤づくりとして、日野自動車は2019年よりHacobuと資本業務提携契約を締結した。両者は、オープンな物流情報プラットフォームの構築に向け、動態管理サービス「MOVO Fleet」を通じた荷待ち/荷役作業時間の削減プロジェクトなどに取り組んできた。

自動運転技術でドライバーの働き方は変わるか

 最後に小木曽氏は、「経営者としてではなく、あくまで一人のエンジニアとしての視点」と前置きした上で、AI(人工知能)や自動運転がもたらす物流の未来について持論を語った。

 小木曽氏の予測によれば、自動運転技術は今後5年ほどでAIとの融合により急速に進化し、さらに10年も経てばハイエンドな技術から誰もが利用できる一般的なものへとコモディティ化していくという。自動運転技術によってドライバーを労働から解放できる可能性に触れつつも、一方ではハードウェアの保守/整備といった「現場の仕事」の重要性は変わらないと強調した。

「製造プロセスの変革も重要だが、何よりも『現場でどのような物流の仕事をするか』『その現場をどう可視化するか』が、われわれにとっての一丁目一番地である。テクノロジー側のハードルは今後どんどん下がっていく。現場のオペレーションさえしっかりと押さえておけば、将来的にいくらでも新しいやり方を構築できるようになるだろう」(小木曽氏)

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